Global financial conditions, cross-asset liquidity and investor positioning レポート解説
J.P. Morganは、米国とユーロ圏で価格ベースの金融環境は緩やかに引き締まったものの、堅調な貸出、債券発行、広義の流動性が成長を引き続き支えるとみる。取引流動性は現物US Treasuriesで最も悪化し、Nikkei、金、bitcoin先物は歴史的に薄い状態が続く。
要約
J.P. Morganは、米国とユーロ圏で価格ベースの金融環境は緩やかに引き締まったものの、堅調な貸出、債券発行、広義の流動性が成長を引き続き支えるとみる。取引流動性は現物US Treasuriesで最も悪化し、Nikkei、金、bitcoin先物は歴史的に薄い状態が続く。
- Global Aggregate利回りは約15bp上昇して4.1%強となり、年初来の上昇幅は約60bpに達した。
- 米国の銀行貸出の伸びは前年比7%強、ユーロ圏は約5%だった。
- 米国投資適格債の発行額は8月に$90bnを超え、2020年に次ぐ8月として2番目に強い水準だった。
- 株式ポジショニングは70th percentile、債券ポジショニングは58th percentileで、いずれもロングだが極端ではない。
- 最も大きいオーバーウェイトはEM equitiesと金を除くcommoditiesで、corporate creditとEM bonds/FXが最もアンダーウェイトだった。
レポート解説
概要
このGlobal Markets Strategyの更新は、価格ベースと数量ベースの金融環境指標を対比し、その後にクロスアセットの取引流動性と投資家ポジショニングを検証する。中心的な結論は、利回り上昇が相対的な引き締めをもたらした一方、信用・マネー創造は引き続き成長を支えているというものだ。
主要見解
レポートは、債券売りの再燃から始める。Global Aggregate利回りは直近1週間余りで約15bp上昇し、4.1%強となり、年初来の上昇幅は約60bpに達した。J.P. Morganの価格ベース金融環境フレームワークでは、米国の金融環境は2026年3Qこれまでのところ幾分引き締まったが、水準全体ではなお緩やかな支援を示している。投資適格債利回りの上昇が最大の引き締め要因であり、短期金利と実質実効為替レートも抑制要因となった。一方、実質株式リターンと、銀行の融資基準引き締め報告の減少が一部を相殺した。ユーロ圏でも短期金利と投資適格債利回りを中心に引き締め圧力がみられ、相殺要因はより限定的だった。したがって同社は、最近の変化を、全面的な抑制的環境ではなく、主として金利上昇による相対的な引き締めと位置付けている。 数量面の証拠は異なる見方を示す。米国の銀行貸出の伸びは7月まで前年比7%強を維持し、ユーロ圏の貸出の伸びは約5%まで追いついた。企業金融も活発で、米国投資適格債の純発行額は8月に$90bnを超え、2020年に次ぐ8月として2番目に強い水準となり、欧州投資適格債の供給も増加した。J.P. Morganは、これらの貸出・発行指標を信用創造が引き続き支援的である証拠とみなす。 広義の流動性もこの結論を補強する。レポートは、米国M2の速報的な代理指標として、商業銀行預金と米国MMF運用資産の合計を用いる。この指標は2025年に$1.6tr増加し、2024年の$1.2tr、2023年5月から年末までの$1tr増加に続いた。8月19日までの年初来ペースは約$1trであり、季節調整後には2026年に$2trに近づく可能性があると述べる。ユーロ圏の代理指標であるECB M2とMMF運用資産の合計は、2024年に€0.6tr、2025年に€0.5tr増加した。7月までのデータを季節調整すると、2026年には€1trに近づく可能性がある。同社は、これらの数量ベース指標は融資以外のマネー創造、銀行による債券購入なども捉えると論じる。 2022年との比較は、価格指標のみでは景気収縮のシグナルを過大評価し得ることを説明するために用いられる。同局面では、価格ベース指標は深刻な引き締めを示唆した一方、マネーサプライ指標はより緩やかな減速を示し、その後のGDP成長率の軟化とより整合的だった。J.P. Morganはまた、非金融企業の純支払利息負担は、潤沢な現金残高が長期負債より早く再価格付けされたため、2022年中およびその後も上昇しなかったと指摘する。この前例は、良好な信用・マネー創造と企業の利払い負担が、足元の利回り上昇による成長への影響を抑えうるという見方を支える。 続いてレポートは、イラン情勢の再燃懸念と利回り上昇が大きな資産価格変動を生んだ後の市場流動性を評価する。現物10年US Treasuryの市場深度は最近数週間で急速に悪化し、2026年3月の安値に近づいた。対照的に、Hui-Heubelの市場の広がり指標では10年US Treasury先物に見かけ上の改善がみられたが、先物ロールに伴う建玉の増加がこのシグナルを歪めている可能性があると警告する。社債の流動性はほぼ変化がなく、LQDとHYG ETFの指標は、3月のイラン情勢局面や2025年4月の「Liberation Day」発表後よりも悪化が小さかった。 株式流動性はS&P 500 E-miniおよびEuro Stoxx 50 E-mini先物では比較的安定していたが、Nikkei 225 E-miniの深度は昨年4月以降、歴史的に低い水準付近にとどまり、市場の広がり指標でもNikkei先物は大幅に弱い。原油先物の流動性は、最初の3月の局面と異なり、イラン情勢再燃後にほとんど悪化しなかった。金、bitcoin、ethereum先物も最近の悪化は小さかったが、金とbitcoinの市場の広がりは低いままであった。J.P. Morganは、この薄い流動性が7月FOMC後のdebasement tradeの上昇とJackson Hole後の反転を増幅した可能性が高いと述べる。流動性に関する総括は、最近の悪化は主に現物Treasuriesに集中し、Nikkei、金、bitcoin先物は構造的に薄いままであるというものだ。 最後に、クロスアセット・ポジショニング指標は、投資家が株式・債券をなおロングとしているものの、極端な水準ではないことを示す。株式ポジショニングは1月に80%強でピークを付け、7月に約55%まで低下した後、70%となった。債券ポジショニングは年初の40%未満から7月初めに70%近くまで上昇した後、58%へ低下し、中立をやや上回る水準となった。同指標で最も大きいオーバーウェイトはEM equitiesと金を除くcommoditiesで、最大のアンダーウェイトはEM bonds/FXとcorporate creditだった。米国株セクターではEnergyとTechnologyが最もオーバーウェイト、StaplesとCommunication Servicesが最もアンダーウェイトだった。
分析フレームワーク
J.P. Morganはまず、価格ベースの金融環境指数を信用・マネー創造の数量指標と比較し、2022年の局面を歴史的な検証材料として用いる。次に、市場深度データと価格インパクト/回転率に基づく流動性指標を先物・ETF横断で検証し、先物ポジション、モメンタム、ファンド・ベータ、サーベイ、配分、空売り残高をクロスアセット・ポジショニング指標に集約する。
手法メモ
価格ベースと数量ベースの金融環境フレームワーク
レポートは、金利、利回り、スプレッド、株式、為替、融資基準と、貸出、債券発行、広義のマネー創造を対比し、金融環境が成長をどの程度支えるかを判断する。
Hui-Heubel流動性比率
この指標は5日間の価格変動を回転率と関連付ける。比率が高いほど市場流動性は低く、先物・ETF横断の市場の広がりを評価するために用いられる。
ポジショニングおよびベータ代理変数を用いたクロスアセット・ポジショニング指標
同指標は、先物ポジション、モメンタム・シグナル、投資信託・ヘッジファンドのベータ、リスクパリティ指標、サーベイ、配分、空売り残高を集約し、現在のポジショニングを歴史的パーセンタイルで示す。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- US Treasuries現物Treasury市場の深度は悪化した一方、先物の市場の広がりはロールに伴う建玉増加の影響を受けている可能性がある。
- 弱み
- 最近の現物市場の深度は2026年3月の安値に近づいた。
- 比較
- 社債ETFの流動性悪化ははるかに小さかった。
- リスク
- 現物市場の薄い深度は価格変動を増幅しうる。
- Nikkei 225 futures株価指数先物の中で、深度と市場の広がりの低さが持続する例外的な市場。
- 弱み
- 深度は昨年4月以降、歴史的に低い水準付近で推移している。
- 比較
- S&P 500およびEuro Stoxx 50 E-mini先物では、最近の悪化は小さかった。
- リスク
- 流動性が持続的に低い。
- Gold and bitcoin futures市場の広がりが持続的に低いdebasement trade関連商品。
- 弱み
- ここ数週間で新たな悪化は小さいにもかかわらず、流動性は低いままだった。
- 比較
- 原油先物では、イラン情勢の再燃後も流動性の悪化は小さかった。
- リスク
- 低流動性は、7月FOMC後の上昇とJackson Hole後の反転を増幅した可能性が高い。
主要データ
- Global Aggregate利回りJust over 4.1%直近1週間余りで約15bp上昇、年初来では約60bp上昇。
- 米国銀行貸出の伸びJust over 7% y/y最新データは7月まで。
- ユーロ圏銀行貸出の伸びAround 5% y/y最新データは7月まで。
- 米国投資適格債発行額Above $90bn8月の合計で、2020年に次ぐ8月として2番目に強い水準。
- 米国の広義流動性の増加$1.6tr in 2025; about $1tr year to date through 19 Augustレポートの季節調整済み推計では、2026年に$2trに近づく可能性がある。
- ユーロ圏の広義流動性の増加€0.5tr in 20257月までの季節調整済みデータは、2026年に€1trに近づく可能性を示す。
- 株式ポジショニング70th percentile1月には80%超でピークを付け、7月には約55%まで低下していた。
- 債券ポジショニング58th percentile7月初めの70%近くから低下し、中立をやや上回る水準。
影響と示唆
レポートは、貸出、社債発行、広義の流動性が堅調なままであれば、利回り上昇だけでは強く抑制的なマクロ環境を意味しないと論じる。また、現物Treasuriesの脆弱な取引深度と、Nikkei、金、bitcoin先物の持続的な薄い流動性は、広義の流動性が支援的でも市場変動を増幅しうると強調する。