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レポート解説Hilo Research

マクロ:米国成長の鈍化と政策乖離がドル安テーマを強化

野村はドルに対する中期的な弱気見通しを維持している。欧州と比べた米国データの弱さ、低インフレ、FRBの据え置き、長期金利への圧力、依然として高水準のドルロング・ポジションはいずれもドル安を促す可能性があるとみる。レポートではUSD/CNHショートの確信度を引き上げ、新たにUSD/TWDショートを開始した。

機関野村シンガポール社(NSL)
企業グローバルFX:ドル安テーマ
業界マクロ

要約

野村はドルに対する中期的な弱気見通しを維持している。欧州と比べた米国データの弱さ、低インフレ、FRBの据え置き、長期金利への圧力、依然として高水準のドルロング・ポジションはいずれもドル安を促す可能性があるとみる。レポートではUSD/CNHショートの確信度を引き上げ、新たにUSD/TWDショートを開始した。

ドルに弱気。USD/CNHショートの確信度は4/5で、新規に開始したUSD/TWDショートは確信度3/5、11月末までに31.0、約3%を目標とする。
ドル安グローバルFX米国経済の減速FRBの据え置き米国債長期金利FXポジショニングUSD/TWD
  • 米国の非農業部門雇用者数は2カ月連続で予想を下回り、7月は-23K、6月は+20Kへ下方改定された。
  • 野村は7月のコアPCEを前月比0.2%と予想しており、低インフレと弱い成長がFRBの据え置きを維持させる可能性がある。
  • 米財務省は10年から30年の国債買い戻しを少なくとも倍増する計画である。タームプレミアムの抑制は国債需要を弱め、ドルの重しとなる可能性がある。
  • CFTCおよびCTA指標は、市場が引き続き広範にドルロングであることを示しており、米国マクロのナラティブが悪化すれば大幅な手仕舞いリスクが残る。
  • USD/CNHショートの確信度は4/5で、その他の主要取引は3/5と評価されている。
  • 新たなUSD/TWDショートを開始し、11月末までに31.0、約3%を目標としている。

レポート解説

概要

本レポートは、ドル安トレンドが形成され続ける理由を論じている。野村は、米国の成長率とインフレの鈍化、相対的なデータ動向、中銀政策の乖離、長期金利の管理、FRBの独立性、市場ポジショニングを組み合わせ、ドルに対する中期的な弱気見通しを維持している。一方で、米国株への資金流入、エネルギー価格、キャリートレードは一時的にドルを支える可能性があると指摘している。

主要見解

野村は7月17日以降、ドルに対してより明確に弱気へ転じ、この方向のポジションを継続的に積み増している。当初の根拠には、米国インフレの低下、今後のインフレ指標が穏やかにとどまる可能性、FRBが金利を据え置くとの予想、ドルロング・ポジションの巻き戻しの可能性が含まれていた。レポートによると、7月29日米東部時間のFOMC後記者会見で発せられたハト派シグナルに加え、7月30日および31日に円を支援するための米日共同FX介入の可能性があったことが、その後ドルを大幅に押し下げた。しかし野村は、これがテーマの終わりではなく、ドル安論のさらなる拡大であると考えている。 第1の強化要因は、米国経済減速に対する市場の懸念の高まりである。非農業部門雇用者数は2カ月連続で予想を下回り、直近の7月は-23K、6月は+20Kへ下方改定された。8月14日に発表された7月小売売上高も消費需要の縮小を示した。第2の要因は、米国と他の主要経済圏の間で経済データのサプライズ格差が拡大していることであり、直近では欧州のデータが米国対比で上振れサプライズを多く示している。レポートは2025年初頭を歴史的な参照点としている。当時、米国のサーベイデータは著しく鈍化し、アトランタ連銀のGDPNow推計は一時、2025年第1四半期の成長率を-2.8%と見込んだ。また、ドル指数は2025年3月に3%超下落した。したがって野村は、ドルの方向性を説明する上では米国データ単独ではなく、相対的な経済データが重要な説明力を持つと考えている。 第3の要因は、低インフレと弱い成長が相まってFRBの据え置き期間を延長する可能性があることだ。野村の米国経済チームは、8月26日に発表予定の7月コアPCEが前月比0.2%と穏やかな水準にとどまると予想している。8月コアCPIは9月11日に発表され、家賃関連および関税関連の項目の鈍化が、電子機器および消費者向け電子機器価格の上昇圧力を相殺する可能性がある。レポートはまた、9月30日の一部コアPCE項目に対する方法論的調整と季節要因が、さらなる下振れインフレリスクを生み得ると指摘する。インフレが穏やかにとどまり、経済データが弱まれば、利上げに対する市場の織り込みを維持することはより困難となり、ドルへの金利面からの支援が低下する。 第4の要因は、米国が長期金利の上昇を抑制しようとしていることである。米財務省は10年から30年の国債に対する買い戻しオペを少なくとも倍増すると発表し、長期金利上昇への感応度が高まっていることを示した。市場は10年債利回りが心理的に重要な5%の閾値を突破する可能性に注目している。非線形的な上昇は住宅や株式などの米国資産を損なう可能性があるためだ。しかしレポートは、長期ゾーンのタームプレミアムを抑制することは国債需要を低下させ、結果的にドルの重しになる可能性もあると主張する。政策当局が引き続き金利上昇を阻止する場合、次の措置として長期債入札規模の縮小、一部入札の取り消し、さらには人工知能企業の急増する債務発行により生じた「クラウディングアウト」問題への対処も考えられる。 第5の要因は、FRBの信認と独立性に対する懸念である。インフレ低下と一部経済データの弱さは、7月にFRBが金利を据え置いた決定により生じた信認論争を和らげる可能性があるが、レポートは独立性リスクがむしろ高まったとみる。その証拠として、トランプ大統領がワーシュに繰り返し電話したとの報道や、パウエルおよびクックの解任に向けた取り組みの再開を挙げている。これに対するリスクとして、FRB議長のワーシュが政策信認を再構築するため、8月27日から29日のジャクソンホール会議でよりタカ派的な姿勢を取る可能性、あるいは7月FOMC後に示された、市場金利の上昇がFRBの引き締め必要性を減らし得るとの示唆を撤回する可能性がある。 第6の要因は、市場が依然として広範にドルロングであることだ。米日共同FX介入後、一部のドルロング・ポジションは解消されたが、これは主にUSD/JPYに集中していた。野村のCFTC非商業部門ネットポジショニング指標とCTA分析は、市場が概してドルロング、ユーロやニュージーランドドルなどの通貨をショートにしていることを引き続き示している。米国マクロ悪化のナラティブがさらに強まる、または米財務省と政府が米国金利をさらに抑制する場合、これらの過密なロングポジションは引き続き巻き戻され、ドル下落を増幅する可能性がある。 レポートはドルを一時的に支え得る複数の要因も維持している。海外資本は引き続き米国株に強く流入しており、その水準は「米国例外主義」のナラティブが優勢だった2024年の水準に近い。世界のエネルギー価格は高止まりし、ホルムズ海峡は大部分が閉鎖され、米国は近くイランに対して重要な行動を取る可能性がある。また、米日共同介入後の8月初旬以降、一部のFXキャリートレードも再構築されている。これらの要因はドル下落を遅らせる可能性があり、野村は引き続き監視するとしているが、中期見通しを変えるには至っていない。 中期的に野村はドルに弱気である。経済チームは、米国の成長が他の主要経済圏に対して鈍化している兆候が現れていると考えている。同時に、ECBや日銀を含む他の主要中銀が利上げを継続する一方、FRBは金利を据え置く可能性がある。今後12~24カ月において、一部の大手機関投資家は米国資産への配分をなお削減する可能性があり、TICデータにおける最近の海外投資家による米国債購入の減少は、その裏付けとみなされている。海外投資家は依然として多額の米国資産を保有しており、米国の成長優位性が低下する、または市場が人工知能関連の設備投資や債務拡大を再び懸念するようになれば、現在の強いポートフォリオ流入を維持することは難しくなる可能性がある。ドルの下落モメンタムが強まれば、海外投資家は2025年第2四半期と同様にドル売りを伴うFXヘッジを増やし、さらなる圧力を生み出す可能性もある。 取引レベルでは、野村は7月17日以降USD/CNHショートの確信度を4/5へ引き上げ、USD/THBショートを設定し、EUR/INRロングを維持しており、後者2つの確信度はいずれも3/5である。また、確信度3/5のGBP/NZDショートも維持しており、レポートではこれもドル安から恩恵を受ける可能性があると考えている。ドルの下振れリスク、改善するテクノロジーセクターのセンチメント、海外投資家による株式流入の再開、そしてFXヘッジを増やす余地が残る台湾生命保険会社の現在低いヘッジ比率を踏まえ、野村は確信度3/5の新たなUSD/TWDショートを開始し、11月末までに31.0、約3%を目標としている。

分析フレームワーク

レポートはまず、7月17日以降のドル弱気見通しの形成と、月末の政策イベントによる初期的な検証を振り返る。次に、米国の成長、経済圏間のデータサプライズ格差、インフレと金融政策、長期金利管理、FRBの独立性、市場ポジショニングを順に検討する。その後、株式フロー、エネルギー価格、キャリートレードを通じて相殺要因を検証し、中期マクロ見通しを特定の通貨ペア、確信度水準、USD/TWD目標へ落とし込んでいる。

手法メモ

  • マクロ経済フレームワークその他

    経済圏間の経済データサプライズ格差の比較

    レポートは、米国、欧州、その他経済圏における予想対比のデータ推移を比較し、これを米国成長期待の低下および2025年のドル指数の同時的な動きと組み合わせ、相対的な成長変化がドルの方向にどう影響するかを評価している。

  • イベント戦略および行動ファイナンスイベントドリブン分析

    政策および介入イベント分析

    レポートは、FOMCコミュニケーション、米日共同FX介入、米財務省の買い戻しオペ、ジャクソンホールでの発言などのイベントが、金利予想、政策信認、FX需要をどのように変化させるかを評価している。

  • イベント戦略および行動ファイナンス資金フロー/ポジショニング分析

    CFTC、CTA、ポートフォリオフローおよびFXヘッジ分析

    レポートは、CFTC非商業部門ネットポジショニング、CTA指標、海外株式・国債フロー、機関投資家のヘッジ行動を用い、ドルロング・ポジションが過密かを判断し、潜在的な手仕舞い圧力を評価している。

  • 債券およびクレジット分析イールドカーブ分析

    米国債長期金利およびタームプレミアム分析

    レポートは、10年債利回りの5%閾値、10年から30年の米国債買い戻し、入札調整の可能性を検討し、長期金利の抑制が国債需要とドルにどう影響し得るかを分析している。

  • マクロ経済フレームワークその他

    主要中央銀行間の政策乖離

    レポートは、FRBが金利を据え置く一方で、ECB、日銀、その他主要中銀が利上げを継続する相対的な政策経路を用い、ドルの金利優位性が縮小する可能性があるという中期的な論拠を説明している。

資産マッピングと比較

投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。

  • 米ドル(USD)
    レポートの中核的な調査対象であり、中期見通しは弱い。
    強み
    米国株への強い海外資金流入、エネルギー価格の高止まり、キャリートレードの再構築が支援材料となる可能性がある。
    弱み
    米国の成長とインフレの鈍化、劣後する相対データ、縮小する政策金利優位性、長期金利への圧力、過密なロングポジショニング。
    比較
    最近の米国経済データは欧州データと比べて相対的に弱い。
    リスク
    FRBの再度のタカ派転換、または米国資産への強い資金流入の持続がドル下落を遅らせる可能性がある。
  • USD/CNH
    野村はショートポジションを維持し、7月17日以降に確信度を引き上げている。
    強み
    ドルショート見通しを表現する主要な高確信度の取引。
    比較
    確信度は4/5で、レポート記載の取引の中で最も高い。
    リスク
    株式フロー、エネルギー、キャリートレードによるドル支援が不利なボラティリティを引き起こす可能性がある。
  • USD/THB
    野村はドル安見通しを表現するためショートポジションを設定している。
    比較
    確信度は3/5。
  • EUR/INR
    野村はロングポジションを維持している。
    比較
    確信度は3/5。
  • GBP/NZD
    野村はショートポジションを維持しており、ドル安から恩恵を受ける可能性があると考えている。
    比較
    確信度は3/5。
  • USD/TWD
    野村はドル安見通しおよび台湾関連のフロー・ヘッジ論を表現するため、新たなショートポジションを開始した。
    強み
    改善するテクノロジーセクターのセンチメント、海外投資家による株式流入の再開、ヘッジを増やす余地のある台湾生命保険会社の低いヘッジ比率。
    比較
    確信度は3/5で、11月末までに31.0、約3%を目標とする。
    リスク
    ドルが再び強くなる、または台湾生命保険会社がFXヘッジを増やさない場合、取引仮説が弱まる可能性がある。

主要データ

  • 7月の米国非農業部門雇用者数-23K2カ月連続で予想を下回る
  • 下方改定された6月の米国非農業部門雇用者数+20K下方改定
  • 2025年第1四半期に対するアトランタ連銀GDPNow推計-2.8%レポートは2025年初頭の米国成長期待の著しい悪化を示すために使用
  • 2025年3月のドル下落3%超米国の相対的な経済データ悪化と同時に発生
  • 7月コアPCE予想前月比0.2%丸めベース、8月26日発表予定
  • 8月コアCPI発表日9月11日家賃および関税関連項目の鈍化が消費者向け電子機器価格の上昇を相殺する可能性
  • 一部コアPCE項目の方法論的調整日9月30日方法論の変更と季節性によりインフレ下振れリスクが高まる可能性
  • 米国の長期国債買い戻し計画少なくとも倍増10年から30年の米国債を対象
  • 10年米国債の重要な心理的利回り5%レポートは、突破すれば非線形的な上昇につながり、米国資産を損なう可能性があると考える
  • 米国資産配分を減らす可能性のある期間今後12~24カ月一部の大手機関投資家が米国資産への配分を減らす可能性
  • USD/CNHショートの確信度4/57月17日以降に引き上げ
  • USD/THBショートの確信度3/5ポジション設定済み
  • EUR/INRロングの確信度3/5維持
  • GBP/NZDショートの確信度3/5維持
  • USD/TWDショートの確信度および目標3/5;約3%または31.0新規取引、11月末を目標

影響と示唆

レポートは、米国の相対的な成長、インフレ、政策金利面の優位性が弱まることで、ドル保有の魅力が低下すると考えている。財務省が長期金利を抑制し、ドルロング・ポジションの巻き戻しが続く、または海外投資家が米国資産への配分を減らしてFXヘッジを増やす場合、ドル下落は加速する可能性がある。したがって野村はマクロ見通しを複数のドルショートおよび関連クロス通貨取引に落とし込む一方、強い米国株流入、エネルギー価格、キャリー需要が一時的な反転を引き起こす可能性を認めている。

リスク

  • 米国株への海外資金流入が持続的に強ければ、ドルを引き続き支える可能性がある。
  • 世界のエネルギー価格の高止まり、ホルムズ海峡の広範な閉鎖、米国によるイランへの重要な行動の可能性はドルに有利に働く可能性がある。
  • FXキャリートレードの再構築によりドル需要が増加する可能性がある。
  • ワーシュがFRBの信認を回復するためジャクソンホールでタカ派的な姿勢を取れば、ドル安の一部が反転する可能性がある。
  • 消費者向け電子機器価格の上昇により、米国コアインフレがレポートで強調される穏やかな経路を上回る可能性がある。

注目点

  • 8月26日発表の7月コアPCEが前月比0.2%の穏やかな水準にとどまるかを注視する。
  • 8月27日から29日に開催されるジャクソンホール会議でのFRBの政策コミュニケーションを注視する。
  • 9月11日発表の8月コアCPIと、その家賃、関税、消費者向け電子機器の構成要素を注視する。
  • 9月30日の一部コアPCE項目に対する方法論的調整と季節性の影響を注視する。
  • 欧州およびその他経済圏に対する米国の成長、非農業部門雇用者数、消費データを注視する。
  • 米国の株式・国債フロー、CFTCおよびCTAのドルポジショニング、海外投資家のドルヘッジ変化を注視する。
  • 米財務省による長期国債買い戻し、入札規模、および10年債利回り5%閾値へのその後の対応を注視する。
  • エネルギー価格、ホルムズ海峡の情勢、米国の対イラン行動、FXキャリートレードの回復を注視する。

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