東京エレクトロン(8035.T):野村、東京エレクトロンの業績予想を引き上げ、買い推奨を継続
改善するWFE市場見通し、先端NAND装置におけるシェア上昇、比較的潤沢な生産能力を背景に、野村は同社が業界を上回るとみる。一方、バリュエーションのベンチマーク低下を受け、目標株価は77,000円に設定した。
要約
改善するWFE市場見通し、先端NAND装置におけるシェア上昇、比較的潤沢な生産能力を背景に、野村は同社が業界を上回るとみる。一方、バリュエーションのベンチマーク低下を受け、目標株価は77,000円に設定した。
- 野村は主にWFE市場見通しの小幅な上方修正を反映し、FY27/3から営業利益予想を引き上げた。
- ウェハボンダー、プローブステーション、先端NAND向け成膜・エッチング装置における同社のポジショニングは、WFE市場平均を上回る売上成長を支えるとみられる。
- 宮城テクノロジーイノベーションセンターは2027年夏に完成予定で、フル稼働時には生産能力が現行水準の約3倍に拡大すると見込まれる。
- 目標株価は、FY29/3のEPS予想3,138.8円と妥当P/Eレンジ24~25倍に基づく。
レポート解説
概要
WFE市場見通しの改善を背景に、野村は東京エレクトロンのFY27/3からの業績予想を引き上げ、買い推奨を継続した。高成長装置へのエクスポージャー、先端NANDプロセス装置におけるシェア上昇、同業他社より潤沢な生産能力余力に支えられ、業界拡大への期待が高まる中で同社は投資家の関心を集める可能性が高いと報告書はみている。
主要見解
主な論点は以下の通り。第一に、同社はウェハボンダーやプローブステーションなど、市場全体を上回る成長が見込まれる装置分野で強い地位を有する。第二に、先端NAND向け成膜・エッチング市場でのシェア拡大が、業界成長率を上回る売上成長を支え得る。第三に、早期の能力投資および宮城テクノロジーイノベーションセンターの稼働開始により、拡大するWFE需要を取り込む能力が高まる可能性がある。野村は、FY27/3下期ガイダンスにおける売上総利益率改善の度合いと、コスト転嫁に伴う価格効果を短期的な収益注目点とみている。
分析フレームワーク
本レポートは業績予想の改定と相対バリュエーションを組み合わせている。業績予想は更新後のWFE市場見通しに基づき調整され、目標株価はFY29/3のEPSに妥当P/E倍率を適用して算出される。また、同社の予想営業利益成長率は日本の半導体製造装置業界の成長率と比較される。
手法メモ
目標株価 = FY29/3 EPS予想 × 妥当P/E倍率
FY29/3のEPS予想3,138.8円に妥当P/Eレンジ24~25倍を適用し、目標株価77,000円を算出している。妥当倍率は、日本のSPE業界のP/E20~21倍およびRussell/Nomura Large Cap ex-Financials指数の約15倍のベンチマークP/Eを参照している。
営業利益CAGR比較
野村は、FY29/3を基準とする東京エレクトロンの2年間の営業利益CAGRが12%弱となり、業界平均の約11.5%を上回ると予想している。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- 東京エレクトロン(8035.T)カバレッジ対象企業
- 強み
- コータ/デベロッパ装置で世界シェア約90%、エッチング装置で約23%を有すると推定される。先端NAND装置でのシェア上昇、ウェハボンダーやプローブステーションなど高成長装置への需要、比較的潤沢な生産能力の恩恵を受ける。
- 弱み
- 業績およびバリュエーションは、半導体装置サイクル、顧客の設備投資、業界在庫調整に対して高い感応度を持つ。
- 比較
- 野村は、FY29/3を基準とする同社の2年間の営業利益CAGRが12%弱となり、業界平均の約11.5%をわずかに上回ると予想している。
- リスク
- SPE市場回復の遅れ、顧客の設備投資削減、中国向け輸出規制の強化、サプライヤーのボトルネック、中国の国産化による競争、データ漏洩関連リスク。
主要データ
- 投資判断買い(継続)野村は今後12か月間にわたり、同社株がベンチマークを上回ると予想している。
- 目標株価77,000円現在株価から28.1%の上昇余地を示唆する。
- 現在株価60,090円株価基準日:2026-08-17。
- FY29/3 EPS予想3,138.8円目標株価の算定に使用。
- FY29/3 営業利益予想1,849,400百万円予想は連結財務データに基づく。
- FY27/3 営業利益予想1,005,200百万円引き上げられた業績見通しを反映。
- 2027年WFE市場予想1,900億米ドルをやや上回る水準レポートでは、同社の既存計画で約2,000億米ドルのWFE市場に対応可能としている。
- 能力増強現行能力の約3倍宮城テクノロジーイノベーションセンターがフル稼働した後に見込まれる。
影響と示唆
WFE市場の拡大が続けば、東京エレクトロンの余剰生産能力と高成長製品へのエクスポージャーは、受注、売上、利益率の改善につながる可能性がある。市場は、FY27/3下期ガイダンスの妥当性、前四半期比での売上総利益率改善、価格転嫁の有効性に注目するだろう。バリュエーション面では、業績予想は引き上げられたものの、ベンチマーク市場P/Eが約16.5倍から約15倍へ低下したことが目標株価の上昇余地を抑制している。
リスク
- 顧客の在庫調整の長期化により、半導体製造装置市場の収益回復が遅れる可能性。
- 顧客の設備投資予算削減により、SPE市場の成長が期待を下回る可能性。
- 新たな輸出規制により、中国の半導体装置投資が抑制される可能性。
- サプライチェーンまたはサプライヤーのボトルネックにより、能力増強が制約される可能性。
- 中国の国内半導体産業育成に起因する競争および規制リスク。
- 元従業員に関わるデータ漏洩事案による潜在的影響。
注目点
- FY27/3第2四半期に通期ガイダンスが発表されるかどうか。
- 下期ガイダンスにおける前四半期比の売上総利益率改善の程度。
- コスト上昇を転嫁するために実施された数%の値上げの影響。
- 先端NAND向け成膜・エッチング装置の市場シェア変動。
- 2027年夏の宮城テクノロジーイノベーションセンター完成と、その後の能力立ち上げ進捗。
- WFE市場規模、顧客の設備投資、中国関連の輸出規制の変化。