Asia-Pacific inflation:エネルギーショックがアジア太平洋のインフレ圧力を再燃させる一方、コアへの波及はなお限定的
Goldman Sachsは、原油、LNG、ディーゼル価格の上昇が、アジア太平洋の大半で9月の輸入価格と生産者価格を押し上げると予想している。総合・コアCPIは概して政策目標以上または同水準にあるが、より広範なコアインフレ率の上昇はこれまでのところ小幅にとどまる。
要約
Goldman Sachsは、原油、LNG、ディーゼル価格の上昇が、アジア太平洋の大半で9月の輸入価格と生産者価格を押し上げると予想している。総合・コアCPIは概して政策目標以上または同水準にあるが、より広範なコアインフレ率の上昇はこれまでのところ小幅にとどまる。
- Goldman Sachsは12月のBrent予想を$85/bblへ引き上げた。
- LNGとディーゼル価格は年初来高値を更新し、石油製品価格も高水準にある。
- 補助金または規制価格がある経済圏では、エネルギー価格の輸入価格・生産者価格への波及は消費者価格への波及より強いと見込まれる。
- Goldman Sachsの2027年予想は、インドとマレーシアでコンセンサスを最も上回り、日本、ベトナム、フィリピンで最も下回る。
レポート解説
概要
この地域インフレ・モニターは、再燃したエネルギー価格ショックがアジア太平洋の経済圏のインフレにどう影響するかを評価している。Goldman Sachsは、このショックが短期的な物価圧力を広く高めた一方、コアインフレ率と賃金への二次的な波及は現時点では比較的抑制されているとみている。
主要見解
Goldman Sachsは、ここ数週間のエネルギー価格の再上昇を地域のインフレ圧力再燃の要因としている。同社のコモディティ・ストラテジストは12月のBrent予想を$85/bblへ引き上げた。原油価格は3月のピークまで完全には戻っていないものの、石油製品価格は高止まりし、LNGとディーゼル価格は年初来高値を更新している。レポートは、これらの動きをイラン戦争、ホルムズ海峡の閉鎖、それに伴うアジア向けエネルギー供給の減少と結び付け、一部仕向け地へのLNGフローが引き続き低調だと指摘している。 直接的な波及は、多くの経済圏で9月の輸入価格と生産者価格に最も明確に現れると見込まれる。財政補助金または規制された小売価格が家計を緩衝する経済圏では、最終消費者価格への影響はより小さいはずである。紛争前には、大半の地域経済圏でCPIインフレ率は概ね中央銀行目標に沿うか、それを下回っていた。現在は総合・コアCPIが概して目標以上または同水準にあり、レポートは地域インフレが当面は中程度に高い水準で安定しているとする一方、過去1カ月にインフレ圧力が再燃したことを示している。 レポートはエネルギーショックと、より広範な国内インフレの持続性を区別している。コアCPIへの波及はこれまで限定的で、地域のコアインフレ率中央値はわずかに上昇しただけである。賃金インフレ率は地域経済圏間で大きく異なるが、先進国市場では概ね安定し、一部の新興国市場でのみ上昇傾向にある。これは、現在の上昇が主としてエネルギー主導の衝撃であり、基調的インフレの広範な加速ではないことを示唆する。 Goldman Sachsは、紛争と供給途絶の後、自社とコンセンサス双方の2026年CPI予想が上方修正されたと指摘する。同社の2026年見通しは現在、地域全体でコンセンサスとほぼ同様だが、2027年予想は経済圏ごとに乖離する。同社予想はインドとマレーシアでコンセンサスを最も上回る一方、日本、ベトナム、フィリピンで最も下回る。地域比較ではGDP加重のインフレ平均、暦年ベースの予想、経済圏固有のコアCPI定義を用い、政策目標レンジの上限を関連する目標基準として扱っている。 国別モニタリングの枠組みは、中国本土、韓国、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、日本、香港、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドを対象とする。各国・地域について、総合CPI、CPIモメンタム、CPI項目別寄与、利用可能な場合の生産者・輸入価格、賃金上昇率、小売エネルギー価格を追跡する。また、データ頻度の違いも指摘しており、ニュージーランドの総合・コアCPIとオーストラリアのコアCPIは四半期ごとの公表で、オーストラリアの最新CPIは7月、ニュージーランドの最新データは第2四半期である。
分析フレームワーク
Goldman Sachsは、エネルギー供給ショックを原油、LNG、石油製品価格を通じて追跡し、その後に輸入価格、生産者価格、総合CPI、コアCPIへの波及を評価する。国別のインフレモメンタム、項目別寄与、賃金、小売エネルギー価格を政策目標とコンセンサス予想に照らして比較し、地域比較にはGDP加重の指標を用いる。
手法メモ
エネルギー供給途絶と価格波及の分析
レポートは、ホルムズ海峡閉鎖後のアジア向けエネルギー供給減少を原油、LNG、石油製品価格の上昇と結び付け、輸入価格、生産者価格、消費者価格への想定される影響を追跡している。
GDP加重の地域インフレ比較と経済圏固有のコアCPI指標
地域インフレ率はGDP加重平均で算出され、コアCPIは各経済圏固有の公式に準じた除外ルールを用いることで、基調的な物価圧力を比較している。
主要データ
- Goldman Sachsの12月Brent予想$85/bblエネルギー価格圧力の再燃を受けて引き上げられた。
- 日本を除くアジアの2026年CPI予想1.8%Goldman Sachsとコンセンサスの予想はいずれも前年比1.8%。
- インドの2027年CPI予想5.2%Goldman Sachs予想は5.2%、コンセンサスは4.8%。レポートはインドをコンセンサスを最も上回る乖離としている。
- マレーシアの2027年CPI予想2.4%Goldman Sachs予想は2.4%、コンセンサスは2.0%。
- 日本の2027年CPI予想1.4%Goldman Sachs予想は1.4%、コンセンサスは2.1%。
- フィリピンの2027年CPI予想3.3%Goldman Sachs予想は3.3%、コンセンサスは4.0%。
- ベトナムの2027年CPI予想3.4%Goldman Sachs予想は3.4%、コンセンサスは3.9%。
影響と示唆
レポートは、エネルギーショックが地域の短期的なインフレ圧力を高めており、とりわけ輸入価格と生産者価格を通じて影響していることを示す。消費者価格への影響は現地の補助金・規制価格制度によって異なる一方、地域のコアインフレ率の上昇が限定的で賃金上昇率も概ね安定していることは、二次的影響がこれまで抑制されていることを示す。
注目点
- 原油、LNG、ディーゼル価格のさらなる動き。これには不確実性の高い原油価格見通しも含まれる。
- 地域経済圏における9月の輸入価格・生産者価格の発表。
- 補助金や規制価格にもかかわらず、エネルギーコストが最終消費者価格により顕著に波及するか。
- より広範な二次的インフレ効果の兆候としてのコアCPIと賃金上昇率。
- Goldman Sachsとコンセンサスの2027年インフレ予想の乖離。特にインド、マレーシア、日本、ベトナム、フィリピン。