China macroeconomic activity and policy conditions レポート解説
JPMorganの8月トラッカー更新では、財政発行は小幅な改善にとどまる一方、輸出モメンタム、自動車販売、住宅は弱い。成長鈍化と穏やかなインフレにより、4Qの10bp利下げというベースラインより早い利下げの可能性が高まっている。
要約
JPMorganの8月トラッカー更新では、財政発行は小幅な改善にとどまる一方、輸出モメンタム、自動車販売、住宅は弱い。成長鈍化と穏やかなインフレにより、4Qの10bp利下げというベースラインより早い利下げの可能性が高まっている。
- 政府債発行は7月のRMB1,154bnから8月にRMB1,203bnへ増加したが、年初来の進捗は前年を下回った。
- 港湾データは、台風による操業混乱を受けて輸出量の伸びが鈍化したことを示す。非タンカーの出港トン数の前年比伸び率は21.3%から8.6%へ低下した。
- 主要30都市の新築住宅販売は8月に前年比6.9%減となり、中古住宅販売の伸び率は4.2%へ鈍化した。
- 大規模な不動産改革は、完成住宅販売とプロジェクト単位のデベロッパー融資へ制度を段階的に移行させる。
- JPMorganは通年CPI予想を前年比0.8%へ引き下げ、早期緩和の可能性が高まったとみている。
レポート解説
概要
本中国マクロ・トラッカーは、7月の広範な弱さの後、財政支援が3Qの成長を支えられるかを高頻度指標で検証している。JPMorganは、財政のキャッチアップはなお限定的で、貿易、不動産、消費の指標が弱いと判断しており、成長・インフレ環境の変化が早期の政策緩和確率を高めているとする。
主要見解
JPMorganは、7月の広範な弱さの後、財政のキャッチアップが内需を十分に押し上げ、3Qの成長をおおむね軌道に乗せられるかという点を中心に分析している。証拠は依然として限定的である。政府債の総発行額は、7月のRMB1,154bnから8月のRMB1,203bnへ小幅に増加したにすぎない。増加は地方政府特別債による一方、中央政府債の発行はRMB643bnからRMB451bnへ減速した。1月から8月の政府債発行は通年目標の63%で、前年同期の74%を下回った。地方政府特別債の発行はRMB519bnで、7月のRMB341bnを上回ったが、年初来の進捗は通年目標の66.5%で、前年の71.0%より遅い。このためJPMorganは、財政資金のより速い執行を下半期回復の重要な変動要因と位置付けている。 貿易トラッカーは、8月のモメンタム低下を示しており、月初と月末の台風による港湾操業の混乱が一因となった。非タンカーの出港船舶の載貨重量トン数は前年比8.6%増で、7月の21.3%増から低下し、輸出量の伸び鈍化を示唆する。コンテナ船の出港は前年比8.7%減、入港は10.7%減で、石油タンカーの入港は14.6%減となり、税関データで7月に前年比24.3%減だった石油輸入の縮小が再び拡大する可能性を示す。ただし、米国向け海運は前年比11.8%増、季節調整前の前月比15.0%増で、7月は減少していた。運賃は航路ごとにまちまちで、米国東海岸およびペルシャ湾・紅海向けは上昇した。中国の7月の米国産大豆輸入は7月として最高水準となり、レポートは習近平国家主席の予定された米国訪問を前に、今後数カ月の大豆購入を注視している。 生産・消費指標は一様ではない。製油所の稼働率は、クラックスプレッド上昇による精製マージン改善を背景に、原油処理量の前年比減少が7月の15.8%から縮小した可能性を示す。タイヤ工場の稼働率は、自動車生産の伸びが7月の0.1%減の後、8月におおむね横ばいだったことを示唆する一方、鉄筋の稼働率は鉄鋼の鉱工業生産の縮小が7月の4.1%減より深まった可能性を示す。8月1日から23日の乗用車小売販売は前年比22%減で、NEV販売は12%減だった。これは一部、1台当たりの買い替え補助金や購入税免除の縮小による。アスファルト稼働率は月後半に弱まり、鉄筋工場の稼働率は低下を続け、原料炭価格上昇によるマージン圧縮でコークス炉稼働率も低下した。 金融環境とインフレは早期緩和の根拠となる。PBOCは8月に買い切り型公開市場操作でRMB200bnを純供給した一方、質入れ型操作でRMB642bn、MLFでRMB100bnを純吸収した。PBOCは8月28日から9月1日にかけてRMB1.1tnの翌日物リバースレポを実施し、当月の翌日物リバースレポの総額をほぼRMB2.8tnまで引き上げ、翌日物ツールへの移行を裏付けた。JPMorganは通年CPI予想を前年比0.8%へ引き下げた。成長の弱さとより穏やかなインフレ見通しにより、4Qに10bp利下げというベースラインより早い利下げの可能性が上がったとみている。同時に、GDPの0.5%に相当するRMB800bnの政策銀行ファシリティーの展開加速も見込む。 住宅市場は長期的な調整局面が続いた。主要30都市の新築住宅販売は8月に前年比6.9%減へ再び転じ、7月は1.0%増だった。中古住宅販売はなお相対的に堅調だったが、前年比伸び率は4.6%から4.2%へ鈍化した。中古住宅の希望価格指数は低下傾向だった一方、販売マネジャー信頼感指数は最近の住宅政策緩和を受けて8月下旬に上昇した。発表された改革パッケージは、販売、資金調達、資本市場にまたがる数十年で最も包括的な住宅不動産制度改革の一つとされる。中心は従来の事前販売モデルから引渡し重視の制度への段階的移行であり、事前販売の条件は全国で少なくとも構造完成まで引き上げられ、購入者資金と住宅ローン資金はより厳格なエスクロー監督下に置かれる。新規プロジェクトでは完成住宅販売が増える。住宅ローン期間は30年から40年へ延長され得るほか、融資実行はプロジェクト完成との連動を強める。デベロッパー融資は、主幹事銀行モデルの下で閉鎖型・プロジェクトベースの枠組みに移行する。土地売却額は8月後半に低下し、政府基金勘定の収入を圧迫した。 インフレ・トラッカーでは、エネルギーと一部工業投入物は上昇した一方、食品と建設関連資材は弱かった。Brent原油は8月末にUS$88/bblで終え、月初を上回った。国内のガソリン、軽油、LNG、LPG価格は月中に上昇し、石油化学製品価格も反発した。農産食品価格は7月の1.0%下落後に8月は横ばいとなり、ヘッドラインCPIへの下押しが弱まった可能性を示す。豚肉卸売価格は季節調整前の前月比2.1%上昇し、前年比下落率は7月の24.0%から20.9%へ縮小した。銅、アルミニウム、炭酸リチウム、ポリシリコンは上昇した一方、セメントと鉄筋価格は、長引く住宅不況と天候による建設活動の混乱を背景に低調なままだった。
分析フレームワーク
JPMorganは、港湾トン数、海運運賃、稼働率、自動車販売、債券発行、PBOC操作、住宅取引、商品価格といった高頻度データを、月次の公式活動・インフレ指標に対応付けている。8月の数値を7月および前年同期と比較し、財政支援、金融政策の時期、不動産改革、短期成長との関係を分析している。
手法メモ
高頻度オルタナティブデータを公式活動指標へ対応付ける手法
レポートは、船舶の動き、工場稼働率、販売、価格などの迅速な運営指標を用いて、公式統計の公表前に月次の貿易、生産、住宅、インフレの変化を推定する。
商品価格と稼働率の波及
世界の商品価格、製油・産業の稼働率、下流価格を結び付け、中国のインフレと生産見通しを分析している。
主要データ
- 政府債発行RMB1,203bn in August7月のRMB1,154bnから増加。1月から8月の発行は通年目標の63%で、前年同期は74%。
- 非タンカー出港船舶トン数+8.6% year-on-year in August7月の+21.3%から低下し、輸出量の伸び鈍化を示す。
- 乗用車小売販売-22% year-on-year during August 1–23NEV販売は前年比12%減。
- 主要30都市の新築住宅販売-6.9% year-on-year in August7月の+1.0%増から反転。中古住宅販売は4.2%増で、4.6%を下回った。
- 通年CPI予想0.8% year-on-yearJPMorganが最近引き下げた予想で、早期緩和の可能性上昇を支える。
- Brent原油US$88/bbl at end-August月初を上回った。
影響と示唆
レポートの中心的な含意は、下半期の回復にはより速い財政執行がなお必要だということである。住宅が引き続き弱く、貿易モメンタムが鈍化し、商品価格上昇にもかかわらずインフレが穏やかなため、JPMorganは早期の金融緩和と政策銀行ツールの迅速な展開の余地が広がったとみている。不動産パッケージは、販売、住宅ローン、デベロッパー融資をプロジェクトの引渡しと完成住宅販売により重点を置く方向へ再編する。
注目点
- 下半期の内需を支えるため、財政発行と政策銀行ツールの展開が加速するか。
- 台風による港湾混乱後の8月の公式貿易・活動データ。
- 習近平国家主席の予定された米国訪問を前にした数カ月間の中国による米国産大豆購入。
- 事前販売条件、エスクロー規則、住宅ローン実行、プロジェクトベースのデベロッパー融資を含む不動産改革の実施。
- JPMorganの4Qに10bp利下げというベースラインに対するPBOCの利下げ時期。