Emerging Markets Equity Strategy and 2Q26 earnings レポート解説
J.P. Morganは、2Q26の新興国利益は韓国と台湾のテクノロジー株が主導し、非常に強かったとみる。景気循環セクターや一部地域にも支えが広がっており、同社は高い債券利回り、流動性引き締め、地政学リスクを警戒しつつ、新興国株式に中期的に建設的な見方を維持している。
要約
J.P. Morganは、2Q26の新興国利益は韓国と台湾のテクノロジー株が主導し、非常に強かったとみる。景気循環セクターや一部地域にも支えが広がっており、同社は高い債券利回り、流動性引き締め、地政学リスクを警戒しつつ、新興国株式に中期的に建設的な見方を維持している。
- 新興国の純利益は2Q26に前年比80%増となり、売上高22%増、EBITDA44%増に支えられた。
- テクノロジーの利益は前年比347%増で、韓国は499%、台湾は117%増加した。
- MSCI EMの2026/27年コンセンサスEPS成長率は74%/24%に上昇し、6月末の60%/23%を上回った。
- J.P. Morganは新興国株式のOverweightを維持し、12か月のMXEF目標を2000に据え置いた。
- 報告書は、韓国・台湾のテクノロジー以外にも、資本財・産業、ヘルスケア、生活必需品、エネルギー、素材で、一部市場の利益成長が広がっているとみている。
レポート解説
概要
本レポートは、J.P. Morganによる新興国株式の2Q26決算レビューである。テクノロジーとAIインフラが引き続き利益の中核エンジンであり、景気循環セクターと一部地域の改善が利益基盤を広げていると結論づけ、中期的に新興国株式に建設的な見方を維持している。
主要見解
J.P. Morganは2Q26を新興国にとって非常に強い決算シーズンと位置づける。報告対象の新興国純利益は前年比80%増、売上高は22%増、EBITDAは44%増だった。主な寄与はテクノロジーで、利益は前年比347%増加した。韓国と台湾は特に強く、純利益はそれぞれ499%と117%増加した。地域別にはEMアジアが86%で首位となり、ラテンアメリカは44%、CEEMEAは34%増で、いずれも予想を上回った。MSCI EMの利益修正ブレッドスは、2025年12月以降のマイナスから8月にプラスへ転じ、EPS上方修正が下方修正を上回り始めたことを示す。 同社は、新興国のテクノロジー・AI複合体が引き続き中核的な利益テーマであるとの見方を維持する。根拠は、アジアのテクノロジー・ハードウェアにおける持続的な需給不均衡とAI設備投資の継続である。NvidiaはFY2028の売上高成長率を70%と示し、従来の中40%台の予想を上回った。報告書はこれが2027年のデータセンター受注見通しの強化と、メモリー価値成長の追加余地を支えるとみる。これは、米国の主要ハイパースケーラー4社の2027年総設備投資が前年比43%増との予測と対比される。Samsung ElectronicsとSK hynixは、供給逼迫の長期化、高値圏の価格、長期契約について前向きな見解を示しており、J.P. Morganのメモリー業界に関する高水準利益の持続という見方を支える。同社はメモリー業界のFY26E–28E EPS CAGRを約26%と見積もっている。 台湾のファウンドリーおよび半導体サプライチェーンは、この見方をさらに裏づける。TSMCの2Q利益は予想を上回り、営業利益率は初めて60%を超えた。2026年の売上高成長率ガイダンスは前年比40%超に引き上げられ、2026年の設備投資もUS$60-64bnへ上方修正された。報告書によれば、経営陣のAI需要に対する可視性は2029-30年まで伸びている。J.P. Morganは、先端ファウンドリー、先端パッケージング、基板、さらにPCBで供給が逼迫しているとみる。Nvidiaの強い予測が、今後数四半期に上流サプライヤーとODMの需要予想を引き上げると予想する。TSMCは少なくとも2028年まで100%超の稼働率を維持する見通しである一方、成熟ノードのファウンドリーはAI隣接需要と価格の堅調さから恩恵を受けるものの、設備投資による減価償却と軟調な消費者需要がUMCとSMICの長期的な利益率回復を抑える可能性がある。 中国の利益見通しは引き続き二極化している。AIエコシステム、バイオテクノロジー、革新的ヘルスケアは堅調だが、国内需要にさらされる生活必需品やマス市場向け不動産は弱い。AIインフラでは、J.P. MorganはNAURAの利益率改善、AMECの2026-28E売上高・利益CAGRが45%/76%との予想、供給逼迫・現地化・値上げ・先端パッケージング投資に支えられた国内OSATの強いモメンタムを強調する。Tencentの2Q26非IFRS営業利益は前年比19%増だったが、AIコストが利益増を吸収し、予想通りフリーキャッシュフローはマイナスとなった。AlibabaのAI Cloud and Compute売上高は前年比45%増へ加速し、利益率は約12%、AI製品売上高はRMB12.4bn、年率換算で約RMB50bnだった。報告書はこれをクラウド再評価の最初の検証材料とみる。Baiduは設備投資急増によりフリーキャッシュフローが-RMB8.0bnとなり、利益率も圧迫されたが、GPU CloudとApollo Goの加速には前向きな点がある。 利益の広がりを示す証拠もみられる。韓国ではIT以外に資本財・産業、ヘルスケア、生活必需品が強く、40%が予想を上回り、30%が予想を下回った。インドではドル建て純利益が前年比5%増、ルピー建てでは16%増となり、内需の底堅さ、約271GWの記録的なピーク電力需要、設備投資・送電網投資、防衛、自動車、数量主導の生活必需品回復に支えられた。企業経営陣は、通年ガイダンスを積極的に引き上げるよりも、収益性を伴う拡大、慎重な価格設定、利益率規律を重視した。インドの消費セクターでは、J.P. MorganはFY27の売上高成長が食品・飲料主導で約13%へ加速するとみる。 商品・エネルギーの強さは、ラテンアメリカおよびCEEMEAの改善の大部分を牽引した。ブラジルの利益は前年比50%増、エネルギーは123%増となり、Petrobras、Prio、燃料販売会社が支えた。Saudi Aramcoの純利益は前年比42%増で、東西パイプラインとYanbuハブを含む運営上の柔軟性が寄与した。報告書は、ホルムズ海峡危機に関連する混乱、低い燃料在庫、原油・精製品供給の制約がエネルギー部門を支えたとする。ただし、危機が解決すれば、石油・化学品の需給バランスは2H26-2027にかけて緩和する可能性がある。それでも、逼迫した在庫、制約された世界の精製能力、より有利な産業構造を背景に、精製・下流部門のファンダメンタルズは相対的に強靭とみている。 コンセンサス予想は、主に韓国と台湾を背景に上方修正が続いている。新興国の2026/27年コンセンサスEPS成長率は74%/24%で、6月末の60%/23%から上昇した。韓国は300%/36%から334%/36%へ、台湾は43%/27%から64%/31%へ上昇した。テクノロジーは新興国の2026年EPS成長への寄与の75.3%、2027年の73.4%を占める見込みである。J.P. Morganは、ITを除いても新興国の利益成長は先進国を上回ると指摘し、新興国の2026/27年EPS成長率は72%/23%、先進国は28%/14%としている。 一方で、同社は重要な短期的制約も指摘する。世代的な高水準にある債券利回りは、借入コストを上昇させ、AI設備投資を弱め、デュレーションの長いテクノロジー部門を圧迫する可能性がある。その他の逆風には、金融政策・流動性の引き締め、米国中間選挙を控えたリスク回避、10月の3Q決算まで利益触媒が限られること、不利な季節性がある。J.P. Morganのグローバル・ストラテジストは、インフレ期待がアンカーされている限り、金利上昇と緩やかな中央銀行の利上げが建設的な株式環境を損なう可能性は低いとみる。2022年と異なり、多くの地域で賃金上昇は鈍化しており、現在のインフレ圧力の大部分は短期的な原油価格変動に関係している。 こうした背景の下、J.P. Morganはグローバル配分で新興国株式をOverweightとし、12か月のベースケースMXEF目標を2000に維持している。韓国、中国、台湾、南アフリカ、ギリシャ、ポーランド、チリ、ペルー、マレーシアをOverweight、コロンビアとフィリピンをUnderweightとしている。セクターではIT、金融、エネルギー、素材をOverweight、生活必需品とヘルスケアをUnderweightとする。ブラジルは、選挙を前にしたボラティリティ、浅い金融緩和、成長減速、信用悪化を理由に、8月初めにOverweightからNeutralへ引き下げられた。ペルーは、政治安定の改善、堅調な投資見通し、銅価格の支援を理由にOverweightへ引き上げられた。
分析フレームワーク
J.P. Morganは、MSCI EM構成銘柄の2Q26報告済み決算を対象に、国別・セクター別の売上高、EBITDA、純利益、利益率、予想達成・未達、EPS修正ブレッドスを比較している。その後、AI投資、供給制約、内需、商品市況、金融セクターの動向などの要因と地域業績を結び付け、コンセンサスEPS予想と修正を用いて市場およびセクターのポジショニングを示している。
手法メモ
AIテクノロジーの需給分析
報告書は、ファウンドリー、パッケージング、メモリー、PCBの供給能力制約とAI関連需要・設備投資を評価し、利益持続性と価格決定力を説明している。
利益修正ブレッドス
報告書は、市場・セクター別のEPS上方修正と下方修正のバランスを追跡し、利益モメンタムの広がりと方向を示す指標としている。
売上高、利益率、利益の分解
報告書は、売上高成長、EBITDA成長、純利益成長、利益率変化を分け、利益が数量、価格、営業レバレッジ、コストのどれにより動いたかを特定している。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- TSMCAIファウンドリー需要への高確信度のテクノロジー・エクスポージャー
- 強み
- 2026年の売上高成長ガイダンスを前年比40%超へ引き上げ、設備投資をUS$60-64bnへ増額し、営業利益率60%超を報告した。
- 比較
- 先端ノードの稼働率と利益率は、成熟ノードのファウンドリーを引き続き上回る。
- リスク
- 高い債券利回りはAI設備投資を制約し、デュレーションの長いテクノロジー株のバリュエーションを圧迫する可能性がある。
- Samsung Electronics (005930.KS)AI需要サイクルの恩恵を受けるカバレッジ対象メモリー銘柄
- 強み
- 2Q26営業利益W89.4trnは、メモリー価格とウォン安に支えられ、引き下げ後のコンセンサスを上回った。
- 弱み
- 1H26にW15trn超の人件費引当金を計上した。
- 比較
- J.P. MorganはSamsungとSK hynixを、持続的なメモリー逼迫の受益企業として位置づけている。
- リスク
- メモリーサイクルの持続性は、AI需要、供給規律、設備投資環境に左右される。
- SK hynix (000660.KS)AIおよびクラウドサービスプロバイダー需要の恩恵を受けるカバレッジ対象メモリー銘柄
- 強み
- 主要顧客10社との長期契約には、最低価格、take-or-pay、前払いなどの仕組みが含まれる。
- 比較
- J.P. Morganはメモリー業界が高水準の利益持続性を維持すると予想する。
- リスク
- AI設備投資の悪化や資金調達コストの上昇は、需要とバリュエーション支援を弱める可能性がある。
- Alibaba Group Holding Limited (BABA)中国AIクラウドへのカバレッジ対象エクスポージャー
- 強み
- AI Cloud and Compute売上高は前年比45%増、利益率は約12%、AI製品売上高はRMB12.4bnだった。
- 比較
- 報告書はこの結果をクラウド再評価の検証材料とみる。
- Bank of China (2388.HK)J.P. Morganの中国国有銀行における最上位選好
- 強み
- 記載された国有銀行の中で海外利益比率が最も高く、PBTの27%であり、海外NIMと資産品質の改善が見込まれる。
- 弱み
- リテールローンは減少し、リテール不良債権は増加している。
- 比較
- 国有銀行の収益・利益は前年比9%/6%増であったのに対し、株式制銀行は1%/-9%だった。
- リスク
- リテール信用ストレスと継続的なNIM圧力。
主要データ
- 新興国の2Q26純利益成長+80% YoY売上高22%増とEBITDA44%増に支えられた。
- 新興国テクノロジーの利益成長+347% YoY新興国利益の予想超過に対する主な寄与要因。
- 韓国・台湾の純利益成長+499% YoY / +117% YoYテクノロジー主導の強さが地域業績を牽引した。
- 新興国の2026/27年コンセンサスEPS成長74% / 24%6月末の60% / 23%から上昇。
- TSMCの2026年設備投資ガイダンスUS$60-64bn前年比40%超の売上高成長ガイダンス引き上げと同時に上方修正された。
- 新興国対先進国の2026/27年EPS成長72% / 23% versus 28% / 14%J.P. Morganが示した新興国と先進国の利益成長比較。
- MXEF目標2000J.P. Morganの12か月ベースケース目標。
影響と示唆
J.P. Morganは、継続するAI投資と逼迫したテクノロジー供給網が新興国の利益を引き続き支え、景気循環セクターと一部地域の寄与拡大が利益回復の広がりを改善するとみる。選好はIT、金融、エネルギー、素材である一方、利回り、流動性、地政学、季節性に起因する短期的な市場変動を予想している。
リスク
- 世代的な高水準にある債券利回りは、テクノロジーのバリュエーションを圧迫し、借入コストを高め、設備投資を妨げる可能性がある。
- 金融政策・流動性の引き締め、米国中間選挙前のリスク回避、3Q決算までの限定的な触媒、不利な季節性が、今後数週間に新興国株式の重石となる可能性がある。
- ホルムズ海峡危機が解決し、石油・化学品の需給バランスが2H26-2027に緩和すれば、エネルギー部門の強さは弱まる可能性がある。
- 中国では、国内需要に敏感な消費関連およびマス市場向け不動産セクターが依然として弱い。
- ブラジルは選挙関連のボラティリティ、浅い金融緩和、成長減速、信用悪化に直面している。
注目点
- AI設備投資、ハイパースケーラーの受注、ファウンドリー、メモリー、先端パッケージング、PCBにおけるテクノロジー供給制約の持続性。
- 世界の債券利回りがさらに上昇するか、インフレ期待がアンカーされた状態を保つか。
- 10月の3Q決算と、新興国の利益修正ブレッドスがプラスを維持できるか。
- ホルムズ海峡危機の解決または激化、それに伴う石油、精製、石化の需給バランス。
- 利益の強さが韓国・台湾のテクノロジーを超えて拡大し続けるか。