Global cross-asset and equity research roundup レポート解説
本レポートはグローバル戦略と企業・セクターアップデートを組み合わせ、利益主導の市場の広がりと相関低下が、より多くの選別的なalpha機会を生んでいると論じる。中国AIモデル収益の加速、中国ゲームの強靭性、NEV利益の分化、精製の需給逼迫、USおよびEuropean Conviction Listsへの複数の追加を注目点としている。
要約
本レポートはグローバル戦略と企業・セクターアップデートを組み合わせ、利益主導の市場の広がりと相関低下が、より多くの選別的なalpha機会を生んでいると論じる。中国AIモデル収益の加速、中国ゲームの強靭性、NEV利益の分化、精製の需給逼迫、USおよびEuropean Conviction Listsへの複数の追加を注目点としている。
- 中国AIモデルの2026年末ARR予想をUS$10bnからUS$13bnへ引き上げ。
- グローバル株式リターンはバリュエーション拡大ではなく利益成長により広がっている。
- レポートによると、中国オンラインゲームは1H26に前年比12%成長。
- WuXi AppTecはFY26継続事業の売上高成長ガイダンスを35-39%へ引き上げ。
- PICC Group HはBuyへ格上げ、12カ月目標株価はHK$7。
- Applied Materials、Microsoft、Viking Holdings、ASMLが地域Conviction Listsへ追加。
レポート解説
概要
本レポートは、中国AIモデル、株式戦略、セクタープレビュー、企業決算、保険、日本マクロ、コモディティ、US/EU Conviction Listsを網羅するグローバル調査の総括である。中心的な市場見通しは、利益主導の主導権が広がる中、複数の業界・企業アップデートが具体的な利益、価格、需給のカタリストを示しているというものだ。
主要見解
中国インターネットおよびAIモデルについて、Goldman Sachsは、需要の上振れと立ち上がりの加速を理由に、2026年末の中国AIモデル年換算経常収益総額の見通しをUS$10bnからUS$13bnへ引き上げた。Z.AIとMiniMaxの2026E売上高予想はそれぞれ35%と63%引き上げた。一方で、Z.AIのNeutral、MiniMaxのBuyを維持しつつ、12カ月目標株価はそれぞれHK$1,610とHK$800へ引き下げた。最適な性能対価格を巡る競争は激化しており、MiniMaxのH3オープンウェイト製品は同業他社のおよそ3分の1で価格設定されている。AI token需要の拡大を背景に、Goldman Sachsは引き続きCloud & Data Centersを選好している。 グローバル株式について、レポートは現状を健全な正常化と位置付ける。リターンは地域・セクター横断で広がっており、その原動力はバリュエーション拡大ではなく強い利益成長である。ハイパースケーラーの巨額設備投資はテクノロジーのフリーキャッシュフロー利回りを低下させ、セクターの評価切り下げをもたらしたが、同じ投資サイクルはIndustrialsなどオールドエコノミー産業の成長見通しとバリュエーションを押し上げている。株式相関の低下とモメンタム解消による主導銘柄交代を受け、Goldman Sachsは株式選別と成長領域内での価値発掘の機会が高まっているとみている。 中国テクノロジーでは、Goldman SachsはSICCをBuyからNeutralへ格下げし、12カ月目標株価をRmb115からRmb104へ引き下げた。12インチSiC基板の投入、AI先端パッケージングおよびARデバイスでの用途拡大には引き続き前向きだが、強い研究開発と能力拡張の好材料は概ね織り込み済みと判断している。6インチ・8インチSiC基板の価格下落を反映して売上高と粗利益率の前提を下げ、2026-28E純利益予想を6-8%引き下げた。別途、Kinsusについては、次世代AI製品の大型化・多層化を背景に2027-28年にABF基板の供給不足が起こり得るとみる。ABFおよびBT基板価格は3Q26、4Q26とも約8%の前四半期比上昇を見込み、2027-29E利益予想を5-10%上方修正、2026E利益を5%下方修正し、12カ月目標株価をNT$1,125へ引き上げた。 中国ゲームでは、Goldman Sachsは2Q26決算シーズンを前に、防御的な特性が表れているとみる。セクターのマルチプルは5年ぶりの低水準近辺にあり、市場の物語はAIによる破壊からAI受益者へ移行している。新コンテンツの継続供給と長寿命タイトルのアップグレードにより、オンラインゲーム業界は1H26に前年比12%の成長を示した。Buy評価のNetEaseとTencentをゲームの強靭性、Bilibiliを広告・利益の急成長、Tencent Music Entertainmentを良好なリスク・リワードで注目している。 中国モビリティテックでは、Goldman Sachsは2Q26に販売量と平均販売価格の動向が分化し、カバーするNEV OEMのマージンと利益の軌跡も混在すると見込む。LeapmotorとNioは競争力ある新モデルの投入・納車により、前年比57%および49%で最も強い販売量成長が予想される。BYDとXPengは横ばい、Li Autoは前年比11%減の見通しである。高級モデルと海外寄与により、BYDとNioのASPは前年比12%および23%上昇する一方、Li Autoは製品ミックス変化で8%低下すると推定する。BYD、Leapmotor、Nioは販売量増加と製品ミックス改善でEBITマージンが改善するが、XPengは研究開発費増、Li Autoは販売量減により低下するとみる。純利益はBYD、Leapmotor、Nioでそれぞれ前年比34%、41%、102%増、XPengとLi Autoで137%、213%減をモデル化している。Goldman SachsはBYD、Leapmotor、NIO、XPengをBuyとしている。 企業アップデートは全般に建設的だが、内容は一様ではない。WuXi AppTecは2Q26の売上高とnon-IFRS利益が前年比47.7%および91.7%増で、Goldman Sachs予想を大きく上回った。経営陣は小分子、TIDES、Testing事業の強い受注残拡大と受注モメンタムを背景に、FY26継続事業の売上高成長ガイダンスを前年比35-39%へ引き上げた。これによりGoldman SachsはFY26-28E non-IFRS利益予想を13.9%、13.0%、12.9%上方修正し、12カ月目標株価をHK$192.70/Rmb172.40へ引き上げた。MUFGの第1四半期純利益は¥809.4bn、前年比48%増で、政府向けを除く融資の11%増、国内法人貸出スプレッド拡大、株式利益やセールス・トレーディングを含む市場関連業務が寄与した。市場関連収益の追い風は第2四半期以降に落ち着く可能性があるが、コア事業収益は持続可能とみて、FY3/27からFY3/29の純利益予想を最大1%上方修正し、目標株価を¥3,900から¥4,000へ引き上げた。 消費、エネルギー、太陽光では、Eastroc Beverageは目標株価をRmb155.40へ引き下げたもののBuyを維持する。厳しい天候によりエナジードリンクとBushuilaが前四半期比で減速し、2026-28年の売上高予想を2-6%、2027-28年の純利益予想を3-5%引き下げた。ただし、上期に前倒ししたマーケティング・冷蔵庫投資と最低80%の配当性向コミットメントが下期マージンへの信頼を支える。Luckin Coffeeは2Q25の売上高とnon-GAAP純利益が前年比29%および22%増のRmb15,886mn、Rmb1,753mnとなり、Goldman Sachs予想を3%および19%上回った。21.3%の直営店営業マージンとデリバリー費用率の低下を踏まえ、2026-28年の利益予想を上方修正し、12カ月目標株価をUS$51へ引き上げた。S-Oilでは、2026 EBITDA予想を31%引き上げ、原油プレミアムの低下と中間留分クラックの上昇を受け、3Q営業利益は前四半期比62%増を見込む。世界的な能力増設の限定、ロシアと中東で約6.5mb/dの能力停止、Shaheenプロジェクトによる2027年初のフリーキャッシュフロー転換の可能性が、精製業への建設的な見方を支える。Xinyi Solarの1H26利益はガイダンスに沿ったもので、国内の供給規律と海外需要回復による見通し改善を受け、出荷増とコスト低下を反映して2026E EBITDA予想を57%引き上げた。 中国保険では、Goldman Sachsは第2四半期の株式投資利益により1H26利益が力強く伸びると予想するが、その大半は織り込み済みとみる。銀行窓販の混乱と比較ベース上昇により新契約価値の成長は鈍化すると予想し、年初来の投資市場動向と低い債券利回りを反映してセクターの12カ月目標株価を-3%から+11%調整した。生命保険会社より損害保険会社を選好する。インテリジェント車の構成比上昇が事故頻度をさらに低下させ、今後12カ月でアンダーライティング・マージンの転換点をもたらすとみる。業界リーダーは安全性向上による利益の一部を維持し、コンバインドレシオをさらに改善すると予想する。PICC Group HをBuyへ格上げし、12カ月目標株価をHK$7とした。PICC P&CはBuy、12カ月目標株価HK$20.2を再表明し、PICC Group AはSell、12カ月目標株価Rmb6.4を維持した。 マクロとグローバルリストでは、Goldman Sachsは15年ぶりの米日協調為替介入を、さらなる円安に対する強いシグナルとみる。Federal ReserveのFIMA Repo Facilityを計画的に利用することで、日本当局はUS Treasuriesを売却せずに介入用の米ドルを借り入れられ、米金融市場へのリスクを軽減できる。これによりBank of Japanへの圧力が和らぎ、政策運営の柔軟性が高まるとみる。BOJはおよそ6カ月間隔で緩やかに利上げを進め、次回は来年1月と予想している。US Conviction ListではApplied Materials、Delta Air Lines、Microsoft、O'Reilly Automotive、Viking Holdings、UPSを追加した。Goldman Sachsは、それぞれDRAM・主要ファウンドリーでのシェア獲得、航空業界の価格決定力、企業でのAI活用、DIFM市場でのシェア獲得、差別化されたクルーズ・エクスポージャー、売上高・利益の転換を挙げる。ASML、Sika、PuigはEuropean Conviction Listへ追加され、ASMLについては能力増設の可視性向上と2029年の50%マージン到達を見込み、FY27-29 EPS予想はコンセンサスを5-18%上回る。 コモディティでは、中国政策は価格感応的な輸入需要を通じて炭化水素と金の価格変動を抑える一方、サプライチェーン支配力を活用する重要金属では変動を拡大させると論じる。中東供給が減少する中、中国がLNGと原油の純輸入を減らしたことは市場安定化に寄与し、主権による金購入は価格トレンドを押し上げつつ変動を抑えた。一方、重要金属の輸出制限は中国外での供給不足と価格の急騰を引き起こした。
分析フレームワーク
レポートは、ボトムアップの利益、販売量、価格、マージン、目標株価の改定と、業界の需給分析およびトップダウンの市場戦略を組み合わせている。実績動向を予想またはコンセンサスと比較し、業界環境を利益・バリュエーションへの影響に結び付け、政策および市場構造の変化からマクロ、為替、コモディティの見方を示している。
手法メモ
需給分析
レポートは能力増設、能力停止、製品需要、供給規律を用いて、精製マージン、基板価格、太陽光の採算性、重要金属価格の動きを説明している。
販売量、ASP、マージンの分解
NEVメーカーについて、Goldman Sachsは予想販売量成長、平均販売価格の変化、EBITマージン、純利益の結果を分けて分析し、業績の分化を説明している。
バリュエーション・マルチプル分析
レポートはセクターの評価切り下げ、ゲーム業界の5年ぶり低水準のマルチプル、好材料の織り込みを議論し、利益とバリュエーションの変化から期待上昇余地を示している。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- Z.AI需要拡大の恩恵を受ける一方、性能対価格の競争激化に直面する中国AIモデル開発企業
- 強み
- 2026E売上高予想を35%上方修正。
- 弱み
- Neutral評価を維持し、目標株価をHK$1,610へ引き下げ。
- 比較
- MiniMaxのH3オープンウェイトモデルの価格は同業他社のおよそ3分の1。
- リスク
- 競争がバリュエーションと上昇余地を制約する可能性。
- MiniMax性能対価格のポジショニングが注目される中国AIモデル開発企業
- 強み
- 2026E売上高予想を63%上方修正し、Buy評価を維持。
- 弱み
- 12カ月目標株価をHK$800へ引き下げ。
- 比較
- H3オープンウェイトモデルの価格は同業他社のおよそ3分の1。
- リスク
- AIモデル競争の激化。
- SICC拡張のプラス要因がバリュエーションに織り込まれたとして格下げされたSiC基板企業
- 強み
- 12インチ製品の投入とAI先端パッケージングおよびARデバイスでの用途拡大は引き続き前向き。
- 弱み
- 2026-28E純利益予想を6-8%引き下げ。
- 比較
- 6インチおよび8インチ基板の価格が下落している。
- リスク
- 売上高および粗利益率の前提引き下げ。
- WuXi AppTecガイダンスと利益予想が引き上げられたCDMO企業
- 強み
- 2Q26売上高とnon-IFRS利益は前年比47.7%および91.7%増、受注残と新規受注モメンタムが強い。
- 比較
- 業績はGoldman Sachsの予想を大幅に上回った。
- PICC Group Hアンダーライティング・マージン改善の恩恵を受ける中国損害保険銘柄
- 強み
- Buyへ格上げ、12カ月目標株価はHK$7。
- 弱み
- セクターの利益成長は大半が織り込まれているとみられる。
- 比較
- Goldman Sachsは生命保険会社よりも損害保険会社を選好している。
- リスク
- 銀行窓販の混乱と比較ベース上昇により新契約価値の伸びが鈍化する可能性。
- ASML (ASML)European Conviction Listへの追加
- 強み
- 設備投資の可視性向上と、2029年に50%へ達する可能性のあるマージン拡大。
- 比較
- FY27-29 EPS予想はコンセンサスを5-18%上回る。
- Viking Holdings (VIK)US Conviction Listへの追加
- 強み
- 差別化された地域エクスポージャーと高所得層の顧客基盤。
- 比較
- これらの特徴が不安定なクルーズ市場環境を相殺すると見込まれる。
- リスク
- 不安定なクルーズ市場環境。
主要データ
- 中国AIモデルARR予想US$13bn by end-2026需要増加と立ち上がり加速を理由にUS$10bnから引き上げ。
- 中国オンラインゲーム成長率12% year-on-year1H26の実績。
- WuXi AppTec FY26売上高成長ガイダンス35-39% year-on-year継続事業向けで、経営陣が引き上げた。
- MUFG 1Q純利益¥809.4bn前年比48%増。
- S-Oil 3Q営業利益見通し+62% quarter-on-quarter原油プレミアム低下と中間留分クラック上昇を背景に予想。
- 世界の精製能力停止Approximately 6.5mb/dロシアおよび中東での停止。
- ASMLマージン見通し50% by 2029Goldman Sachsは能力増設の可視性がマージン進展を支えると予想。
影響と示唆
Goldman Sachsは、利益主導で市場の広がりが増し、相関が低下する環境では、一律のセクター判断より選別的な銘柄選択が有利になると位置付ける。選好するエクスポージャーは、AI token需要、一部ゲーム・モビリティ銘柄、損害保険のアンダーライティング改善、精製の需給逼迫、テクノロジー供給網の価格設定、Conviction Listへの追加銘柄に結び付いている。
リスク
- AIモデル提供者間で性能対価格の競争が進み、競争が激化する可能性。
- SiC基板の価格下落がSICCの売上高と粗利益率を圧迫する可能性。
- 銀行窓販の混乱と比較ベース上昇により、中国保険の新契約価値成長が鈍化する可能性。
- MUFGの市場関連収益による追い風は第2四半期以降に弱まる可能性。
- 厳しい天候、費用増、PETコスト圧力がEastroc Beverageに影響する可能性。
注目点
- 中国AIモデルの需要、商用化の立ち上がり、性能対価格の競争。
- グローバルな利益成長の広がり、テクノロジーのフリーキャッシュフロー利回り、市場主導権のローテーション。
- カバーするNEV OEMの2Q26における販売量、ASP、マージン、利益の結果。
- WuXi AppTecの小分子、TIDES、Testingにおける受注残と受注モメンタム。
- 中国損害保険における事故頻度の動向とコンバインドレシオ改善。
- BOJ利上げの時期と協調為替介入が円に与える影響。
- 精製クラック、能力停止、Shaheenプロジェクトによる2027年初のフリーキャッシュフロー転換。