レポート解説
ウォール街の主要投資銀行による最新リサーチをカバー
レポート解説Hilo Research

マクロ:7月の財政赤字はさらに縮小し、第3四半期初めの財政政策は引き続き成長の足かせとなった

7月の予算ベース財政収入は前年同月比11.7%増加した一方、支出はわずか0.5%増にとどまり、ゴールドマン・サックスの拡張財政赤字指標も引き続き縮小した。レポートは、年内残りで利用可能な政府資金7.1兆元の執行がより迅速化し、財政インパルスが下半期に緩やかな支援へと徐々に転じると予想するが、そのペースは従来予想より遅い可能性がある。

機関Goldman Sachs (Asia) L.L.C.
日付20260821
企業中国の財政政策および財政収入・支出
業界マクロ

要約

7月の予算ベース財政収入は前年同月比11.7%増加した一方、支出はわずか0.5%増にとどまり、ゴールドマン・サックスの拡張財政赤字指標も引き続き縮小した。レポートは、年内残りで利用可能な政府資金7.1兆元の執行がより迅速化し、財政インパルスが下半期に緩やかな支援へと徐々に転じると予想するが、そのペースは従来予想より遅い可能性がある。

—
中国の財政政策財政収入財政支出拡張財政赤字土地売却収入不動産政府債券成長安定化政策
  • 7月の予算ベース財政収入は前年同月比11.7%増加し、6月の8.7%増から加速した。
  • 7月の予算ベース財政支出は前年同月比わずか0.5%増で、6月の4.0%増から減速した。
  • 土地売却収入は前年同月比27.1%減少し、6月の42.1%減から縮小した。
  • GDPに占める拡張財政赤字の12カ月移動平均は-10.2%から-9.8%へ縮小した。
  • ゴールドマン・サックスは、年内残りで7.1兆元の政府資金が利用可能と推定している。
  • 財政インパルスは、第2四半期の成長抑制から下半期には緩やかなけん引役へ徐々に転じると見込まれる。

レポート解説

概要

本レポートは、7月の中国の財政収入、支出、不動産関連政府収入、および広義の資金調達状況を分析している。収入増加の加速と支出の大幅な減速により財政赤字は引き続き縮小しており、財政政策がまだ大幅に強化されていないことを示す。ゴールドマン・サックスは、政府が今後数カ月に既存の財政資源の利用を加速する一方、成長がさらに鈍化した場合には追加緩和の選択肢を維持すると予想している。

主要見解

予算ベース財政収入の伸びは引き続き加速した。7月の収入は前年同月比11.7%増となり、6月の8.7%増から上昇した。ゴールドマン・サックスの季節調整ベースでは、年率換算しない前月比伸び率は7月に3.7%となり、6月の2.8%から上昇した。この改善は、PPIインフレの低下と経済活動の伸びの弱まりを背景に生じ、主に税収によってけん引された。税収の前年比伸び率は6月の10.8%から13.9%へ上昇し、非税収が2.9%増から5.4%減へ転じた影響を上回った。加速は主に付加価値税、消費税、個人所得税によるものであり、法人所得税収入も7月に前年同月比22%増加した。レポートはまた、より大きな財政圧力に直面する一部地方政府が最近、徴税・税務管理を強化しているとの逸話的証拠を挙げる一方、市場ではオフショア信託からの所得および海外で発行された商品に関連する新税の影響を評価していると指摘する。 財政支出は著しく減速し、収入の伸びとの差はさらに拡大した。7月の予算ベース財政支出は前年同月比0.5%増となり、6月の4.0%増から低下した。季節調整済み・年率換算なしの前月比伸び率は、6月の2.5%増から7月には0.3%減へ転じた。社会保障・雇用、都市・農村コミュニティ関連、ならびに省エネルギー・環境保護への支出の伸び鈍化は、農業・林業・水利関連支出の加速を上回った。ゴールドマン・サックスは、予算ベースのインフラ関連財政支出が7月に前年同月比3.6%減少したと推定しており、6月の1.8%減よりも大幅な減少で、インフラ投資の前年比縮小幅拡大と概ね整合的である。 不動産関連の政府収入は依然弱かったが、前年比減少幅は6月から縮小した。土地売却収入は7月に前年同月比27.1%減となり、6月の42.1%減より改善した。季節調整済み・年率換算なしの前月比では、6月の8.9%減から7月には5.1%増へ転じた。予算ベースの不動産関連税収は前年同月比1.1%減となり、6月の12.3%減からも改善した。両者を合わせると、ゴールドマン・サックスは不動産セクターから直接得られる政府収入が7月に前年同月比17.8%減少したと推定しており、6月の31.6%減と比べ改善している。一部主要都市の住宅価格には改善の初期的兆候がみられるものの、土地販売、住宅着工、不動産投資を含む大半の活動指標は今年、市場予想を下回る状態が続いている。不動産不況の長期化、とりわけ弱い建設活動と多くのデベロッパーにとって依然厳しい資金調達環境を踏まえ、レポートは通年の土地売却収入が約20%減少すると引き続き予想している。 一般公共予算と政府性基金予算を合わせると、政府総収入は7月に前年同月比6.9%増となり、6月の1.8%増から上昇した一方、政府総支出の前年比減少率は12.0%から4.4%へ縮小した。ゴールドマン・サックスの季節調整済み実効財政赤字比率は、7月時点で3カ月移動平均ベースGDP比-3.7%、12カ月移動平均ベース-4.5%であり、6月のそれぞれ-3.9%、-4.7%と比べ改善した。さらに予算外の追加資金調達チャネルを組み入れると、7月の拡張財政赤字比率は3カ月移動平均ベースでGDP比-7.2%、12カ月移動平均ベースで-9.8%となった。3カ月指標は6月から横ばいだった一方、12カ月指標は6月の-10.2%からさらに縮小した。これに基づき、レポートは財政政策支援が7月に大幅には強化されず、第3四半期初めも成長の足かせであったと結論付けている。 政策シグナルは実施加速へと転じたが、措置が効果を発揮するまでには遅れがある。レポートは、7月の政治局会議がより強い緩和シグナルを示し、8月17日の国務院全体会議が通年の経済・社会発展目標達成に向けた一層の努力を求め、8月21日の記者会見で財政部が資金利用の加速、内需拡大への取り組み強化、支出進捗が遅い地域に対する監督・指導強化を表明したことを指摘する。財政部はまた、マクロ経済状況に基づき、下半期に実務的かつ効果的な追加政策を導入すると述べた。ゴールドマン・サックスは、政策協調と地方での実施に要する時間が、財政支援がまだ大幅に強化されていない理由の一部であるとみている。 7月末時点で、ゴールドマン・サックスは年内残りで7.1兆元の政府資金が利用可能と推定している。これには、通年枠11.9兆元の48%に当たる未使用の新規政府債発行枠5.7兆元、昨年の5,000億元から増加した今年の新たな政策性金融商品8,000億元、ならびに財政預金残高の前年比6,000億元超の増加が含まれる。レポートは、政府が今後数カ月に債券発行と調達資金の支出を加速させるとともに、新たな政策性金融商品の実施を進めると予想している。経済がさらに減速し、通年成長目標である4.5%~5.0%に圧力がかかる場合、政府は追加緩和を導入する可能性がある。これらの措置により、財政インパルスは第2四半期の成長抑制から下半期には緩やかなけん引役へ徐々に転じる可能性があるが、その移行はゴールドマン・サックスが従来予想していたより遅い可能性がある。

分析フレームワーク

本レポートはまず、予算ベース財政収入・支出の前年比および季節調整済み前月比の変化を分解し、その後、税収、非税収、主要支出項目の寄与を分析する。続いて、土地売却収入と不動産関連税を組み合わせ、不動産不況が政府収入に及ぼす影響を評価する。その後、一般公共予算、政府性基金予算、追加の予算外資金調達チャネルを段階的に組み入れ、実効財政赤字と拡張財政赤字を用いて財政支援の強度を測定する。最後に、残存債券枠、政策性金融商品、財政預金、最近の政策発言に基づき、下半期の財政インパルスの軌道を評価する。

手法メモ

  • マクロ経済フレームワークその他

    拡張財政赤字(AFD)

    ゴールドマン・サックス独自の指標であり、予算上の収入・支出を超える追加の予算外資金調達チャネルを組み入れることで、政府の資金調達ギャップおよび経済成長に対する財政政策支援の強さをより包括的に評価する。

  • 定量・ファクター・ポートフォリオ理論その他

    季節調整と移動平均

    レポートは財政データにゴールドマン・サックスの季節調整を適用し、季節性や月次変動による干渉を軽減するとともに、短期的な安定性と中期的な赤字縮小傾向を区別するため、3カ月および12カ月の移動平均を検討している。

  • マクロ経済フレームワークその他

    財政インパルス分析

    レポートは財政赤字とその変化を用いて、財政政策が経済成長にもたらす限界的な押し上げまたは抑制を評価し、財政インパルスが第2四半期のマイナス影響から下半期には緩やかなプラス影響へ徐々に転じる可能性があると結論付けている。

主要データ

  • 予算ベース財政収入の伸び2026年7月:前年同月比+11.7%、季節調整済み・年率換算なし前月比+3.7%6月の対応する数値は、前年同月比+8.7%、前月比+2.8%だった。
  • 税収の伸び2026年7月:前年同月比+13.9%6月の数値は前年同月比+10.8%だった。
  • 非税収の伸び2026年7月:前年同月比-5.4%6月の数値は前年同月比+2.9%だった。
  • 法人所得税収入の伸び2026年7月:前年同月比+22%レポートによると、その伸びは高水準を維持した。
  • 予算ベース財政支出の伸び2026年7月:前年同月比+0.5%、季節調整済み・年率換算なし前月比-0.3%6月の対応する数値は、前年同月比+4.0%、前月比+2.5%だった。
  • 予算ベースのインフラ関連財政支出2026年7月:前年同月比-3.6%6月の数値は前年同月比-1.8%であり、減少幅の拡大を示している。
  • 土地売却収入の伸び2026年7月:前年同月比-27.1%、季節調整済み・年率換算なし前月比+5.1%6月の対応する数値は、前年同月比-42.1%、前月比-8.9%だった。
  • 不動産関連税収の伸び2026年7月:前年同月比-1.1%6月の数値は前年同月比-12.3%だった。
  • 不動産から直接得られる政府収入2026年7月:前年同月比-17.8%ゴールドマン・サックスは、6月の数値を前年同月比-31.6%と推定している。
  • 通年の土地売却収入予測前年比約20%減少不動産不況の長期化、弱い建設活動、厳しいデベロッパー資金調達環境に基づく。
  • 政府総収入および総支出2026年7月:総収入は前年同月比+6.9%、総支出は前年同月比-4.4%6月の対応する数値は+1.8%および-12.0%だった。
  • 実効財政赤字比率2026年7月時点:3カ月移動平均ベースでGDP比-3.7%、12カ月移動平均ベースで-4.5%6月の対応する数値は-3.9%および-4.7%だった。
  • 拡張財政赤字比率2026年7月時点:3カ月移動平均ベースでGDP比-7.2%、12カ月移動平均ベースで-9.8%6月の対応する数値は-7.2%および-10.2%で、短期指標は横ばい、中期指標は縮小した。
  • 年内残りの政府資金調達余力7.1兆元2026年7月末時点のゴールドマン・サックスの推定。
  • 未使用の新規政府債発行枠5.7兆元通年枠11.9兆元の48%に相当する。
  • 新たな政策性金融商品8,000億元前年の数値は5,000億元だった。
  • 財政預金残高の増加前年比6,000億元超の増加これは年内残りで利用可能な政府資金の一部を構成する。
  • 通年の経済成長目標4.5%-5.0%成長のさらなる減速でこの目標に圧力がかかる場合、レポートは追加緩和の可能性が高まるとみている。

影響と示唆

レポートは、7月の力強い収入、弱い支出、拡張財政赤字の縮小が総合的に、財政政策がまだ大幅に強化されておらず、そのため第3四半期初めも経済成長の足かせとなったことを示しているとみている。政府債発行と資金利用が加速し、8,000億元の政策性金融商品が実施されるにつれ、財政インパルスは下半期に緩やかな支援へ転じると見込まれる。ただし、政策協調、地方での実施、支出のペースにより、この移行は従来予想より漸進的となる可能性がある。

リスク

  • 不動産不況の長期化、とりわけ弱い建設活動と依然厳しいデベロッパー資金調達環境が、土地売却収入を引き続き圧迫する可能性がある。
  • 政策協調と地方での実施には時間を要し、財政資金の執行および財政インパルスの改善ペースが従来予想より遅くなる可能性がある。
  • 経済成長がさらに鈍化した場合、通年成長目標の4.5%-5.0%に圧力がかかる可能性がある。

注目点

  • 今後数カ月の政府債発行ペースおよび調達資金の実際の支出。
  • 新たな政策性金融商品8,000億元の実施ペース。
  • 監督・指導の強化後、財政支出の進捗が遅れている地域における実施状況の改善。
  • 土地販売、住宅着工、不動産投資、土地売却収入の変化。
  • 成長減速が続く場合に、財政部が下半期向けの追加政策を導入するかどうか。

設定

最近のログインを表示するにはログインしてください