US economy レポート解説
Morgan Stanleyは、2Q26の非金融企業利益の急増は、広範な名目成長ではなく、販売価格の上昇とコスト抑制によるものだと主張する。この週次レポートは3Q GDPトラッキングも1.8%へ引き下げ、インフレ、石油、労働供給のリスクを強調している。
要約
Morgan Stanleyは、2Q26の非金融企業利益の急増は、広範な名目成長ではなく、販売価格の上昇とコスト抑制によるものだと主張する。この週次レポートは3Q GDPトラッキングも1.8%へ引き下げ、インフレ、石油、労働供給のリスクを強調している。
- 非金融企業利益は2Q26に$400.9bn増加し、マージンは粗付加価値の15.2%に達した。
- Morgan Stanleyは、この増加を、ほぼ横ばいの単位労働・非労働コストを上回る販売価格の上昇に帰している。
- 同社は、家計の購買力が圧迫され、インフレが鈍化し、労働コストが上昇するにつれて、利益成長は減速すると予想している。
- 輸入の急増と新築住宅販売の弱さを受け、3Q26 GDPトラッキングは0.4パーセントポイント引き下げられ1.8%となった。
- 米国の実効関税率は4月から6月に平均6.8%で、年末には10%近辺に達すると予想されている。
レポート解説
概要
このUS Economics Weeklyは、2Q26に企業利益が急増した理由を検討し、関連するインフレ、石油、金融コンディション、関税、成長、労働市場の動向を評価する。Morgan Stanleyは、非常に強い価格決定力をマージンの中心的な原動力とみるが、この動きは持続しにくいと考えている。
主要見解
Morgan Stanleyは、2Q26の非金融企業利益の前期比年率換算$400.9bn増は、名目GDPの加速を単純に反映したものではなく、主としてマージン拡大によるものだと主張する。利益マージンは粗付加価値の15.2%に達し、戦後の高水準近辺にある。名目GDP成長は加速したものの、AI投資ブームにもかかわらず実質GDP成長は比較的低調だった。4四半期変化では名目GDPが6.6%、実質GDPが2.1%、2Q26では名目成長が8.0%、実質成長が1.5%だった。同社は、この乖離はエネルギー価格によって増幅されたが、利益改善の規模を説明するものではないとしている。 代わりに、企業が単位当たり販売価格を大幅に引き上げる一方、2Qの単位当たり労働・非労働コストはほとんど変化せず相殺されたことが収益性改善を主導したとみている。2025年4月の「Liberation Day」以降、非労働コストは関税を反映して大きく上昇した可能性があるが、企業は労働コストを抑え、価格を関税関連コストの増加以上に引き上げた。このため、単位当たり価格の上昇分全体が単位当たり利益に流入したという。同レポートはこれをCOVID期と比較しており、当時も価格決定力がマージンを支えた一方、インフレが家計の購買力を圧迫し、家計は消費維持のため貯蓄率を引き下げた。 同社は、2Qの利益動向は持続しないと考えている。高価格は実質購買力を侵食し、家計を過度に圧迫し得る。インフレが予想通り鈍化しなければ、7月の小売売上減速は今後数カ月の消費減速の前兆かもしれない。インフレの粘着化は、Federal Reserveが需要抑制に動くことも意味し得る。Morgan Stanleyのディスインフレ見通しが実現すれば、景気拡大の裾野拡大により雇用は緩やかに改善し、単位労働コストが上昇するため、利益成長は悪化ではなく減速するとみている。 石油トラッカーは、よりインフレに敏感な環境を示している。8月21日時点で、米国の原油・石油製品の総在庫は前週からおおむね変わらなかったが、Strategic Petroleum Reserveの原油在庫は約290 million barrelsへ低下し、1984年4月以来の低水準となった。最近の4週間当たり30 million barrelsの減少ペースが続けば、SPR在庫は2027年2月末までに約70 million barrelsの運用上の最低水準に近づく可能性がある。米国とイランの再エスカレーション後、8月25日時点の現物価格は、CushingのWTIが$83.90/bbl、欧州のBrentが$88.24/bblだった。国内原油生産はおおむね横ばいまたは緩やかに増加し、原油輸出の減少が石油・石油製品の純輸入を押し上げた。 Morgan StanleyのFRB/USベースの金融コンディション指標は、8月27日終値時点で7月FOMC会合以降32bp緩和しており、主に株価上昇と米ドル安が要因だった。ただし、金融コンディションは直近の中東情勢再エスカレーション前より依然としてタイトである。2月28日以降の累積的なタイトニングは、連邦基金金利がおよそ22bp上昇した場合に相当する。10年米国債利回りの上昇とドル安の反転がネットの引き締めを主導し、石油価格の寄与も再エスカレーション後に再び現れた。 貿易政策について、レポートはUSTRによる強制労働Section 301措置の最終決定はおおむね予想通りだったとしている。7月24日から、60の経済圏からの輸入に追加関税を課し、強制労働輸入禁止を導入済み、部分導入済み、または導入を約束した経済圏には10%、その他の大半には12.5%の関税を設定した。除外には、すでにSection 232関税の対象である商品、USMCA適合輸入、および特定の一般・国別の製品除外が含まれる。Morgan Stanleyは、実効関税率が6月に約6.8%、4月から6月の平均でも6.8%だったと推計し、年末までにおよそ10%へ収れんすると引き続き予想している。カナダからの輸入約$20bnに対するSection 338関税は、この年末見通しを大きく変えないとみている。 Morgan Stanleyは、実質輸入の急増が在庫積み増しの加速で一部しか相殺されず、新築住宅販売も基礎推計を下回ったため、3Q26のGDPトラッキングを0.4パーセントポイント引き下げて1.8%とした。最終販売は1.6%である。同社は、このデータ駆動型トラッカーは公式の2.7%GDP予測とは異なると説明する。Atlanta Fedのトラッカーがより強いのは、同機関の最終更新が8月27日の貿易赤字拡大発表に先行しており、消費者支出の成長も大幅に強いと見込んでいるためだとしている。 直近のデータについて、Morgan Stanleyは8月のISM製造業PMIを54.8と予想しており、7月の55.6を下回るものの拡大局面を示す水準としている。7月の建設支出は横ばい、8月の自動車販売は16.4 millionと予想する。8月の非農業部門雇用者数は65,000増、そのうち民間雇用者数は40,000増、失業率は4.1%で横ばいと予想している。ベースラインでは、一時的な労働参加率の弱さが反転するにつれ、失業率は年末に4.3%へ上昇すると見込む。ただし、移民政策の変更が想定以上に労働力の伸びを抑制する可能性がある。レポートは、ハイチ移民のTemporary Protected Status撤回による15,000の雇用押し下げ、ICEの逮捕増加、移民ビザ申請の一時停止を指摘している。これらは失業率をより低く保ち、労働市場をベースライン予想よりタイトにする可能性がある。
分析フレームワーク
Morgan Stanleyは、企業利益の伸びを名目活動、単位当たり価格、労働コスト、非労働コストに分解し、その後、マージンを家計の購買力と金融政策リスクに結び付けている。これに石油在庫・価格の追跡指標、FRB/USベースの金融コンディション指数、関税収入・還付金のモニタリング、月次の新規データから作る機械的なGDPナウキャストを組み合わせている。
手法メモ
単位当たり価格、労働コスト、非労働コスト、利益の分解
レポートは販売価格の変化と投入コストの変化を分け、比例的な名目成長ではなく価格上昇がマージン拡大をもたらした理由を示している。
FRB/USベースの金融コンディション指標
この指数は、10年米国債利回り、S&P 500リターン、BBBクレジットスプレッド、米ドル、石油価格を、推定された成長への影響に基づいて組み合わせ、連邦基金金利に換算した変化として示す。
主要データ
- 非金融企業利益の増加$400.9bn2Q26の前期比年率換算増加額
- 非金融企業の利益マージン15.2%粗付加価値に占める利益の割合。戦後の高水準近辺
- 名目GDPと実質GDPの成長率6.6% versus 2.1%4四半期変化
- 3Q26 GDPトラッキング1.8%0.4パーセントポイント下方修正
- 米国の実効関税率6.8%4月から6月の平均。年末には10%近辺を予想
- WTIとBrentの現物価格$83.90/bbl and $88.24/bbl8月25日時点
- SPR原油在庫around 290 million barrels1984年4月以来の最低水準
影響と示唆
レポートの中心的な含意は、高水準の企業収益性は自律的で広範な名目成長環境ではなく、価格決定力とコスト抑制に依存しているという点にある。インフレの持続、エネルギー価格上昇、労働供給の制約、貿易政策の変更は、消費、インフレ、政策見通しに影響し得る一方、Morgan Stanleyのベースラインは利益成長の鈍化を見込んでおり、絶対的な減益は予想していない。
リスク
- インフレが鈍化しなければ、家計の購買力をさらに弱め、消費を減速させ、Federal Reserveによる需要抑制につながる可能性がある。
- 中東情勢の再激化と石油価格上昇は、インフレ圧力を強め、金融コンディションをタイト化させる可能性がある。
- 移民政策の変更により労働力の伸びが想定以上に鈍化し、労働市場がベースライン予測よりタイトになる可能性がある。
注目点
- 企業がコストを上回るペースで値上げを続けられるか、また単位労働コストが上昇し始めるか。
- 消費者の負担を示す指標としての小売支出と家計の貯蓄行動。
- SPR在庫の減少、石油価格、中東情勢が金融コンディションに及ぼす影響。
- 実効関税率、関税還付、Section 301措置の実施状況。
- 3Q GDPトラッカーに影響する貿易、住宅、製造業、雇用の新規データ。