Global crude oil supply and export flows レポート解説
報告書は、フーシ派の封鎖がバブ・エル・マンデブのルートを抑制した結果、サウジの輸出能力が7月以降2.7 mmb/d低下した可能性があると推定する。米国SPR放出の一時停止または終了は、およそ3週間以内に世界の原油市場の逼迫を強める可能性がある。
要約
報告書は、フーシ派の封鎖がバブ・エル・マンデブのルートを抑制した結果、サウジの輸出能力が7月以降2.7 mmb/d低下した可能性があると推定する。米国SPR放出の一時停止または終了は、およそ3週間以内に世界の原油市場の逼迫を強める可能性がある。
- バブ・エル・マンデブ経由のサウジフローはゼロに低下し、スエズ/SUMED経由の増加は混乱を部分的にしか相殺していない。
- サウジの輸出能力は7月比で純額2.7 mmb/d低下したと推定される。
- 8月7日終了週の米国原油純輸入は2.5 mmb/dから4.3 mmb/dへ増加し、2025年6月以来の最高水準となった。
- 最近の放出ペースでは、認定済みSPR交換分は約3週間の放出しか支えられない可能性がある。
レポート解説
概要
このコモディティノートは、中東湾岸から流出する石油量をめぐる相反する推計を検証し、フーシ派の封鎖後のサウジ輸出能力の大幅な低下と、原油輸入増およびSPR放出の一時停止接近に伴う米国の供給緩和縮小という2つの要因が、世界の原油供給を引き締める可能性があると論じる。
主要見解
報告書はまず、中東湾岸から流出する原油・石油製品が4 mmb/dから9 mmb/dまで幅のある推計となっている点を整理する。Deutsche Bankは、これらの数字が異なる定義を用いている可能性を指摘する。同行が追跡するホルムズ海峡経由の流出量は7月初旬に約5 mmb/dであり、米国エネルギー長官の9 mmb/d推計との差は、バブ・エル・マンデブ経由で紅海を出るサウジの輸出で説明できる可能性がある。また、非イラン産とイラン産の液体燃料輸出の構成は大きく偏っており、8月中旬のイラン分はわずか0.11 mmb/dだったとしている。 供給混乱に関する中心的な論点は、フーシ派の封鎖がサウジの原油輸出を減少させたというものだ。バブ・エル・マンデブを通るサウジ原油フローはゼロに低下した。一方、スエズ運河およびSUMEDパイプラインを通るサウジの北向き輸出は、7月の1.0 mmb/dから8月の2.3 mmb/dへ増加したと報じられているが、この1.3 mmb/dの増加は、バブ・エル・マンデブ経由で推定される4 mmb/dの減少を一部しか補っていない。このため報告書は、サウジの輸出能力が7月以降、純額で2.7 mmb/d低下したと推定する。これは、フーシ派の脅威は輸出量を損なっていないとするSaudi Aramco CEOの8月上旬の発言と整合しないようにみえる。ただし、サウジ国内の夏季需要増により輸出可能な原油が減った可能性もあり、輸出減少の全てが封鎖によるものではないと注意を促している。 封鎖は、黒海、または一部バルト海からアジア顧客向けにバブ・エル・マンデブを通過するロシア原油にも影響したようにみえる。これらのフローは7月の3.2 mmb/dから8月の2.0 mmb/dへ低下した。Deutsche Bankのベースケースでは、影響を受けたロシア産原油は供給から失われるのではなく迂回されるため、これだけで世界の供給逼迫を意味するわけではない。 第2の逼迫要因は米国である。8月7日終了週に米国の原油純輸入は2.5 mmb/dから4.3 mmb/dへ急増し、商業原油在庫も増加した。報告書はこれを2025年6月以来の最高の純輸入水準としている。これは1週間だけの現象かもしれないが、米国が世界の原油市場に提供する供給面の緩和は3月初旬以来で最も小さいことを意味する。さらにDeutsche Bankは、SPR交換分として認定された133.6 mmbblのうち116.4 mmbblが既に放出済みで、IEA協調放出に基づく義務は172 mmbblだと指摘する。エネルギー省が十分な追加交換を認定しない限り、最初の133.6 mmbbl後に放出が停止する可能性がある。当時の約870 kb/dの放出ペースでは、残りの放出期間はおよそ3週間となる。放出が3週間後に終了すれば、米国の原油純輸入に上昇圧力がかかり、世界の原油需給は引き締まる可能性が高い。
分析フレームワーク
報告書は、観測されたタンカー輸送ルートと報告された輸出量を比較し、ホルムズ海峡経由で湾岸を出る石油と、紅海経由で出るサウジ産原油を区別している。次に、スエズ/SUMED経由への迂回後に残るサウジ輸出能力の減少を算出し、ロシアの通過量減少が供給喪失か迂回かを評価したうえで、米国の輸入、在庫、SPR放出データと組み合わせて世界の供給バランスを判断している。
手法メモ
輸出フロー、ルート変更、米国輸入、在庫、SPR放出を用いた世界の原油需給バランス分析。
報告書は、混乱したサウジの輸出ルートと米国SPR供給の減少可能性を世界の原油市場への供給を減らす要因として扱う一方、ロシア産原油の迂回と実際の供給喪失を区別している。
バブ・エル・マンデブ、スエズ運河、SUMEDパイプライン、仕向地市場にまたがる物理的な原油輸送ルート分析。
報告書は、海上輸送ルートの混乱がサウジおよびロシア原油の移動にどう影響し、代替ルートが失われた輸出能力を補えるかを追跡している。
主要データ
- サウジ輸出能力の変化-2.7 mmb/d since Julyバブ・エル・マンデブ経由の4 mmb/d減少を、スエズ/SUMED経由の1.3 mmb/d増加で相殺した推計。
- スエズ/SUMED経由のサウジ北向きフロー1.0 mmb/d in July to 2.3 mmb/d in August失われた紅海ルートを部分的に補う動き。
- バブ・エル・マンデブを通過するロシア原油3.2 mmb/d in July to 2.0 mmb/d in August報告書のベースケースでは、純供給喪失ではなく迂回とみなす。
- 米国の原油純輸入2.5 mmb/d to 4.3 mmb/d8月7日終了週の増加で、2025年6月以来の最高水準。
- SPR交換量116.4 mmbbl released out of 133.6 mmbbl awarded; 172 mmbbl IEA obligation約870 kb/dのペースでは、認定済み放出は約3週間分に相当する可能性がある。
影響と示唆
Deutsche Bankは、サウジの輸出能力低下と米国SPR放出の一時停止または終了の可能性が重なれば、世界の原油市場はより逼迫すると論じる。ロシアの通過量減少については、迂回される可能性があるため、純粋な供給喪失とはみなしていない。
リスク
- 推定されたサウジ輸出減少は、フーシ派の封鎖だけでなく季節的な夏季の国内需要も一部反映している可能性がある。
- 米国の原油純輸入の増加は、持続的な傾向ではなく1週間限りの変動である可能性がある。
- バブ・エル・マンデブを通過するロシア産原油の減少は迂回されている可能性があり、世界の供給を減らすとは限らない。
注目点
- バブ・エル・マンデブ経由のサウジ輸出フローが回復するか、スエズ/SUMED経由の追加迂回が失われたルートをさらに補うか。
- 8月7日終了週以降も米国の原油純輸入と商業在庫が高水準にとどまるか。
- 最初の133.6 mmbbl後の放出停止を避けるため、エネルギー省が十分な追加SPR交換を認定するか。
- ロシアの黒海産原油出荷と最終的な配送ルートの推移。