Private credit market, with a focus on software credit exposures and refinancing レポート解説
Goldman Sachsは、リテール向けビークルの解約が続く中でも、資金調達とプライベート・クレジット全体のファンダメンタルズは改善したと見る。AI関連のバリュエーション圧力と近づく借換需要が、ソフトウェア・クレジットの大きなばらつきを生む一方、専門的な貸出機会も創出すると予想している。
要約
Goldman Sachsは、リテール向けビークルの解約が続く中でも、資金調達とプライベート・クレジット全体のファンダメンタルズは改善したと見る。AI関連のバリュエーション圧力と近づく借換需要が、ソフトウェア・クレジットの大きなばらつきを生む一方、専門的な貸出機会も創出すると予想している。
- グローバル・プライベート・クレジットの資金調達は2Q2026に$99 billionへ回復し、ダイレクト・レンディングが回復の73%を占めた。
- Cliffwater Direct Lending Indexの過去12カ月実現損失は47bpで、ポストGFC平均の122bpを下回り、インカム・リターンは9.9%だった。
- ソフトウェアはCDLIの24%を占め、年末以降の累積未実現損失の62%を占めた。
- Goldman Sachsは、2028年のソフトウェア満期の壁を前に、借換へのアクセスをリスクと機会の双方にとって重要な注目点と位置付ける。
レポート解説
概要
このテーマ型クレジット・レポートは、資金調達と信用パフォーマンスが2026年半ばまでに改善したことで、プライベート・クレジットの解約懸念が和らいだと論じる。中心となる今後の論点はソフトウェアであり、AI関連のディスラプションによるバリュエーション圧力と近づく借換需要が、リスクと専門的な貸出機会の双方を生み出している。
主要見解
Goldman Sachsは、リテール向けビークルで解約が続いたにもかかわらず、プライベート・クレジットに対する投資家センチメントは2026年初から改善したと述べる。グローバルな資金調達額は2Q2026に$99 billionへ急増し、8月25日までの3Q2026にも$33 billionがすでに記録され、3Q2025の$45 billionを達成または上回る軌道にある。ダイレクト・レンディングは2Qの回復の73%を占め、メザニンとスペシャル・シチュエーションズの活動も目立った。レポートはまた、上場BDCのNAVディスカウントの安定化と小幅な回復、ならびに8月27日までのUSD投資適格債市場でのBDC発行額が$19 billion超となったことを指摘する。これは2024年および2025年の通年で各約$28 billionだった。 レポートは、この回復の一因として、リテールの解約動向を機関投資家向けプライベート・クレジットへ外挿すべきでないとの認識が広がったことを挙げる。機関投資家向けファンドは運用資産残高の85%超を占め、リテール向けビークルと同じ解約機能を提供していない。リテールの解約も通常は四半期当たり5%に制限される。さらに重要なのは、Goldman Sachsが1H2026のデータに広範なファンダメンタルズ悪化を見出していない点である。米国ダイレクト・レンディングの代理指標であるCliffwater Direct Lending Indexでは、2Q2026までの過去12カ月実現損失率は47bpで、ポストGFC平均の122bpを下回り、資産クラスの9.9%のインカム・リターンと比べても小さい。ノンアクルーアルは1Qの小幅な上昇後、2Q2026にやや改善した。6月30日時点のCDLIノンアクルーアルの52%は、低金利環境で組成された2021-2022年ビンテージに関連していた。PIK収入は総収入の7%未満に2四半期連続でとどまり、コベナンツ・デフォルトと1.0x未満のインタレスト・カバレッジ指標も、2022-2023年の利上げ局面で圧迫された水準から改善した。 ソフトウェアは、CDLIで24%を占める最大の業種エクスポージャーであり、シンジケート・ローンにも大きく組み入れられているため、レポートの主要な懸念点かつ機会の領域である。プライベート・エクイティは、経常収益、予測可能なキャッシュフロー、低い顧客解約率、資本の軽さ、魅力的な利益率を理由に、従来ソフトウェアを選好してきた。Goldman Sachsは、AIによる潜在的なディスラプションが一部のレガシー事業モデルに挑戦を与え、バリュエーション圧力をもたらしていると考えるが、各社の脆弱性によって結果は大きく異なるとしている。Lincoln Internationalによるソフトウェア・ローンの平均公正価値は4Q2025から額面の1.3%低下し、高LTVのローンほど下落が大きかった。CDLIのソフトウェア・エクスポージャーは2Q2026までに4.10%の累積未実現評価損を示し、年末以降の同指数の未実現損失全体の62%を占めた。 レポートは、今後のプライベート・クレジットの再価格設定の可能性を測る指標として、シンジケート・ローン市場のソフトウェア・ローンを利用する。その加重平均入札価格は、2025年末の$95.2から2Q2026末の$85.6へ下落し、8月25日には$87.6へ一部回復した。バリュエーションの重しは活動量も減らしており、プライベート・クレジットのテクノロジー案件量は2Q2026に前四半期比3%減、前年同期比27%減となった。$1 billion以上のローンと定義されるジャンボ・プライベート・クレジット融資は、2026年8月中旬までに13件、合計で$15 billion弱にとどまった。開示情報のある案件の平均規模は$1.8 billion、年初来の平均スプレッドは463bpであり、直近の新規ジャンボ案件の示唆スプレッドは500bpから550bpへ拡大した。より広範なプライベート・クレジット・ローンでは、調整後EBITDAが$40 million-$100 millionの企業で4Q2025からスプレッドが25-50bp拡大し、ソフトウェア企業では25-100bp拡大した。 取引の抑制はレバレッジと業種構成も変化させた。アッパー・ミドルマーケットおよび大型案件のプライベート・クレジット取引では、企業レバレッジは7月に5.7xから5.1xへ低下し、2024年11月以来最大の月間下落となった。ソフトウェアは直近3カ月のアッパー・ミドルマーケットおよび大型のプライベート・クレジット資金によるLBOの4%にすぎず、2026年最初の4カ月の26%から低下した。シンジケート・ローン新規発行では、ソフトウェアの構成比は全新規発行タイプで2025年の17.6%から1H2026の8.8%へ、LBOでは34.5%から14.4%へ低下した。ただし、低金利、活発なソフトウェア取引、AIディスラプション懸念前のバリュエーションという環境で組成された2020-2021年ビンテージでは、レバレッジが上昇している。 Goldman Sachsは借換へのアクセスを今後の重要な注目点と位置付ける。PitchBook LCDが追跡するBDCユニバースは$500 billionに達し、2028年から満期の壁が急になる。予定されたBDC満期のうちソフトウェア関連は2027年に約17%、2028-2029年には24%へ上昇する。$90未満で取引されるローンは借換困難の兆候となり得る。資本構成に見合う成長への実行可能な道筋がない困難な事業モデルでは、貸し手による支配権取得が起こり得る。貸し手による支配権取得を通じた債務再編は1H2026に$22.3 billionに達し、2025年通年の$24.2 billionに迫った。一方で、ソフトウェアの借換需要は、Preqinによると総ドライパウダーが$220 billion超あるメザニン、スペシャル・シチュエーションズ、オポチュニスティック、ディストレスト戦略を中心に、プライベート・クレジットがシンジケート・ローンからシェアを取り戻すことを可能にする可能性がある。 プライベート市場での借換競争は現在も激しい。シンジケート・ローン市場からプライベート・クレジットへ移る借り手であるプライベート・クレジットの「steals」は、シンジケート・ローン市場が広範な借り手にとって利用しやすい状態にあるため、2026年は2024-2025年のペースを大きく下回っている。これが1H2026のプライベート・クレジットにおけるコベナンツの総体的な緩和に寄与した。流動性プレミアムは縮小したがなおプラスであり、米国ダイレクト・レンディングLBOは同等のシンジケート・ローンLBOよりおよそ114bp広いスプレッドで価格設定された。Goldman Sachsは、シンジケート・ローン市場が借り手にとって受け入れにくくなれば、プライベート・クレジットの価格、条件、契約条項はより貸し手有利に移行すると見込む。
分析フレームワーク
本レポートはまず、資金調達、BDCの市場指標、資金調達のための債券発行を通じてプライベート・クレジットのセンチメントを評価する。次に、ダイレクト・レンディングの損失、ノンアクルーアル、PIK収入、コベナンツ、インタレスト・カバレッジのデータで幅広い信用健全性を検証する。最後にソフトウェア・エクスポージャーを切り分け、プライベート市場とシンジケート・ローン市場の価格および取引活動を比較し、レバレッジと満期構成を分析したうえで、借換フローを信用リスクと貸出機会を結ぶ仕組みとして扱う。
手法メモ
実現損失、ノンアクルーアル、PIK収入、コベナンツ・デフォルト、インタレスト・カバレッジ、ローン・スプレッドによるプライベート・クレジットの健全性評価。
レポートは信用パフォーマンス指標を用いて、広範なプライベート・クレジットの悪化が顕在化していないことを論じる一方、スプレッド拡大と弱い評価がソフトウェアに集中するストレスを示すとしている。
ソフトウェアのEV/EBITDAマルチプルとローン公正価値の比較。
レポートは、AI関連のディスラプション認識の影響と、レバレッジおよび事業モデルのエクスポージャーが生むばらつきを示すため、ソフトウェアのバリュエーション変化とローン評価損を用いる。
シンジケート・ローンの価格と借換フローを、将来のプライベート・クレジット再価格設定および貸出条件の代理指標として使用。
レポートは公開市場とプライベート・クレジット市場を結び付け、シンジケート・ローン市場の受容性の変化が、プライベート・クレジットのスプレッド、コベナンツ、借換シェア、貸し手の交渉力に影響するとしている。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- US private credit資金調達が回復し、損失、ノンアクルーアル、コベナンツ、カバレッジ指標が抑制されたことで、広範な信用環境は改善した。
- 強み
- 資金調達の回復、9.9%のCDLIインカム・リターン、ポストGFC平均を下回る実現損失。
- 弱み
- リテール向けビークルの解約は継続しており、プライベート市場のコベナンツ条件は1H2026に緩和した。
- 比較
- 米国ダイレクト・レンディングLBOのスプレッドは、シンジケート・ローンのスプレッドをおよそ114bp上回った。
- リスク
- ソフトウェアへの集中と将来の借換需要が、信用結果を不均一にする可能性がある。
- Software private-credit exposuresAI関連のバリュエーション圧力に直面する一方、借換機会も持つ主要なプライベート・クレジット・エクスポージャー。
- 強み
- 借換需要は、専門的なメザニン、スペシャル・シチュエーションズ、オポチュニスティック、ディストレスト融資を支える可能性がある。
- 弱み
- ローン公正価値と未実現評価損は低下し、取引活動とLBOファイナンスにおけるソフトウェアの比率も下落した。
- 比較
- シンジケート・ローン市場のソフトウェア・ローン入札価格は2Q2026まで大幅に下落しており、今後のプライベート・クレジット再価格設定の代理指標として用いられている。
- リスク
- 事業モデルの混乱、高LTV、初期ビンテージのレバレッジ、借換困難。
主要データ
- グローバル・プライベート・クレジットの資金調達$99 billion2Q2026。8月25日までの3Q2026には$33 billionが記録され、3Q2025の$45 billionと比較される。
- 資金調達回復に占めるダイレクト・レンディングの比率73%2Q2026の資金調達回復に占める割合。
- CDLI実現損失率47bp2Q2026までの過去12カ月の比率。ポストGFC平均122bpとの比較。
- CDLIインカム・リターン9.9%実現損失が収益創出に比べ小さいことを示すために使用。
- CDLIに占めるソフトウェアの比率24%プライベート・クレジットの代理指数における最大の業種比率。
- ソフトウェアの未実現評価損4.10%4Q2025から2Q2026までのCDLI累積未実現損失。ソフトウェアは未実現損失全体の62%を占めた。
- シンジケート・ローンのソフトウェア・ローン入札価格$95.2 to $85.6 to $87.6それぞれ2025年末、2Q2026末、2026年8月25日時点。
- ジャンボ・プライベート・クレジット活動Just under $15 billion across 13 deals2026年8月中旬まで。開示された案件の平均規模は$1.8 billion、年初来平均スプレッドは463bp。
- 新規ジャンボ案件の示唆スプレッド500bp to 550bpKBRA DLDによる直近の示唆で、年初来平均463bpを上回る。
- ソフトウェア関連BDC満期17% in 2027; 24% in 2028-2029Goldman SachsがPitchBook LCDデータを用いて推計した予定満期に占める割合。
影響と示唆
Goldman Sachsは、プライベート・クレジット全体の環境は2026年初の解約懸念が示唆したよりも安定していると見る一方、ソフトウェアを銘柄選別と価格設定上の差別化要因と捉えている。借換需要は、困難なソフトウェア借り手のストレスを高める一方で、公開信用市場が受け入れにくくなれば専門戦略の投資機会を生み出し得る。
リスク
- レガシー・ソフトウェアの事業モデルは、追加的なバリュエーション圧力とAI関連のディスラプションに直面する可能性があり、結果はクレジットごとに大きく異なる。
- 高LTVのソフトウェア・ローンはより大きな公正価値下落を経験しており、ソフトウェアは年末以降のCDLI未実現損失の62%を占めた。
- 2028年のソフトウェア満期の壁は、借換や資本構成に見合う成長ができない借り手を貸し手による支配権取得にさらす可能性がある。
- シンジケート・ローン市場が借り手にとって受け入れやすい状態が続く中、プライベート・クレジットのコベナンツ条件は1H2026に総じて緩和した。
注目点
- ソフトウェア借り手の借換へのアクセス。特にBDCの満期の壁が2028年から急になる点。
- $90未満で取引されるストレス下ローンが近い将来の満期に占める比率。
- シンジケート・ローンにおけるソフトウェアの追加的な再価格設定と、それがプライベート・クレジットのバリュエーションへ与える影響。
- プライベート・クレジットの「steal」案件量、ジャンボ案件スプレッド、シンジケート・ローン市場が借り手にとって受け入れにくくなるかどうか。
- ソフトウェアの取引活動、レバレッジの変化、AI関連の事業モデル・ディスラプションの証拠。