Asia consumption recovery:アジアの消費回復はAI以外にも拡大、中国は主要な例外
Morgan Stanleyは、より強い非テック輸出と設備投資が中国を除くアジアの雇用、賃金、消費を改善させているとみる。中国では不動産下落、家計のデレバレッジ、財政引き締めにより、輸出の強さが同程度の回復につながらない可能性がある。
要約
Morgan Stanleyは、より強い非テック輸出と設備投資が中国を除くアジアの雇用、賃金、消費を改善させているとみる。中国では不動産下落、家計のデレバレッジ、財政引き締めにより、輸出の強さが同程度の回復につながらない可能性がある。
- 非AI輸出は7月に前年比14%増となり、Covidのベース効果による急増を除けば2018年2月以来の最速ペースだった。
- 中国を除くアジアの小売売上高成長率は前年比9.2%と40カ月ぶりの高水準に達した。
- 消費モメンタムは韓国、台湾、マレーシアで最も強く、インドと日本も国内要因の支援を受けている。
- 中国では輸出の支援が、不動産の弱さ、デレバレッジ、景気循環を増幅する財政引き締めによって相殺されている。
- 原油価格がUS$130-150/bblに上昇することが、家計の購買力に対する主な地域リスクとして挙げられている。
レポート解説
概要
本レポートは、アジアの消費回復がAI主導の投資サイクルを越えて広がっているかを検証する。Morgan Stanleyは、輸出と設備投資の拡大が中国を除くアジアの雇用、賃金、家計支出を押し上げつつある一方、中国は不動産と政策の逆風に制約されると結論づけている。
主要見解
Morgan Stanleyの中心的な見解は、アジアの投資・輸出サイクルがAI関連活動から非AI分野へ広がっているというものだ。非AI分野は一般に労働集約度が高いため、同社はこの幅広い回復が雇用への波及を強め、家計所得を改善し、消費を押し上げると予想する。したがって、消費は設備投資を主導するのではなく、設備投資に追随すると見込まれる。根拠として、非AI輸出は7月に前年比14%増となり、Covidのベース効果による急増を除けば2018年2月以来の最速ペースだったこと、非AI資本財輸入の伸びが3カ月移動平均ベースで前年比11%へ加速したことを挙げている。 レポートは、この投資・貿易の勢いが現在は家計状況にも波及しているとみる。アジアの雇用増加率は前年比1.8%と18カ月ぶりの高水準に達し、名目賃金上昇率は前年比5.5%へ改善した。中国を除くアジアの小売売上高は前年比9.2%増で40カ月ぶりの高水準となり、中国を除くアジアの名目民間消費成長率は2Q26に11四半期ぶりの高水準に達した。家計バランスシートも支援材料である。アジアの債務GDP比はCovid前を下回り、家計向け貸出の伸びも上向き始めており、Morgan Stanleyはこれを家計信頼感の改善の証拠と解釈している。 韓国、台湾、マレーシアでは足元の消費回復が最も強い。韓国の小売売上高成長率は7月に3カ月移動平均ベースで前年比5.3%と堅調を維持し、主要26小売業者の売上は8月に前年比7.7%へ加速した。7月の台湾とマレーシアの小売売上高成長率はそれぞれ前年比7.7%と6.4%だった。これらの経済は当初AI・半導体サイクルの恩恵を受け、賞与支給にも支えられて電子部門の賃金上昇率は韓国で20%、台湾で17%に達した。Morgan Stanleyは、次の局面ではより広い非テック輸出と設備投資活動が寄与するとみており、非半導体部門の雇用増加率が韓国と台湾でそれぞれ18カ月ぶり、6カ月ぶりの高水準に達したと指摘する。マレーシアも労働環境の改善と、2026年1月から実施された公的部門賃上げの第2段階の恩恵を受けている。 インドの回復は政策緩和と設備投資の改善の双方によるものとされる。2025年以降、所得税・GSTの引き下げ、銀行・ノンバンク融資規制の緩和が国内需要を支えてきた。2025年9月に実施されたGST引き下げは車両の購入しやすさを改善し、外需環境の改善は国内設備投資の回復を支えている。都市部賃金上昇率は前年比7.7%と9四半期ぶりの高水準へ改善したが、レポートは依然として過去の水準と比べ低調だと指摘する。日本では、円安と輸入物価上昇がリフレ、企業利益、約3%の賃金上昇を支え、消費見通しが改善した。総合インフレの鈍化により実質賃金上昇率は2026年2月からプラスに転じ、レポートは来年4月からの消費税減税が消費の購入しやすさをさらに支えると予想する。 中国が主な例外である。Morgan Stanleyは以前、輸出回復の広がりが非コモディティ部門の利益率を高め、その後のタイムラグを経て賃金上昇をもたらすと予想していたが、この相殺効果は不十分となる可能性があると判断している。不動産価格は大幅に下落し、家計はデレバレッジを進め、家計債務は前年比で縮小している一方、貯蓄率は2022年以降の高水準に上昇している。レポートは財政政策を景気循環を増幅する引き締めと位置づけ、8月の信用データは財政執行ペースに転換がないことを示したとしている。Morgan Stanleyの中国エコノミクスチームは3Q GDP成長率が前年比4.3-4.4%と4.5%を下回る水準で推移するとみており、これは労働市場が引き続き軟調で、消費が低迷することを意味する。非コモディティ部門の利益率と賃金の改善は下押しを一部和らげる可能性があるが、構造的な逆風を覆すには不十分とみられる。 主な地域リスクは、さらなる原油価格ショックである。アジアの政策当局は2月末以降、国内ガソリン・軽油価格の上昇をそれぞれ14%と16%に抑えてきたが、現地通貨建て原油価格は49%上昇している。原油価格がUS$130-150/bblに達すれば、この緩衝は弱まりうる。特にインドと日本では、政府が国内価格へのより大きな転嫁を認める圧力に直面する可能性がある。インドについてMorgan Stanleyは、El Niñoの強まりもリスクとして注視している。播種期のモンスーン降雨量は長期平均を約15%下回っており、作物生産、農村所得、支出に影響しうる。ただし、灌漑の改善、より厚い食料穀物在庫、CPIにおける食品比重の低下により、過去のサイクルよりマクロ経済への損害は軽減される可能性がある。
分析フレームワーク
Morgan Stanleyは、輸出と設備投資の成長から雇用、賃金、家計信頼感、消費への伝達経路をたどる。AI関連活動と非AI活動を区分し、高頻度の貿易、資本財輸入、小売売上高、賃金、雇用、貸出指標を用いるとともに、国別の政策、不動産、エネルギー価格の状況が消費見通しをどう変えるかを評価している。
手法メモ
輸出と設備投資から雇用、賃金、家計消費への波及
レポートは、より強い輸出需要と設備投資、特に労働集約度の高い非AI分野での拡大が労働市場を改善し、その後に消費支出を支えるという伝達連鎖を用いている。
家計所得、信用、政策、購買力の状況と併せた消費指標の評価
Morgan Stanleyは、小売売上高、消費成長、賃金、家計貸出、不動産の資産効果、財政政策、燃料価格の転嫁を通じて消費需要を評価している。
主要データ
- 非AI輸出成長率14%Y in JulyCovidのベース効果による急増を除けば、2018年2月以来の最速ペース
- 非AI資本財輸入成長率11%Y3カ月移動平均ベース
- 中国を除くアジアの小売売上高成長率9.2%Y40カ月ぶりの高水準
- 中国を除くアジアの民間消費成長率7.6%Y in 2Q11四半期ぶりの高水準
- アジアの雇用成長率1.8%Y18カ月ぶりの高水準
- アジアの名目賃金成長率5.5%Y地域の賃金モメンタムが改善
- 中国3Q GDP成長率の追跡予想4.3-4.4%YMorgan Stanleyの予想であり、4.5%を下回る
影響と示唆
レポートは、非テック活動がAIサイクルを補完することで地域の消費回復が広がると予想する。韓国、台湾、マレーシア、インド、日本は、輸出、賃金、政策支援、家計状況の異なる組み合わせを通じて恩恵を受ける位置にある。一方、中国では不動産、デレバレッジ、財政要因が有利な輸出波及効果を依然上回るため、内需は遅れると予想される。
リスク
- 原油価格がUS$130-150/bblに上昇すると、国内燃料価格への転嫁拡大を余儀なくされ、家計の購買力と消費を低下させる可能性がある。
- インドでは、原油価格の上昇とEl Niñoの強まりが作物生産、農村所得、消費支出を圧迫する可能性がある。
- 中国では、持続する不動産下落、家計のデレバレッジ、景気循環を増幅する財政引き締めが消費回復をさらに遅らせる可能性がある。
注目点
- 非AI輸出と資本財輸入のモメンタムがアジア全体に広がり続けるか。
- 韓国、台湾、マレーシアの雇用、賃金上昇、家計貸出、小売売上高データ。
- インドにおける原油価格転嫁の程度、およびモンスーンとEl Niñoの状況が農村需要に与える影響。
- 日本の実質賃金の傾向と、来年4月に見込まれる消費税減税。
- 中国の不動産価格、家計デレバレッジ、財政執行、信用データ、賃金回復。
- 原油価格の動向と、政策当局が国内燃料価格の抑制を継続する意思。