レポート解説
ゴールドマン・サックスは2026年末時点の中国AIモデルの年換算経常収益予想をUS$13bnへ引き上げ、薬明康徳、ゲーム、先端パッケージング、精製、選別された金融株に引き続き強気である一方、バリュエーションおよび価格圧力を理由にSICCを格下げした。
要約
中国AI売上予想を引き上げ、複数業種での利益改善とレーティング変更が並行
ゴールドマン・サックスは2026年末時点の中国AIモデルの年換算経常収益予想をUS$13bnへ引き上げ、薬明康徳、ゲーム、先端パッケージング、精製、選別された金融株に引き続き強気である一方、バリュエーションおよび価格圧力を理由にSICCを格下げした。
- 2026年末時点の中国AIモデルの年換算経常収益予想はUS$10bnからUS$13bnへ引き上げられ、Z.AIおよびMiniMaxの2026年売上予想はそれぞれ35%および63%引き上げられた。
- ポジティブ要因がすでにおおむね織り込まれており、小・中型炭化ケイ素基板の価格が圧迫されているため、SICCは買いから中立へ格下げされた。12カ月目標株価はRmb115からRmb104へ引き下げられた。
- 薬明康徳の第2四半期の売上高および非IFRS利益はそれぞれ前年同期比47.7%および91.7%増加し、通期売上高成長率ガイダンスは35%から39%へ引き上げられた。
- 中国のオンラインゲーム売上高は上期に前年同期比12%増加し、業界バリュエーションは過去5年の低水準付近にあり、市場の見方はAIによる破壊からAIの受益者へ移行している。
- S-Oilは精製供給の逼迫と中間留分のクラックスプレッド拡大に支えられ、2026年EBITDA予想は31%引き上げられた。
- Applied Materials、Delta Airlines、Microsoft、O’Reilly Automotive、Viking Holdings、UPSが米国コンビクション・リストに、ASML、Sika、Puigが欧州リストに追加された。
レポート解説
概要
本レポートは、ゴールドマン・サックス・グローバル・インベストメント・リサーチによるクロスマーケットの日次レポートであり、中国AIモデル、グローバル株式戦略、企業業績およびレーティング変更、アジアの保険・外国為替、米国・欧州コンビクション・リストを対象とする。全体的な見方として、世界の株式リターンは少数のテクノロジーリーダーからより多くの地域・業種へ広がり、バリュエーション拡大ではなく利益成長が主な牽引役となる一方、中国AI需要、医薬品研究開発サービスの受注、ゲームコンテンツ供給、先端パッケージング需要、精製供給制約が構造的な機会を提供するとみている。
主要見解
中国AIモデルの需要は従来予想より速く成長しているが、性能対価格比を巡る競争は一段と激化し、クラウドおよびデータセンターが引き続き選好されるサブセクターである。世界のテクノロジー大手による大規模な設備投資はテクノロジーセクターのフリーキャッシュフロー利回りを圧迫しているが、資本財など伝統産業の成長見通しを改善している。企業レベルでは、薬明康徳の受注および利益の可視性は大幅に強まり、Kinsus TechnologyはAIパッケージング基板の供給不足の可能性から恩恵を受け、S-Oilは逼迫した精製需給から恩恵を受ける。一方、SICCの研究開発および能力拡張のポジティブ要因はすでにバリュエーションにおおむね反映されている。グローバル配分では、市場相関の低下とモメンタム取引の反落がアクティブな銘柄選択に有利であり、円は日米共同介入の政策支援により下支えされる。
分析フレームワーク
本レポートは、業界の需要・供給評価、企業の四半期業績、経営陣ガイダンス、利益予想改定、相対バリュエーション、カタリストを組み合わせてボトムアップ分析を行い、グローバル戦略、マクロ政策、コモディティの需給フレームワークを用いて資産横断で検証する。コンビクション・リストの変更は、利益予想との差、市場シェア、価格決定力、中期的な利益転換点に焦点を当てている。
手法メモ
業績、ガイダンス、価格、数量、コスト、マージンの変化に基づいて将来利益を更新し、それに応じて12カ月目標株価を調整する。
この手法は、薬明康徳、SICC、MUFG、Kinsus Technology、S-Oilなどのレーティングおよび目標株価評価に用いられる。企業ごとのバリュエーション手法および前提条件は要約では完全には開示されていない。
成長性、財務リターン、バリュエーション倍率、総合スコアの4次元においてパーセンタイルで株式を市場および業界同業他社と比較する。
成長指標には通常、予想売上高、EBITDA、1株当たり利益の成長率が含まれる。財務リターンにはROE、ROCE、CROCIが含まれ、バリュエーションにはP/E、P/B、配当利回り、企業価値倍率が含まれる。総合スコアは成長性、財務リターン、逆バリュエーションのパーセンタイルの平均である。
定性的・定量的要因に基づき企業が買収対象となる確率を評価し、3つのランクに分類する。
ランク1は買収確率30%から50%、ランク2は15%から30%、ランク3は0%から15%に対応する。ランク1または2では、M&A要因が目標株価に織り込まれる場合がある。
地域別に買い評価された株式から、より大きなトータルリターンの可能性、または実現確率がより高い投資推奨を選定する。
コンビクション・リストへの追加または削除は、基礎となる投資レーティングの変更を意味するものではなく、確信度の高い機会に関する地域投資審査委員会によるポートフォリオ調整を表す。
中国の輸入需要およびサプライチェーンにおける役割に基づき、中国の政策が異なるコモディティのボラティリティを抑制するか増幅するかを評価する。
価格感応度の高いエネルギー輸入と政府による金購入は、炭化水素と金のボラティリティを抑制する傾向がある一方、重要金属の輸出規制は中国以外の市場における供給不足と価格ボラティリティを増幅し得る。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- 中国AIモデル、クラウドおよびデータセンターAI需要成長の中核的な受益分野
- 強み
- モデル呼び出しとトークン需要が加速しており、中国AIモデルの年換算経常収益予想は大幅に引き上げられた。
- 弱み
- モデル価格は急速に下落しており、個別モデル企業の収益実現には不確実性が残る。
- 比較
- ゴールドマン・サックスは、業界全体のトークン需要拡大の恩恵を受けられるため、個別モデル供給企業よりクラウドおよびデータセンターを選好する。
- リスク
- 性能対価格比競争の激化、オープンソースモデルによる価格圧力、設備投資リターンの予想未達。
- 薬明康徳 (603259.SS)業績およびガイダンス上方修正の受益者
- 強み
- 売上高、利益、受注残の成長は強く、低分子、TIDES、試験事業で堅調な受注モメンタムを有する。
- 弱み
- 利益予想の引き上げ後は、市場のその後の実行力に対する要求も高まる。
- 比較
- 一般的な医薬品研究開発サービス企業と比較して、受注拡大および利益上方修正がより顕著である。
- リスク
- 受注成長の鈍化、プロジェクト実行リスク、業界および規制環境の変化。
- SICC炭化ケイ素および先端パッケージングのテーマ株
- 強み
- 強力な研究開発能力を有し、12インチ炭化ケイ素基板に加え、AI先端パッケージングおよびAR用途における長期的な可能性を持つ。
- 弱み
- 既存のポジティブ要因はすでにおおむね織り込まれており、6インチおよび8インチ基板の価格下落が売上高と粗利益率を圧迫している。
- 比較
- 長期的な技術見通しは依然としてポジティブだが、現在のバリュエーション上昇余地は従来より弱い。
- リスク
- 製品価格の継続的な下落、能力拡張の吸収が予想より遅れること、12インチ製品の導入遅延。
- 中国ゲームおよびインターネットエンターテインメント低バリュエーションと利益の底堅さのテーマ
- 強み
- 業界は上期に前年同期比12%成長し、新コンテンツおよび長寿命ゲームのアップグレードが売上を支え、バリュエーションは過去5年の低水準付近にある。
- 弱み
- 業界成長はコンテンツの投入スケジュールとプレイヤー支出に左右され、個別銘柄のパフォーマンスはばらつく可能性がある。
- 比較
- ゴールドマン・サックスは、NetEaseとTencentのゲームの底堅さ、Bilibiliの広告・利益成長、Tencent Music Entertainmentのリスクリワードを特に前向きにみている。
- リスク
- 新作ゲームの予想未達、規制変更、ユーザー獲得コストの上昇。
- 中国の新エネルギー車メーカー販売台数、販売価格、マージンのばらつきのテーマ
- 強み
- BYD、Leapmotor、NIOは、販売台数成長、製品ミックス改善、マージン拡大の恩恵を受けると予想される。
- 弱み
- XPengは研究開発投資が高く、Li Autoは販売台数および製品ミックスの圧力に直面している。
- 比較
- レポートは、BYD、Leapmotor、NIOの純利益がそれぞれ前年同期比34%、41%、102%成長すると予想する一方、XPengとLi Autoは減少すると見込む。
- リスク
- 価格競争、モデルサイクルの失策、研究開発費の予想超過、海外展開の予想未達。
- Kinsus TechnologyAI先端パッケージング基板の需給環境改善の受益者
- 強み
- 次世代AI製品におけるパッケージサイズと層数の増加は、2027年から2028年にABF基板の供給不足を生む可能性がある。
- 弱み
- 2026年の利益予想はなお5%引き下げられており、短期的な業績実現は遅れる可能性がある。
- 比較
- 従来型エレクトロニクス需要と比べ、AI関連ABF基板は価格および粗利益率により強い支援を提供する。
- リスク
- AI需要の予想未達、能力拡張の加速による供給不足の解消、基板価格上昇の未実現。
- S-Oil精製供給の逼迫およびフリーキャッシュフロー転換点の受益者
- 強み
- 中間留分への高いエクスポージャー、世界的な新規能力の限定、Shaheenプロジェクトにより、2027年初めにフリーキャッシュフローが改善する可能性がある。
- 弱み
- 利益は引き続き原油プレミアム、クラックスプレッド、プロジェクト設備投資の影響を受ける。
- 比較
- 精製セクター内で中間留分へのエクスポージャーおよびリスクリワードが比較的良好である。
- リスク
- 精製マージンの後退、休止能力の復帰、プロジェクト遅延またはコスト超過。
- 円日米政策介入および日本銀行利上げのテーマ
- 強み
- 15年ぶりの日米共同為替介入は、さらなる円安を抑制する強いシグナルとなる。
- 弱み
- 段階的な利上げペースは遅く、金利差がなお円高を制約する可能性がある。
- 比較
- FIMAレポ・ファシリティにより、日本当局は介入のためにドルを借り入れることができ、米国債売却による市場への影響を軽減する。
- リスク
- 介入効果の短期化、日米金利差の高止まり、政策経路の変化。
- 金、重要金属、TTF、原油中国政策および地政学的供給リスクに関連するコモディティ横断配分
- 強み
- 金は政府購入に支えられ、重要金属は中国以外での供給不足に支えられ、TTFは中東の一部天然ガスリスクをより直接的に反映できる。
- 弱み
- コモディティごとに、中国政策および地政学的ショックに対する感応度は大きく異なる。
- 比較
- レポートは、TTFを原油よりホルムズ海峡リスクに対する適切なヘッジとみなし、幅広いインフレヘッジに金属を組み入れることを推奨する。
- リスク
- 中国需要の変化、輸出政策の調整、地政学的緊張の緩和、米ドル高。
主要データ
- 中国AIモデルの年換算経常収益予想US$13bn2026年末予想。従来はUS$10bn。
- Z.AIおよびMiniMaxの売上予想調整+35% / +63%両社の2026年売上予想に対するゴールドマン・サックスの上方修正。
- SICCのレーティングおよび目標株価中立;Rmb104買いから格下げ。従来の12カ月目標株価はRmb115であり、2026年から2028年の純利益予想は6%から8%引き下げられた。
- 中国オンラインゲーム業界の成長前年比 +12%2026年上期、新コンテンツ供給および長寿命ゲームのアップグレードが牽引。
- 薬明康徳の第2四半期成長率売上高 +47.7%;非IFRS利益 +91.7%いずれも前年同期比成長率であり、予想を大幅に上回った。
- 薬明康徳の通期売上高成長率ガイダンス35%から39%継続事業における2026年の前年比売上高成長率を指す。
- 薬明康徳の目標株価HK$192.70 / Rmb172.40それぞれH株およびA株の12カ月目標株価。
- MUFGの第1四半期純利益¥809.4bn、前年比 +48%利益は融資成長、国内法人向け融資のスプレッド拡大、および市場関連事業によって牽引された。
- Kinsus Technologyの基板価格見通し約 +8% 前四半期比ABFおよびBT基板価格は2026年第3四半期および第4四半期に上昇すると予想される。
- S-Oilの利益予想2026年EBITDA予想 +31%第3四半期の営業利益は前四半期比62%増加すると予想され、12カ月目標株価はW163,000へ引き上げられた。
- Xinyi Solarの利益予想2026年EBITDA予想 +57%主に出荷増、コスト低下、国内外の需給環境改善を反映。
- PICC Group Hのレーティングおよび目標株価買い;HK$7損害保険の引受業績改善およびより良好なリスクリワードに支えられ、従来レーティングから格上げ。
- Bank of Chinaの海外事業の寄与グループ税引前利益の約30%クロスボーダー金融需要および人民元国際化が長期的な利益の多様化を支える。
- 日本銀行の利上げ予想約6カ月に1回次回利上げは翌年1月と予想され、日米共同為替介入は円安圧力を緩和すると見込まれる。
- グローバル株式リサーチのカバレッジ3,104銘柄2026年7月1日時点でゴールドマン・サックス・グローバル・インベストメント・リサーチが投資レーティングを付与している銘柄数。
影響と示唆
ポートフォリオレベルでは、投資家はAI需要の拡散によるクラウド・データセンター、先端パッケージング、エンタープライズソフトウェアの機会に注目する一方、バリュエーションが低水準付近で利益が底堅いゲーム、医薬品研究開発サービス、精製、選別された金融株でリターンを追求できる。世界のテクノロジー設備投資はテクノロジーセクターのフリーキャッシュフロー利回りを引き続き圧迫する可能性があるが、その波及効果は資本財およびインフラのサプライチェーンにとってポジティブである。日米共同介入は円のショート継続に関する政策リスクを高める。コモディティ配分では、金属は幅広いインフレヘッジとして利用でき、TTFは原油よりホルムズ海峡リスクに対する適切なヘッジとみられ、金はより魅力的なエントリーポイントを示す。
リスク
- 中国AIモデル間の性能対価格比競争の激化。オープンソースおよび低価格戦略により、売上収益化と利益率が圧縮される可能性がある。
- 大手テクノロジー企業による設備投資の継続的な増加は、フリーキャッシュフロー利回りをさらに低下させ、セクターのバリュエーション格下げを引き起こす可能性がある。
- 炭化ケイ素基板、自動車、その他の製造業における価格競争は、売上高および粗利益率を悪化させる可能性がある。
- 企業利益予想は経営陣ガイダンス、受注の継続性、コスト改善に依存しており、実績が予想を下回る可能性がある。
- 精製、金、天然ガス、重要金属は、地政学的紛争、供給途絶、中国政策に高い感応度を持つ。
- 日米為替介入および日本銀行の政策経路には、実行と持続可能性に関する不確実性がある。
- コンビクション・リストの変更は超過リターンを保証するものではなく、基礎となる投資レーティングの変更と同義ではない。
- 為替変動は、クロスマーケット資産の価格、収益、投資リターンに影響を及ぼす可能性がある。
注目点
- 中国AIモデルのトークン消費、価格変更、企業顧客の導入スピード。
- Z.AIおよびMiniMaxの売上上方修正が実現できるか、およびバリュエーションが目標株価引き下げをどのように消化するか。
- 薬明康徳の受注残、TIDES事業、2026年売上高成長率35%から39%のガイダンスに対する実行進捗。
- SICCの12インチ炭化ケイ素基板の量産ペースおよび小・中型製品の価格。
- 中国ゲームの第2四半期業績、新コンテンツ投入、広告収益化のトレンド。
- NEV企業の販売台数、平均販売価格、研究開発費、EBITマージンのばらつき。
- 2026年下期のABF基板価格上昇および2027年から2028年の潜在的な供給不足。
- ロシアおよび中東の精製能力の障害、中間留分のクラックスプレッド、S-OilのShaheenプロジェクト進捗。
- 日米共同介入後のUSD/JPYトレンドおよび日本銀行の次回利上げの時期。
- 米国および欧州コンビクション・リストに新規追加された企業の利益予想差およびカタリスト実現。