レポート解説
JPMorganは、リテール主導の収益は2026年下期に鈍化する一方、機関投資家向け、投資銀行、テクノロジー資金調達関連の収益は加速すると予想している。業界へのポジティブな見方を維持し、CICCとCitic Secを選好する。
要約
機関投資家向け事業とテクノロジー資金調達サイクルが証券会社の差別化を促進;大手証券会社を選好
JPMorganは、リテール主導の収益は2026年下期に鈍化する一方、機関投資家向け、投資銀行、テクノロジー資金調達関連の収益は加速すると予想している。業界へのポジティブな見方を維持し、CICCとCitic Secを選好する。
- 中国証券会社の利益は2026年下期に前年同期比約17%増加すると予想され、JPMorganの2026年予想は市場コンセンサスを12パーセントポイント上回る。
- A株の1日平均売買代金は、2026年の残り期間に約Rmb2.4tnで安定すると予想され、2026年上期のRmb2.74tnを下回る。
- CITIC Securities - Hは目標株価HK$34.40でオーバーウェイトへ格上げされ、East Money - Aは目標株価Rmb22.00でニュートラルへ格下げされた。
- CXMTのIPOは、約Rmb240mnの引受手数料、およびIPOコーナーストーン投資とPre-IPO投資による約Rmb65bnの未実現利益を生み出す可能性がある。CMSは短期的な利益上振れ弾性がより大きい。
レポート解説
概要
本レポートは、中国証券会社では2026年下期にリテール事業と機関投資家向け事業の乖離が顕著になるとみている。A株売買代金、信用取引残高、手数料率の低下はリテール証券仲介収益の重しとなる一方、政策支援、IPOの回復、デリバティブの発展、クロスボーダー資本市場活動は、機関投資家向けおよび投資銀行事業を引き続き牽引する。低いバリュエーションと上方修正される利益予想は、セクターの再評価を支える可能性がある。
主要見解
JPMorganは証券セクターへのポジティブな見方を維持するが、収益構造が多様化し、機関投資家向け事業とテクノロジー資金調達で先行する総合証券会社を選好する。CICCとCitic Secは、テクノロジー資金調達および機関投資家向け事業回復の構造的受益者とみられる。CMSはCXMTへの比較的大きい投資エクスポージャーにより、2026年3Qにより強い利益上振れ弾性を持つ可能性がある。リテール事業の比重が高いEast Moneyは、売買代金、信用取引、手数料率からの下押し圧力に直面している。
分析フレームワーク
中核フレームワークでは、売買代金、信用取引残高、手数料率、A/H株IPOの資金調達および案件パイプライン、事業収益ミックス、ROE格差、バリュエーション、利益予想と市場コンセンサスの差異を用いて、各証券会社のリテール、機関投資家向け、テクノロジー資金調達、海外事業への感応度を比較する。
手法メモ
売買代金、信用取引、手数料率の変化を機関投資家向け資本市場活動と比較する
リテール事業は売買代金と手数料率の影響をより受ける一方、機関投資家向け事業はIPO、デリバティブ、政策、クロスボーダー事業により牽引される。
株価純資産倍率とROE格差を用いてバリュエーション再評価の可能性を評価する
レポートは、A株およびH株の証券会社のバリュエーションは高くないとみている。利益予想の上方修正が継続すれば、大手証券会社のROE優位性がバリュエーションの再評価を支え得る。
引受、IPOコーナーストーン投資、Pre-IPO保有からの収益および投資利益を評価する
CXMT上場は、証券会社の潜在的な引受手数料、コーナーストーン投資、Pre-IPO投資利益を定量化し、2026年3Q利益への影響を評価するために用いられる。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- CICC-H最有力推奨およびオーバーウェイト
- 強み
- A株およびH株IPO市場における主導的な市場シェアとテクノロジー資金調達の実行能力;機関投資家向け事業の回復とテクノロジー資金調達サイクルの恩恵を受ける。
- 弱み
- レポートでは具体的に開示されていない。
- 比較
- Citic Secと並ぶ共同最有力推奨であり、リテール志向の証券会社より優位。
- リスク
- IPO活動の鈍化、予想を下回る資本市場活動、規制変更。
- Citic Sec A&H最有力推奨およびオーバーウェイト;CITIC Securities - Hを格上げ
- 強み
- 多様な事業、強力なA/H株IPOパイプライン、機関投資家向けおよび国際事業における大きな成長余地;証券仲介収益は収益の約20%にすぎず、売買代金低下への感応度が低いことを示す。
- 弱み
- 依然として資本市場環境、投資銀行の執行、バリュエーション変動の影響を受ける。
- 比較
- East Moneyよりリテール・エクスポージャーが低く、CICCと並ぶ構造的受益者。
- リスク
- IPO資金調達が予想を下回ること、機関投資家向け事業回復が予想を下回ること、市場売買代金の継続的な低下。
- China Merchants Securities Company Ltd - A/Hオーバーウェイト
- 強み
- CXMTへの高いPre-IPO投資エクスポージャーがあり、約Rmb26.7bnの潜在的未実現利益と、2026年3Qにおける投資収益の大きな上振れ弾性を持つ。
- 弱み
- 利益弾性は一部、単一案件の評価額およびロックアップ期間関連の会計処理に依存する。
- 比較
- 短期的なCXMT触媒はCICCおよびCitic Secより強い可能性があるが、長期的な構造的優位性は後者2社より相対的に弱い。
- リスク
- CXMT株価の変動、流動性ディスカウント、ロックアップ期間、予想を下回る投資収益の認識。
- East Money - Aニュートラル;格下げ
- 強み
- レポートは証券業界全体の見通しが引き続きポジティブであることを認識している。
- 弱み
- カバレッジ対象証券会社の中で証券仲介収益へのエクスポージャーが最も高く、売買代金、信用取引、手数料率の低下に脆弱;同業他社に対するROE優位性は縮小すると予想される。
- 比較
- 収益ミックスはCitic Secよりリテール事業に集中しており、売買代金低下に対する耐性が弱い。
- リスク
- リテール取引活動、信用取引の伸び、手数料率の継続的悪化によるバリュエーションのデレーティング。
- Galaxy-Hオーバーウェイト
- 強み
- 2026年予想P/Bは約0.6xで、カバレッジ対象H株証券会社の中でも低水準。
- 弱み
- リテール事業へのエクスポージャーが高く、IPOコーナーストーン投資およびPre-IPO投資へのエクスポージャーは限定的;3Q利益は前四半期比で鈍化する可能性がある。
- 比較
- バリュエーションは低いが、CMSおよび大手証券会社よりファンダメンタルズ上の触媒が弱い。
- リスク
- 売買代金と信用取引の継続的低下、および低調なリテール事業。
主要データ
- 2026年下期の業界利益成長予想前年同期比約17%の成長JPMorganの予想。
- コンセンサスに対する2026年利益予想12パーセントポイント高い業界の2026年予想と市場コンセンサスの差を指す。
- A株の1日平均売買代金約Rmb2.4tn2026年の残り期間はこの水準で安定すると予想;2026年上期はRmb2.74tn。
- 信用取引残高の変化2026年3Qの期初来で11%減少6月末のRmb3.0tnから最近では約Rmb2.68tnへ低下。
- 7月のA株IPO資金調達Rmb97.6bn2022年1月以降で最高の月間水準。
- 7月のH株IPO資金調達US$13.4bn近年で高水準。
- CXMT IPOの引受手数料約Rmb227mnからRmb240mn後者はオーバーアロットメント・オプションの全額行使を前提とする。
- CXMT関連の潜在的投資利益約Rmb65bnIPOコーナーストーン投資およびPre-IPO投資からの推定未実現利益を含む。
- 証券セクターのバリュエーションA株1.03x P/B;H株0.67x P/Bレポートによれば、いずれも2024年9月の市場上昇以降で低水準にある。
影響と示唆
投資配分は、リテール事業比重の高い証券会社から、機関投資家向け、投資銀行、テクノロジー資金調達、クロスボーダー事業能力が強い大手証券会社へ移すべきである。売買代金のさらなる低下は証券仲介収益の重しとなるものの、売買代金が約Rmb2.4tnで安定すればリテール側の下振れリスクは限定的となり得る。IPO回復、テクノロジー企業の資金調達、政策支援の継続は、機関投資家向け事業および投資収益の上振れ材料となる可能性がある。
リスク
- A株売買代金が予想される安定水準を下回り、リテール証券仲介収益への圧力がさらに強まる。
- 信用取引、証券貸借、オプション事業に対する規制強化がリテール志向の証券会社に影響する。
- 業界の手数料率圧縮が継続し、取引量の成長が収益に十分転化しない。
- IPO承認、発行、資金調達活動が期待を下回り、投資銀行および投資収益が弱まる。
- テクノロジー資金調達サイクル、政策支援、またはクロスボーダー資本市場活動が予想より弱い。
- CXMTなどの案件における株価、流動性ディスカウント、ロックアップ期間、利益認識を巡る不確実性。
- 市場全体のリスク選好低下と証券会社バリュエーションへの継続的圧力。
注目点
- A株の1日平均売買代金が約Rmb2.4tnで安定するか。
- 信用取引残高、手数料率、リテール取引活動のその後の動向。
- A/H株IPOの資金調達規模、届出件数、証券会社の案件パイプラインの実現。
- デリバティブ、クロスボーダー上場、ETF、機関投資家向け事業に関する規制政策の実施。
- CXMT投資利益がCMSおよび関連証券会社の2026年3Q利益に実際にどの程度寄与するか。
- CITIC Securities - Hの利益予想上方修正、ROE改善、目標株価達成の進捗。
- East Moneyのリテール事業、ROE格差、バリュエーション・プレミアムの変化。