China battery and materials supply chain レポート解説
J.P. Morganは、中国上位6社の9月電池生産が前月比7%、前年比69%増となる見込みであり、より強い増加を抑えているのは受注減ではなく供給制約だとみている。CATLの生産成長は同業を上回る見通しで、在庫減少と供給混乱の可能性からリチウム価格には短期的な上振れリスクがある。
要約
J.P. Morganは、中国上位6社の9月電池生産が前月比7%、前年比69%増となる見込みであり、より強い増加を抑えているのは受注減ではなく供給制約だとみている。CATLの生産成長は同業を上回る見通しで、在庫減少と供給混乱の可能性からリチウム価格には短期的な上振れリスクがある。
- 上位6社の電池生産は9月に前年比69%増、3Q26に前年比67%増となる見込み。
- 報告書は銅箔を主な生産ボトルネックと位置付け、需要不足ではなく供給制約を反映するとみている。
- CATLの9月生産は前年比79%増、前月比9%増の見込みで、CATLを除く上位6社の3Q前年比成長率58%を上回る。
- 堅調なESS需要、EV輸出、1台当たり電池搭載量の増加が業界需要を支える。
- 8月31日時点の炭酸リチウム現物価格は約Rmb156k/tで、8月の在庫取り崩しにより在庫は減少した。
レポート解説
概要
本業界アップデートは、中国の電池・材料サプライチェーンにおける9月の生産、最終需要、投入コストを評価する。J.P. Morganは、繁忙期入りを前に生産計画は堅調であり、銅箔不足は受注弱含みではなく生産を制約していると主張し、CATLを引き続き選好している。
主要見解
中国の電池サプライチェーン株は8月にまちまちとなった。CATL A/H、電池メーカー、電池材料株はCSI 300の0.5%上昇に対しておおむね0–10%下落した一方、上流原材料株は堅調な需要のなか供給懸念が再燃したことで0–10%上昇した。それでもJ.P. Morganは事業モメンタムが底堅いとみる。ZE Consultingは、上位6社の9月生産が前月比7%、前年比69%増となると予想している。この前月比増加率は2025年9月の4%を上回り、3Q26の生産成長率は前年比67%、前期比19%となる見込みである。チャネルチェックによれば、8月からの伸び鈍化は受注減ではなく、特に銅箔を中心とする材料供給の逼迫を反映している。このため報告書は、潜在需要は見出しの生産成長率が示すよりも強い可能性が高いとみている。 CATLの生産モメンタムは引き続き際立つ。9月生産は前年比79%増、前月比9%増となり、3Q26の前年比成長率は76%に達する見込みで、CATLを除く上位6社の58%を上回る。堅調なLFPおよびESS需要が生産を支える一方、銅箔不足が一段強い立ち上がりを制限している。CATLはNCM生産を抑え、利用可能な材料をより高成長のLFP製品に優先配分しているが、J.P. Morganはこれを潜在需要の弱さではなく戦略的な製品配分と解釈する。BYDの生産拡大も銅箔供給に制約されている一方、GotionとCALBは継続的な新規生産能力の立ち上げから恩恵を受けている。8月の上位6社生産見通しは約2%上方修正され、GotionとEVEは約8%、BYDは4%、CATLは1%の上方修正だった。CATLの修正は、一部顧客の需要前倒しに伴うLFP生産増が主因である。 主要電池メーカーの9M26生産は前年比約57%増となる見込みで、1Q26の40%、2Q26の60%から3Q26には67%へ加速する見通しである。報告書はこの伸びを、ESS需要の強さ、中国メーカーの7M26 ESS電池生産が前年比94%増で大半のESSラインがフル稼働していること、7M26のEV輸出が前年比120%超増加したこと、欧州EV販売が同期間に前年比約40%増加したこと、中国商用EV台数が前年比約46%増、電池量が70%超増加したことの組み合わせによるものとする。一方、中国乗用EV小売販売は弱く、7M26に前年比12%減となる見込みだったが、1台当たり電池搭載量が9 kWh、すなわち前年比約21%増加し、この弱さの一部を相殺した。J.P. Morganは中国乗用車需要が2H26に改善し、前年比減少率が7M26の約20%から4Q26には中位一桁台へ縮小すると予想する。これが実現すれば、NEV小売需要は4Q26に年初来の約12%減というペースに対して前年比横ばいからプラス成長となることを示唆する。 リチウム環境は上流の供給リスクという側面を加える。中国の炭酸リチウム生産は、8月に前月比横ばいで約5%増との予想を下回った後、9月には前月比約11%増加する見通しである。定期修繕後の再稼働とジンバブエ精鉱到着の増加可能性が支援材料となるが、時期は不確実である。8月31日時点で炭酸リチウム現物は約Rmb156k/t、先物は約Rmb159k/tだった。報告書はCATLのJianxiawo再稼働を巡る不確実性の再燃と、AlbemarleのLa Negra鉱山でのスト関連リスクを強調しており、80kt LCE生産を基準に潜在的な供給リスクを約4%と試算する。週次生産は8月末に約23ktへ小幅低下し、8月中の週約5ktの在庫取り崩しにより、8月27日時点の在庫はSMM新サンプルで約79kt、旧サンプルで約62ktとなり、4Q23水準近くまで低下した。受注残の堅調さ、在庫減少、供給混乱リスクの上昇を踏まえ、J.P. Morganは現水準からの短期的なリチウム価格リスクは上方に偏るとみている。 一部上流価格の回復にもかかわらず、電池メーカーのコスト環境は比較的管理可能な状態が続く。3Q26これまでに、炭酸リチウム、水酸化リチウム、LiPF6価格はそれぞれ5%、2%、10%反発し、2Q26の下落分を一部取り戻した。しかし、正極材価格は軟調で、LFP、NCM523、NCM811は2–6%下落し、電池セル、負極材、セパレーター価格はおおむね安定した。主な例外は電解液で10–15%上昇した。報告書は、リチウム関連投入コストの緩和が3Qの季節的に強い生産期に入る電池メーカーに概して良好なコスト環境をもたらすと結論付けるが、より強い季節需要と材料供給の逼迫がさらなるコスト上昇を招く可能性があり、価格転嫁のペースが重要な注目点になるとしている。
分析フレームワーク
J.P. MorganはZE Consultingの生産予測とチャネルチェックに、地域別NEV販売、ESS出荷、電池搭載量、材料価格データを組み合わせている。メーカー別・化学系別の成長を比較したうえで、最終需要、材料の入手可能性、在庫状況を生産、コスト、企業の相対的ポジショニングに結び付けている。
手法メモ
電池生産と材料の需給分析
報告書は生産計画、受注、稼働率、材料不足、在庫を評価し、生産成長の鈍化が需要要因か供給制約かを判断している。
電池サプライチェーンの波及分析
上流のリチウムと銅箔の供給・価格を、正極材、セル、電池メーカーの生産コストと生産量に結び付けている。
P/EおよびEV/EBITDAによる同業バリュエーション比較
バリュエーション表では、予想P/E、EV/EBITDA、配当利回り、ROEを用いて中国電池サプライチェーン企業を比較している。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- CATL-A (300750.SZ) / CATL-H (3750.HK)J.P. Morganが中国電池サプライチェーンで最有力とする銘柄であり、生産成長は同業を上回る見込み。
- 強み
- 9月生産は前年比79%増、前月比9%増の見込みで、堅調なLFP・ESS需要とLFPへの戦略的配分が支える。
- 弱み
- 銅箔不足が一段強い生産立ち上がりを制限し、NCM生産の抑制につながっている。
- 比較
- 3Q26の予想生産成長率は前年比76%で、CATLを除く上位6社の58%に対するもの。
- リスク
- 特に銅箔を中心とする材料不足と、さらなるコスト上昇を転嫁する必要性。
- BYD同じ銅箔制約の影響を受ける主要電池メーカーの同業。
- 強み
- 生産は上位6社の底堅い業界トレンドの一部であり、8月見通しは約4%上方修正された。
- 弱み
- 生産の立ち上がりは銅箔の入手可能性に制約されている。
- 比較
- CATLは3Q26の生産成長で同業を上回る見込み。
- リスク
- 材料供給の逼迫が生産量を抑制し、コストを押し上げる可能性。
- Gotion and CALB継続する新規生産能力の立ち上げから恩恵を受ける電池メーカー同業。
- 強み
- 新規生産能力が継続的な生産拡大を支える。
- 比較
- CATLは引き続き報告書の選好するサプライチェーン銘柄であり、予想生産成長率もより高い。
- リスク
- 業界の材料不足が実際の生産量を制約する可能性。
主要データ
- 上位6社の9月電池生産+7% m/m; +69% y/yZE Consultingの予想。3Q26の生産成長率は前年比+67%、前期比+19%を示唆する。
- CATLの9月生産+9% m/m; +79% y/y3Q26の予想前年比成長率は+76%で、CATLを除く上位6社の+58%に対するもの。
- 主要電池メーカーの9M26生産~+57% y/y成長率は1Q26の+40%、2Q26の+60%から3Q26予想の+67%へ加速した。
- 中国のESS電池生産+94% y/y in 7M26ICCSinoデータ。大半のESS電池ラインはフル稼働だった。
- 中国乗用EV小売販売-12% y/y in 7M26予想減少は、1台当たり電池搭載量が9 kWh、すなわち約+21% y/y増加したことで一部相殺された。
- 炭酸リチウムSpot ~Rmb156k/t; futures ~Rmb159k/t8月31日時点。9月生産は前月比約11%増となる見込み。
- リチウム在庫~79kt (new sample) / ~62kt (old sample)8月中に週約5ktの在庫取り崩しを経た、8月27日時点のSMM在庫。
影響と示唆
報告書は、業界の9月減速を需要主導ではなく供給制約によるものとみており、短期的な生産見通しの底堅さを支える。CATLのより速い成長とLFP優先配分は相対的なポジショニングを強化し、供給混乱と在庫減少が価格を支える場合、上流リチウム生産者が恩恵を受ける可能性がある。電池メーカーにとって中心的な利益変数は、上昇した材料コストを転嫁できるかどうかである。
リスク
- 銅箔不足が電池生産の立ち上がりをさらに制限する可能性がある。
- より強い季節需要と材料供給の逼迫がコストを上昇させ、価格転嫁が重要になる可能性がある。
- ジンバブエ精鉱到着の時期は不確実である。
- AlbemarleのLa Negra操業における潜在的な混乱が、リチウム供給をさらに引き締める可能性がある。
注目点
- 上位6社の9月電池生産と銅箔の入手可能性。
- 中国乗用車需要が2H26に改善し、4Q26のNEV小売需要を前年比横ばいからプラス成長に支えられるか。
- CATLのLFPとNCMの生産配分、および同業の生産能力立ち上げペース。
- リチウムの再稼働、ジンバブエ精鉱到着、在庫水準、Albemarleの労使紛争の激化。
- 電池メーカーが上流材料コスト上昇を転嫁するペース。