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レポート解説Hilo Research

エネルギーおよび石油精製製品:海運のボトルネックと損なわれた精製供給がディーゼルおよび石油製品価格を押し上げ、在庫減少により価格急騰リスクが残存

HSBCは、中東紛争によってホルムズ海峡が事実上閉鎖され、ロシアの精製能力の損傷も重なったことで、石油製品の供給は原油供給よりも逼迫していると指摘する。ディーゼルのクラックスプレッドは過去最高を記録し、ジェット燃料とバンカー燃料も上昇している。さらなる在庫取り崩しは、より大幅な価格急騰をもたらす可能性がある。

機関HSBC Bank Australia Limited
日付20260821
企業世界のディーゼルおよび石油製品市場
業界エネルギーおよび石油精製製品

要約

HSBCは、中東紛争によってホルムズ海峡が事実上閉鎖され、ロシアの精製能力の損傷も重なったことで、石油製品の供給は原油供給よりも逼迫していると指摘する。ディーゼルのクラックスプレッドは過去最高を記録し、ジェット燃料とバンカー燃料も上昇している。さらなる在庫取り崩しは、より大幅な価格急騰をもたらす可能性がある。

株式レーティングまたは目標株価はない。本レポートは石油製品価格の方向性について明確に前向きな見方を示している。
ディーゼル石油製品ブレント原油ホルムズ海峡精製供給クラックスプレッド在庫インフレ
  • ブレント原油価格は過去7週間で34%上昇し、約USD94/bblとなった。
  • 米国のディーゼル・クラックスプレッドは今週USD100/bblを超え、過去最高に達した。
  • ロシア、中東、アジアからのディーゼル輸出は7月に前年比1.3mb/d減少し、世界の海上取引の約20%に相当した。
  • 米国の中間留分在庫は5年平均を12%下回り、欧州のジェット燃料在庫は約1カ月分の供給量に過ぎない。
  • 高水準の在庫は従来価格上昇を抑制していたが、さらなる在庫減少は非線形的な価格急騰を引き起こす可能性がある。

レポート解説

概要

本レポートは、中東紛争、ホルムズ海峡の通航制限、ロシア・ウクライナ戦争が世界のディーゼルおよびその他の石油製品市場に与える影響を論じている。HSBCの中核的見解は、企業コストとインフレ見通しにおいては原油単独よりも石油製品に注目すべきというものである。精製供給の制約、在庫減少、代替海運ルートへの圧力を背景に、ディーゼルなどの製品市場は原油市場よりも著しく逼迫している。

主要見解

中東紛争は引き続き世界のコモディティ市場の主な原動力である。ホルムズ海峡は事実上閉鎖されており、紛争の早期解決や戦前の通航状況への回帰は見込みにくい。紅海におけるフーシ派によるサウジ船舶への攻撃は、ホルムズ海峡での制限による圧力緩和に寄与してきたルートであるバブ・エル・マンデブ海峡の通航も妨げる可能性がある。ホルムズ海峡の1日平均船舶通航量は6月下旬に一時36隻まで回復したが、足元ではわずか12隻に再び減少しており、戦前の通常水準である約138隻を大幅に下回る。バブ・エル・マンデブ海峡の8月前半の1日平均通航量も、6月の36隻から27隻へ減少した。 その結果、世界のコモディティ価格は6月下旬の安値から13%上昇し、ブレント原油は7月上旬の約USD70/bblという安値から約USD94/bblへ34%上昇した。ただし、4月下旬のUSD120/bbl超のピークはなお下回っている。本レポートは、最終消費者と企業が実際に使用するのはディーゼルやジェット燃料などの石油製品であるため、企業コストとインフレを評価する際には原油価格よりも石油製品価格が重要であると強調する。 石油製品は、原油原料の利用可能性低下、中東の製油所供給減少、世界の精製システム全体における余剰能力不足、低い製品在庫により供給が同時に制約されているため、より急上昇している。原油をディーゼルに精製する収益性を示す米国のディーゼル・クラックスプレッドは今週USD100/bblを超えて過去最高を記録し、2022年末のロシア・ウクライナ戦争における最初の冬季燃料不足時の水準を上回った。米国および欧州の製油所がほぼフル稼働し、米国の製油所稼働率が8月半ばに97.2%に達したにもかかわらず、供給不足は埋められていない。 ディーゼル市場の逼迫は、ロシア関連の混乱によっても悪化している。ロシア、中東、アジアからのディーゼル輸出は7月に前年比1.3mb/d減少し、世界の海上ディーゼル取引の約20%を占めた。ロシアは通常、世界第2位のディーゼル輸出国で、世界供給の約11%を占めるが、エネルギーインフラに対するウクライナの攻撃激化後、推定40%のロシアの精製能力が停止している。ロシアは主要石油製品の輸出禁止を2027年1月31日まで延長した。9月1日からは生産者がディーゼル、バンカー燃料、軽油の輸出制限を免除されているものの、ロシアはディーゼル輸入を開始しており、すでに逼迫した市場に追加的な需要源を生み出している。一方、収穫期における農家の強いトラック輸送需要、ならびに第4四半期の休日前の在庫積み増しに、ディーゼルの低い価格弾力性が加わり、需要は底堅く推移している。米国の中間留分在庫は現在、5年平均を12%下回っている。 他の石油製品も同様の軌道をたどっている。シンガポールの指標ジェット燃料価格は、6月下旬のUSD111/bblの安値から約USD155/bblへ41%上昇した。夏季旅行ピークの終了は価格に一定の下押し圧力をかける可能性があるものの、ブレントに対するジェット燃料のプレミアムは拡大を続けている。欧州のジェット燃料在庫は約1カ月分の供給量に減少した。7月上旬以降、ナフサ価格は19%上昇し、バンカー燃料価格は約30%上昇している。 本レポートは、高水準の在庫、特に中国在庫の取り崩し継続が、原油および石油製品価格のさらなる大幅上昇を防ぐ主な緩衝材だったとみている。しかし、在庫がいつまで減少を続けられるのか、またいつ臨界水準に達するのかには大きな不確実性がある。供給混乱が続き、在庫バッファーが枯渇すれば、市場は非線形的、あるいは「転換点」的な価格急騰を経験する可能性がある。

分析フレームワーク

本レポートはまず、中東紛争地域と2つの主要海運航路における船舶通航量の変化を用いて物流上の制約を示し、その後、原油と石油製品の価格パフォーマンスを比較する。続いて、製油所稼働率、ディーゼル輸出減少、損傷したロシアの精製能力、底堅い需要、在庫水準を通じてディーゼル・クラックスプレッドの拡大を説明し、ジェット燃料、ナフサ、バンカー燃料の価格および在庫データを用いて、逼迫が他の石油製品にも広がっていることを示している。

手法メモ

  • 産業・セクター分析フレームワーク需給フレームワーク

    石油製品の需給および在庫バランス分析

    本レポートは、海運の混乱、製油所の停止、輸出減少を供給縮小として扱い、農業および輸送需要を底堅い需要として、低在庫を市場のバッファーが弱まっている証拠として捉えている。

  • (語彙外の手法)その他

    ディーゼル・クラックスプレッド

    クラックスプレッドは、原油をディーゼルに精製する収益性、または原油に対する製品市場の逼迫度を測る。本レポートは、これがUSD100/bblを超えたことを用いて、ディーゼル市場の逼迫が原油市場の逼迫を上回っていることを示している。

主要データ

  • ブレント原油価格約USD94/bbl過去7週間で34%上昇。また7月上旬の約USD70/bblの安値からも34%上昇しているが、4月下旬のUSD120/bbl超のピークはなお下回っている。
  • 世界のコモディティ価格6月下旬の安値から13%上昇最近の海運および供給混乱による広範な上昇を反映している。
  • ホルムズ海峡の1日平均船舶通航量足元で約12隻/日6月下旬に一時36隻/日まで上昇したが、戦前の通常水準である約138隻/日を大幅に下回る。
  • バブ・エル・マンデブ海峡の1日平均船舶通航量8月前半に約27隻/日6月の36隻/日を下回る。
  • 米国のディーゼル・クラックスプレッドUSD100/bbl超今週過去最高に達し、2022年末の燃料不足期の水準を上回った。
  • 米国の製油所稼働率97.2%2026年8月半ばにほぼフル稼働。
  • ディーゼル輸出の減少前年比1.3mb/d減少2026年7月におけるロシア、中東、アジアの合計減少であり、世界の海上取引の約20%に相当する。
  • 停止中のロシア精製能力の比率約40%ロシア・ウクライナ戦争中のエネルギーインフラ損傷に関連する。
  • 米国の中間留分在庫5年平均を12%下回る中間留分にはディーゼルおよび暖房油が含まれる。
  • シンガポールのジェット燃料価格約USD155/bbl6月下旬のUSD111/bblの安値から41%上昇。
  • 欧州のジェット燃料在庫約1カ月分の供給量ジェット燃料の在庫バッファーが低いことを示す。
  • ナフサおよびバンカー燃料価格ナフサは19%上昇、バンカー燃料は約30%上昇いずれも7月上旬以降の上昇。

影響と示唆

HSBCは、石油製品価格の上昇が、原油価格自体よりも企業の営業コストおよびインフレ波及に大きな影響を及ぼす可能性があると考えている。製油所の高稼働率は輸出減少や損傷した精製能力を相殺できておらず、低在庫は持続的な混乱に対する市場のバッファーを弱めている。海運制限と供給中断が継続すれば、価格にはさらなる急騰リスクがある。

リスク

  • ホルムズ海峡での制限が続く、または紅海のバブ・エル・マンデブ海峡における混乱が激化すれば、原油および石油製品の物流はさらに制約される可能性がある。
  • ロシアの精製能力への損害、輸出制限、ディーゼル輸入への転換により、世界のディーゼル供給はさらに逼迫する可能性がある。
  • 高水準の在庫の継続的な取り崩しが在庫を臨界水準まで低下させた場合、石油製品価格は非線形的、または転換点的な上昇を経験する可能性がある。

注目点

  • ホルムズ海峡およびバブ・エル・マンデブ海峡の1日平均船舶通航量が回復するかどうか。
  • 中東紛争の停戦に向けた進展、および海運航路が戦前の通常状況に近い水準へ戻れるかどうか。
  • ロシアの精製能力の復旧、石油製品の輸出政策、および同国のディーゼル輸入需要の変化。
  • 中国およびその他の地域における在庫放出の持続期間、ならびに米国の中間留分在庫と欧州のジェット燃料在庫がさらに減少するかどうか。

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