アジア・マクロおよびローカル市場:中期的にはドル強気・アジアデュレーション弱気を維持しつつ、アジアFXの短期的なスクイーズに警戒
本レポートは、アジアの低利回り市場におけるペイヤーと債券アンダーウェイトを維持し、ポジションの集中と極端なバリュエーションを踏まえて戦術的にアジアFXショートを縮小する一方、オプションを通じたCNHロングを継続し、年末のUSD/CNHを6.70と見込む。
要約
本レポートは、アジアの低利回り市場におけるペイヤーと債券アンダーウェイトを維持し、ポジションの集中と極端なバリュエーションを踏まえて戦術的にアジアFXショートを縮小する一方、オプションを通じたCNHロングを継続し、年末のUSD/CNHを6.70と見込む。
- 今月のアジア金利の売りは、米国実質金利や原油価格などのファンダメンタルな基準が示唆するほど大きくなく、低利回り市場におけるペイヤー取引の余地を残している。
- インド、インドネシア、フィリピンの利回りは3月の売りの約40%しか再現していない一方、KRW、TWD、THB、MYR市場は約90%に達している。
- 2年金利差に対するアジアFXの乖離は+1.4標準偏差に達しており、ショートの集中と夏場のデータ歪みを合わせると、短期的な平均回帰リスクが高まっている。
- GBI-EM内のTHBアンダーウェイトを1.0%から0.5%へ引き下げる一方、アジアFX全体のアンダーウェイトは維持する。
- オプションを通じたUSD/CNHショートを継続し、年末までに6.70への低下を見込む。
レポート解説
概要
本レポートは、アジアのローカル金利、FX、中国の資産配分に焦点を当てる。金利については、中東情勢の再エスカレーションがアジアの利回りを押し上げたが、米国実質金利および原油価格の変動と比べると、アジア市場は依然として調整不足に見える。国内成長、信用拡大、エルニーニョによる食品インフレリスク、中銀の漸進的なタカ派転換、低いバリュエーションが相まって、デュレーションのアンダーウェイトを支持する。FXでは、タカ派的なFRBと底堅い米国経済がドルを引き続き支える一方、アジア通貨のバリュエーションは極端に割安でショートが集中しており、2024年夏のようなスクイーズ・ラリーが近い将来に起こる可能性があるため、ショートは完全に解消するのではなく縮小することが適切である。中国では、政治局会議は強い需要主導のリフレシグナルを発しなかったものの、カウンターシクリカル支援、輸出企業のドル転換、海外投資家需要は引き続き人民元に有利である。
主要見解
GBI-EM内のタイ国債アンダーウェイトを維持し、5年MYRおよびTWD金利のペイを継続する。アジアの低利回り市場は利上げ期待を形成する段階にあり、ペイヤー取引のリスク・リワードは引き続き魅力的である。KRW 2s10sスティープナーは、カーブがファンダメンタルモデル対比で既に大幅にスティープ化しているため、戦術的に利益確定する。アジアFXは強いドルと圧迫された資金流入の影響を引き続き受けるが、短期テクニカルズはショート規模の縮小を支持しており、THBアンダーウェイトを1.0%から0.5%に引き下げる。SGD/TWDのショートを継続し、PHPおよびIDRに対するINRロングを保有し、INRコールオプションで一部ヘッジする。人民元については、オプションを通じたUSD/CNHショートの見方を維持し、年末目標を6.70とする。
分析フレームワーク
本調査は、マクロ成長、インフレ、信用、エネルギー、中銀の反応関数を組み合わせ、アジア経済圏の高利回りグループと低利回りグループを比較する。米国実質金利、ブレント原油、国内成長、インフレ、財政期待を用いて金利フェアバリューおよびカーブ回帰モデルを構築する。FXセクションでは、2年金利差の残差、過去の平均回帰、季節性、投資家ポジショニング、顧客サーベイ、政策的為替レート枠組みを統合し、短中期のリスクを評価する。
手法メモ
成長、信用、インフレ、中銀の反応関数に基づき金利の方向性を評価する
国内成長と信用の改善、食品・エネルギーインフレのリスク、中銀がタカ派に転じる傾向が相まって、将来の利上げまたはタームプレミアム上昇の確率を高める。
米国実質金利、原油価格、国内マクロ期待を用いてアジア利回りのフェアバリューを推計する
本レポートは、今月のアジア金利の調整は外部アンカーが示唆する水準より小さく、韓国を除く低利回り市場の大半では利回りが依然として低すぎるように見えると論じている。
世界的な金利ショックに対するアジアの高利回り・低利回り経済の感応度を比較する
今回、INR、IDR、PHPの利回りは3月の売りの約40%しか再現していない一方、KRW、TWD、THB、MYRは約90%に達しており、金利上昇局面では珍しい高利回り・低利回り間スプレッドの圧縮を生んでいる。
2年USD・アジア金利差の回帰を用いてアジア通貨の割高・割安を測定する
金利差に対するアジアFXの乖離は+1.4標準偏差に達している。歴史的に、同様の極端な水準は通常、ある程度の短期平均回帰を伴っていた。
CFTCポジショニング、顧客サーベイ、米国データの季節性を用いてスクイーズリスクを評価する
ドルロングとアジアFXショートは比較的集中している。季節性により米国データが軟化し、FRB期待のハト派転換を引き起こせば、低利回りのアジア通貨が先行して反発する可能性がある。
カーブのバリュエーション、キャリー、政策織り込みを組み合わせて保有または利益確定を判断する
本レポートはTWD・MYRペイヤーおよびSGDの相対価値取引を継続する一方、KRW 2s10sカーブがモデル対比で明確にスティープ化した後に利益を確定した。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- アジア低利回り市場の金利ペイヤーとデュレーションのアンダーウェイトを維持
- 強み
- 国内成長と信用の改善、中銀の漸進的なタカ派転換、米国実質金利および原油価格による高いアンカー。
- 弱み
- 利回りは低水準から上昇しており、地政学的緊張が緩和するかFRB期待がハト派化すれば、短期的に低下へ戻る可能性がある。
- 比較
- INR、IDR、PHPと比べ、KRW、TWD、THB、MYRは今回の世界的金利ショックに対してより大きく再評価されたが、韓国を除いてバリュエーションは依然低く見える。
- リスク
- 原油価格の急落、予想外の成長鈍化、または中銀が長期にわたり据え置きを継続すること。
- タイ国債およびTHB金利GBI-EMのアンダーウェイトを維持し、SGD対比で1y1y THBペイヤーを保有
- 強み
- 成長は予想より強く、コアインフレはもはや低下しておらず、経常収支は悪化しているほか、原油価格補助金の余地は限られる。
- 弱み
- BOTのベースラインシナリオは依然として2026年から2027年にかけて金利を1.00%に据え置くことであり、政策スタンスは比較的ハト派的である。
- 比較
- タイの政策織り込みは韓国より穏健であり、経済が予想を上回り続ければ再評価の余地はより大きい。
- リスク
- 世界のエネルギー価格下落、タイの成長モメンタムの失速、またはBOTが緩和的スタンスを維持すること。
- 5年TWD IRSペイヤーを維持
- 強み
- 強いAIテクノロジーサイクル、鉱工業生産、製造業センチメント、生産者物価が金利上昇を支える。
- 弱み
- インフレはまだ脅威となっておらず、CBCは依然として経済構造の弱い部分に注目している。
- 比較
- アジアの低利回り通貨の中で、TWD金利とFXはドルとの負の相関が最も強い。
- リスク
- テクノロジーサイクルの減速、コアインフレの低下、またはCBCが緩和的な金融環境を引き続き容認すること。
- 5年MYR NDIRSペイヤーを維持
- 強み
- 第2四半期GDPは前年比5.8%成長し、成長は幅広く、今後2年間の完全な1回の利上げはまだ市場に織り込まれていない。
- 弱み
- BNMはまだ政策正常化を明確に示唆しておらず、インフレデータは繰り返し予想を下回っている。
- 比較
- 引き締めが完全に織り込まれている韓国と比べ、マレーシアのカーブは潜在的な利上げを過小評価している。
- リスク
- 9月にタカ派転換がないこと、または第4四半期の利上げ期待が実現しないこと。
- KRW 2s10sカーブスティープナー取引で利益確定
- 強み
- これまでフロントエンドの事実の実現、長期の成長潜在力の再評価、発行構造の変化に支えられていた。
- 弱み
- カーブはUSDカーブ、政策金利差、財政期待に基づくモデル対比で既に大幅にスティープである。
- 比較
- 韓国金利はすでにアジア低利回りユニバースで割安な市場の一つであり、さらなるスティープ化のリスク・リワードを低下させている。
- リスク
- AI投資の拡大が潜在成長率と自然利子率を押し上げ、長期ゾーンをさらに上昇させること。
- アジアFXアンダーウェイトを維持するが戦術的にショートを縮小
- 強み
- 短期のバリュエーションは極端に割安で、ポジショニングは集中しており、米国データには季節的な軟化リスクがある。
- 弱み
- タカ派的なFRB、底堅い米国経済、強いドルがアジアへの資金流入を引き続き圧迫している。
- 比較
- 短期的な環境は2024年8月から9月のキャリートレード解消に似るが、現在の米国雇用と金利サイクルは中期的なドル上昇をより強く支えている。
- リスク
- FRBが一段とタカ派化すること、エネルギー供給ショックの発生、または米国データが堅調を維持すること。
- THBアンダーウェイトを1.0%から0.5%へ縮小
- 強み
- 人気の高いショートポジションは、リスク選好が改善した際に急速なショートカバーを引き起こす可能性がある。
- 弱み
- 政策ミックスは依然として緩和的な金融政策、拡張的財政政策、より弱い為替レートを支持している。
- 比較
- ポジショニングがより軽い通貨と比べ、THBはスクイーズ・ラリーでより大きな弾力性を持つ可能性がある。
- リスク
- エネルギー価格の上昇、経常収支の悪化、通貨安へ積極的に誘導する政策。
- SGD/TWDショートを維持
- 強み
- MASとCBCはいずれも名目実効為替レートを安定させる政策上のインセンティブを有し、TWDはすでに政策バンドの弱い側に近い。
- 弱み
- 潤沢なシンガポール預金と穏やかな国内物価圧力が、引き続きSGD金利を抑制している。
- 比較
- 本レポートはSGD金利のレシーブとMYR・THB金利のペイも選好している。
- リスク
- MASが予想以上に引き締めること、またはテクノロジー関連の資金フローによりTWDが大幅に上昇すること。
- PHPおよびIDRに対するINRINRロングを維持し、INRコールオプションで一部ヘッジ
- 強み
- 相対価値とオプション構造により、地域FXにおける全体的な下方リスクを制御できる。
- 弱み
- アジア通貨全体は依然として強いドルとよりタイトな金融環境から圧力を受けている。
- 比較
- INR、PHP、IDRはいずれも、今回の利回り再評価が比較的限定的な高利回り市場に属する。
- リスク
- インドの対外収支悪化、またはPHPとIDRの政策信認がさらに改善すること。
- CNHオプションによるロングとUSD/CNHショートを維持
- 強み
- カウンターシクリカル政策、中国資産に対する海外需要、輸出企業のドル転換、基準値の緩やかな引き下げが相まって人民元を支える。
- 弱み
- 中国のPMIは弱く、政治局会議はまだ決定的な需要主導のリフレ転換を示していない。
- 比較
- 他のアジア通貨と比べ、人民元は既に相対的に割安であり、2015年の下落サイクルと似た出発条件を欠いている。
- リスク
- 中国の成長のさらなる悪化、政策刺激策が期待を下回ること、またはドルが再び急速に上昇すること。
主要データ
- 高利回り市場の利回り再評価約40%今回のINR、IDR、PHPの利回り変動は、3月の売りの約40%に相当する。
- 低利回り市場の利回り再評価約90%今回のKRW、TWD、THB、MYRの利回り変動は、3月の売りの約90%に相当する。
- エルニーニョのインフレ影響平均で約+0.3パーセントポイントJPMorgan Economicsは、スーパーエルニーニョによりアジア全体のインフレ率が平均0.3パーセントポイント上昇し得ると推計している。
- 韓国の政策金利ターミナル予想3.75%JPMorganの基本シナリオでは、ターミナル金利は2Q27末までに到達すると見込み、2026年8月には連続利上げが起こり得ると考えている。
- マレーシア第2四半期実質GDP前年比+5.8%市場コンセンサスの5.2%およびJPMorgan予想の5.4%を上回り、前期比年率は8.5%だった。
- 金利差に対するアジアFXの乖離+1.4標準偏差2年金利差に対するアジア通貨のバリュエーションに基づくもので、比較的高い短期平均回帰リスクを示す。
- アジアFXの顧客ポジショニング・スコア-0.982024年7月と完全に同水準であり、アジアFXのアンダーウェイトが集中していることを示す。
- THBアンダーウェイト調整1.0%から0.5%へ引き下げ短期的なショートスクイーズリスクを管理するため、GBI-EM内のアンダーウェイト規模を半減する。
- KRW 2s10sスティープナー取引エントリー0.26%、エグジット0.38%、損益24bpキャリーは0.12%であった。カーブがファンダメンタルモデル対比で明確にスティープ化したため、利益を確定した。
- TWD名目実効為替レートの位置-3.6%±5%の政策バンド内にあり、CBCのタカ派バイアスを強める可能性がある。
- USD/CNH年末目標6.70オプションを通じた人民元ロング、すなわちUSD/CNHショートを維持する。
影響と示唆
資産配分の観点から、投資家は短期的なテクニカル反発と中期的なファンダメンタルズのトレンドを区別すべきである。アジア金利は、特に成長が強く政策織り込みが不十分な低利回り市場において、デュレーションのアンダーウェイトに引き続き適している。アジアFXショートは、バリュエーションが極端でポジショニングが集中している局面でこれ以上拡大すべきではないが、短期反発が続けばドルロングを再構築できる。人民元は他のアジア通貨より政策およびフロー面での支援が強い。エネルギー供給ショックが再びエスカレートすれば、金融環境を引き締めることでアジアFXの下方リスクを強め、金利とタームプレミアムを押し上げるだろう。
リスク
- FRBのスタンスが市場の織り込みよりタカ派的であり、米国フロントエンド金利とドルのリスクプレミアムが上昇を続ける。
- ホルムズ海峡またはバブ・エル・マンデブ海峡が再び混乱し、原油・天然ガスの供給ショックを引き起こす。
- スーパーエルニーニョが食品インフレを押し上げ、アジア中銀により迅速な政策引き締めを迫る。
- アジアFXのショートポジションが集中しており、米国データが弱まるかFRB期待がハト派化すれば、激しいショートカバーが発生する可能性がある。
- アジアの成長およびテクノロジー輸出サイクルが予想外に冷え込み、金利ペイヤー取引の根拠を弱める。
- 中国のカウンターシクリカル支援が不十分で、PMIが弱いままとなり、人民元資産へのセンチメントが低迷する。
- 欧州の冬季天然ガス在庫の積み増しが世界エネルギー市場の緊張を強め、アジアの金融環境を引き締める。
注目点
- 米国のコアCPI、非農業部門雇用者数、その季節調整改定、およびFRBの利上げ期待への影響。
- FRB当局者の発言と、2026年12月の政策行動に関する市場織り込み。
- BOKが8月に連続利上げを行うか、ターミナル金利が3.75%に向かうか。
- BNMが9月にタカ派転換し、第4四半期の利上げへの道を開くか。
- CBC会合での反対票数、コアインフレ、TWD名目実効為替レートの位置。
- 潜在成長率を上回る成長、コアインフレ、経常収支悪化に対するBOTの対応。
- アジアFXのポジショニング、JPMorganの顧客サーベイ、THBなど人気ショートのショートカバーのペース。
- 中国PMI、PBoCの緩和、政治局のカウンターシクリカル政策、輸出企業のFX転換フロー。
- USD/CNHが低下を続け、年末目標の6.70に近づけるか。
- ホルムズ海峡、バブ・エル・マンデブ海峡、欧州の天然ガス在庫の変化。