Global ESS battery market レポート解説
J.P. Morganは、2026年7月の世界ESS電池出荷が105.5GWhとなり、前年比88%増、前月比5%増だったと報告した。中国、欧州、Rest of Worldの需要が主導し、中国供給企業からの米国調達シフトにもかかわらず、2026年を通じた勢いは維持されるとみている。
要約
J.P. Morganは、2026年7月の世界ESS電池出荷が105.5GWhとなり、前年比88%増、前月比5%増だったと報告した。中国、欧州、Rest of Worldの需要が主導し、中国供給企業からの米国調達シフトにもかかわらず、2026年を通じた勢いは維持されるとみている。
- 7M26の世界ESS電池出荷は613.8GWh、前年比96%増となった。
- J.P. MorganのFY26出荷予想は1.1TWhで、78%成長を示す。
- 中国は7M26の世界ESS需要の46%を占め、EUとRest of Worldも力強く成長した。
- 米国の調達が韓国・日本供給企業へ移るなか、中国供給企業の米国向け出荷は7M26に前年比42%減少した。
- 同機関はアジアESSバリューチェーンのカバー銘柄でCATL、Sungrow、Deye、LG Energy Solution、Samsung SDIを最上位選好銘柄に挙げている。
レポート解説
概要
この業界アップデートは、2026年7月の世界ESS電池出荷、地域需要、供給企業シェア、アジアESSバリューチェーンへの含意を検証する。J.P. Morganは、中国導入、欧州・Rest of World向け輸出、米国での韓国電池供給企業の機会に支えられ、2026年を通じて需要モメンタムが維持されるとみている。
主要見解
世界のESS電池出荷は7月に加速した。ICCSinoデータによると、出荷量は105.5GWhで、前年比88%増、前月比5%増となり、6月の前年比66%増、前月比3%増を上回った。これにより7M26の出荷量は613.8GWh、前年比96%増となり、FY25の93%成長に続いた。J.P. Morganは、同業界がFY26予想の1.1TWh(78%成長)を達成または上回る軌道にあるとみている。7月の加速は、中国需要の底堅さ、米国以外への輸出の強さ、季節性を上回る生産・出荷、政策関連の前倒し出荷の影響を受けた2025年7月の比較基準の低さによるものと説明している。 中国は主要な需要エンジンである。7M26に中国国内需要は世界ESS需要の46%を占め、2025年の40%から上昇し、中国供給企業の中国向け出荷は同期間に前年比148%増となった。7月の中国国内出荷は49.2GWh、前年比187%増だった。CNESAが7月の導入量を15.77GWh、前年比約75%増と報告したことを受け、同機関は中国の通年導入見通しを前向きにみている。独立系ESSプラントの収益性改善、電池持続時間の長期化、支援政策を背景に挙げている。また、上期導入データの相違について、NEAの45GWh(前年比17%減)とCECの60GWh(前年比78%増)は、対象範囲と測定基準の違い、プロジェクト計上時期や稼働状況の差によるものと整理している。 海外需要は堅調だが、地域別の差異が拡大している。中国供給企業は7月にEU向け20.3GWhを出荷し前年比108%増、Rest of World向けは25.3GWhで前年比113%増だった。7M26ではEU向けとRest of World向けがそれぞれ前年比128%増、131%増となり、両地域で中国供給企業の最終市場構成の45%を占めた。対照的に、中国供給企業の米国向け出荷は7月に7.0GWh、前年比56%減、7M26では44.9GWh、前年比42%減となった。同レポートはこれをOBBBAによる調達変化と結び付け、1H26の米国における中国原産リチウム電池輸入は前年比64%減、韓国原産輸入は約10%増と指摘する。韓国・日本供給企業の世界ESS出荷は7月に前年比187%増となり、LG Energy SolutionとSamsung SDIが米国ESS市場で恩恵を受ける位置にあるとしている。 供給は依然として中国主導である。中国生産企業は7M26の世界ESS出荷の97%を占め、2025年、2024年と同水準だった。CATLは世界の数量首位を維持し、EVE、Hithium、BYDが続くが、主要供給企業は能力制約に直面した。CATLのシェアは7M26にFY25比で2パーセントポイント低下し、BYD、EVE、Hithium、CALBも各社約2パーセントポイント低下した一方、複数のTier 3企業は約2パーセントポイント上昇した。J.P. Morganは、こうした変化を業界の基調的需要ではなく能力に起因するものとみている。CATLの中国市場シェアは16%で、2025年の14%から上昇しており、Doc 136後と能力拡張により2026年もシェア拡大を予想している。 用途構成も需要見通しを支える。ユーティリティ規模ESSは7月の中国供給企業出荷の73%、7M26出荷の76%を占め、7M26では451.4GWh、前年比84%増だった。商業・産業用ESS出荷は7M26に68.1GWh、前年比150%増、住宅用ESSは60.1GWh、前年比132%増となった。海外住宅用ESSの補充は2Q26の大規模なチャネル積み増し後、7月と8月に鈍化したが、9月には正常化すると予想されている。J.P. Morganは、海外需要、中国の入札採択と系統接続の回復を背景に、8月の生産・出荷が前月比4-5%、9月は6-8%増加すると予想している。 CATLの上期業績は、同機関の建設的な中期ESS見通しを補強した。CATLの1H26 ESS販売量は109GWhで前年比約110%増、総電池販売の約25%を占めた。別の生産推計では、ESSは年初来のCATL総電池生産量の約22%を占める。国内出荷の増加と国内シェア約2パーセントポイントの上昇により、報告されたESS平均販売価格は前年比9%低下した。経営陣は、システム納入、設置、試運転のため、一部ESS出荷の収益認識には6~12か月かかる可能性があると述べた。BYDでは、ESSが年初来の総電池生産量の21%を占め、2025年の17%、2024年の11%から上昇した。 同レポートは、中国の新たな消費税を短期的には管理可能とみている。国内で生産・販売されるリチウムイオン電池に対する税率は2026年9月1日から2%、2027年9月1日から4%となり、輸出と海外生産は直接の影響を受けない。J.P. Morganは4%の税を完全転嫁した場合、ESSプロジェクトIRRが約0.5-1パーセントポイント低下すると推計するが、最終的な需要影響は電池メーカー、インテグレーター、プロジェクト所有者間のコスト分担に左右されるとみる。したがって、短期的な需要制約ではなく、主に利益率とコスト転嫁の問題と位置付けている。 J.P. Morganは2H26の広範なESS成長減速リスクは限定的とみる一方、電池出荷は通常、導入に約6か月先行するため、2H27から中国固有の減速リスクが高まると指摘する。同社のベースケースでは、中国ESS導入量は2027年に320GWを超える一方、公式目標は180GW、2024年実績は約75GWである。中国の導入成長率は2027年の25%から2028年には4%へ鈍化し、1H28により意味のある減速が起こると予想する。それでも、こうした軟調さは構造的ではなく一時的と考える。中国の再生可能エネルギー比率は2025年末の約24%から2030年に約35%へ上昇し、ESS浸透率は約7%から約18%へ上昇すると予想している。欧州と新興市場の寄与が高まり、中国ESSは2026年の総電池需要の20%未満にとどまる見込みである。 カバー銘柄では、J.P. Morganは世界的リーダーシップと非米国地域でのシェア拡大を理由にCATLを選好し、ユーティリティ・データセンターESS需要、製品品質、直接販売によるリレーティング余地を理由にSungrowを選好している。Deyeは分散型発電蓄電、新興市場での位置付け、コストリーダーシップで選好される。BYDは海外EVモデル需要と垂直統合が評価され、LG Energy SolutionとSamsung SDIは米国の調達シフトとESS見通し改善の恩恵を受けるとみられている。
分析フレームワーク
本レポートは、ICCSinoの出荷・生産推計、EIA・NEA・CEC・CNESAの導入データ、米国の電池輸入データ、企業開示、チャネルチェック、J.P. Morganの推計を組み合わせている。地域、用途、供給者別に前月比・前年比の数量動向を比較し、需要・政策・能力・調達の変化をカバー銘柄のESSエクスポージャーに結び付けている。
手法メモ
地域別の出荷量、導入量、生産量、在庫の分析
本レポートは、中国、米国、EU、Rest of World別に供給量と需要を比較し、能力制約と需要要因を特定してESSの勢いを評価している。
ESSバリューチェーンと政策コスト転嫁の分析
電池税コスト、プロジェクト収益性、導入、システム納入、電池調達が、電池メーカー、インテグレーター、プロジェクト所有者、カバー供給企業に与える影響を追跡している。
供給企業の市場シェア比較
中国および韓国・日本供給企業のシェアを比較し、最近のシェア変化を主要供給企業の能力制約で説明している。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- CATL (300750 CH; 3750 HK)世界的なESS電池リーダーであり、J.P. Morganの中国電池バリューチェーンにおける最上位選好銘柄
- 強み
- 非米国地域でのシェア拡大、世界的リーダーシップ、能力拡張、ESSの収益貢献拡大。
- 弱み
- 国内構成比の上昇によりESS ASPは前年比9%低下。システム納入、設置、試運転のため収益認識は出荷から6~12か月遅れる可能性がある。
- 比較
- ESS出荷で世界首位であり、EVE、Hithium、BYDを上回る地位を維持している。
- リスク
- 能力制約と、2H27以降の中国ESS出荷減速の可能性。
- Sungrow (300274 CH)PCS、EMS、ESS統合のカバー供給企業
- 強み
- 数量ベースで最大の太陽光インバータ生産企業であり、コスト優位性、製品品質、ブランド認知度、ユーティリティおよびデータセンターESS受注の拡大期待を持つ。
- 比較
- 同レポートは、国内競合と比べて製品品質とブランド認知度が高いとしている。
- Ningbo Deye (605117 CH)分散型発電ESSのカバー供給企業
- 強み
- 新興市場での先行者優位、太陽光・蓄電導入、レジリエンス志向の政策支援、内製加工によるコストリーダーシップ。
- 比較
- ユーティリティ規模供給だけでなく、分散型発電ESSに位置付けられている。
- LG Energy Solution (373220 KS)米国ESS需要に有利な位置にあるカバー韓国電池供給企業
- 強み
- ESS受注獲得の勢いが強く、J.P. Morganの推計では韓国電池メーカーの中で最大のLFP ESS受注残を有する。
- 比較
- 米国の調達シフトにより、中国供給企業に対して相対的な恩恵を受ける。
- Samsung SDI (006400 KS)米国ESS需要に有利な位置にあるカバー韓国電池供給企業
- 強み
- 韓国原産の米国向け電池輸入が順次増加するなか、ESSの見通しが改善している。
- 比較
- 同レポートは、韓国原産の輸入増加を主にSDIが牽引していると指摘している。
- BYD (002594 CH; 1211 HK)EVとESS電池を統合したカバー供給企業
- 強み
- 海外EVモデル需要の強さ、垂直統合、年初来の電池生産量におけるESSの21%の構成比。
- 弱み
- 同レポートの出荷ベース分析によると、市場シェアは年初来で約2パーセントポイント低下した。
- 比較
- 世界の主要ESS企業ではCATLに次ぐ位置にある。
主要データ
- 世界ESS電池出荷量105.5GWh in July 2026前年比+88%、前月比+5%
- 世界ESS電池出荷量613.8GWh in 7M26前年比+96%
- J.P. MorganのFY26世界出荷予想1.1TWh前年比78%成長を意味する
- 中国国内ESS需要46% of global demand in 7M26中国供給企業の中国向け出荷は前年比148%増
- 中国供給企業の米国向けESS出荷44.9GWh in 7M26前年比-42%
- 中国供給企業の世界ESS出荷シェア97% in 7M262025年および2024年比で横ばい
- CATLのESS販売量109GWh in 1H26前年比約+110%、総電池販売の約25%
- 米国BESS導入量8.3GW in 6M26前年比+22%。6月の導入量は2.7GW、前年比56%増
影響と示唆
同機関は、中国主導のESS需要とEU・Rest of World向け輸出で最も大きな短期恩恵が生じるとみる一方、米国の調達シフトは韓国供給企業の機会を改善するとしている。能力増設、入札採択、系統接続が8月と9月のさらなる出荷成長を支えると予想するが、導入が2027年の目標期間を超えるにつれ、2H27以降に中国出荷が減速する可能性を指摘している。
リスク
- 中国のESS電池出荷成長は、導入が2027年の目標期間を超えるにつれて2H27から鈍化する可能性がある。同レポートは中国の導入成長が2027年の25%から2028年には4%へ減速すると予想している。
- 中国のリチウムイオン電池消費税4%が完全転嫁された場合、ESSプロジェクトIRRは約0.5-1パーセントポイント低下する可能性がある。
- 海外住宅用ESSの補充は2Q26の大規模なチャネル積み増し後、7月と8月に鈍化した。
- CATLおよび他の主要供給企業の市場シェア変化は能力制約を反映している。
注目点
- J.P. Morganがそれぞれ前月比4-5%、6-8%と予想する8月・9月の出荷成長。
- 7月および8月の中国ESS入札採択と系統接続。
- 海外住宅用ESSの補充が9月に正常化するか。
- OBBBA規制下での中国と韓国・日本供給企業間の米国電池輸入調達。
- 中国消費税のコスト転嫁とESSプロジェクト経済性への影響。