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レポート解説Hilo Research

世界のバッテリー・サプライチェーン:韓国LFP正極材の現地化は加速するが、資金、コスト、中国上流供給への依存が投資魅力を制約

韓国のバッテリーメーカーは、AIDC主導のエネルギー貯蔵需要を取り込むため、北米のNCM車載バッテリー能力の一部をLFPに転換しているが、UBSは韓国の正極材メーカーに対する全体的なネガティブ見通しを維持している。

機関UBS
日付2026-08-07
業界世界のバッテリー・サプライチェーン

要約

韓国のバッテリーメーカーは、AIDC主導のエネルギー貯蔵需要を取り込むため、北米のNCM車載バッテリー能力の一部をLFPに転換しているが、UBSは韓国の正極材メーカーに対する全体的なネガティブ見通しを維持している。

業界見通しは弱気であり、本レポートでは単一企業についてのレーティング、目標株価、現在株価は提示されていない。
LFPバッテリー韓国の正極材北米のエネルギー貯蔵AIDCBESS米国の生産税額控除サプライチェーンのリスク低減NCM能力の供給過剰
  • Posco Future Mは、韓国のバッテリーメーカーと2027~2030年に19万トンのLFP正極材を供給する契約を締結したと報じられており、これは約86GWhのバッテリー容量に相当する。
  • UBSは、2027~2030年におけるLGESとSamsung SDIのLFPバッテリー累計生産量を約430GWhと推定する一方、韓国の正極材メーカーが支援する現時点で特定可能な契約は合計約135GWhとしている。
  • 米国の生産税額控除規則では、バッテリー生産における中国由来コンテンツの上限を2027年の35%から2030年の15%へ引き下げることが求められており、韓国のセルメーカーは国内の正極材メーカーと直接契約を締結する方向に進んでいる。
  • 韓国のLFP正極材能力はなお立ち上げ段階にあり、中国供給に対して価格プレミアムが生じると見込まれ、リン酸鉄の原材料についてはなお中国に依存する可能性がある。
  • LFPの需要見通しは改善しているものの、韓国の正極材メーカーはNCM事業の供給過剰、逼迫したバランスシート、能力拡張のための資金調達圧力、米国政策への依存という制約を依然として受けている。

レポート解説

概要

本レポートは、韓国のLFP正極材サプライチェーンの構築加速に焦点を当てている。AIDC主導のデータセンター電力需要が北米のBESSを上昇局面へ押し上げ、韓国のバッテリーメーカーは既存のNCM車載バッテリー能力の一部をLFP能力へ転換している。同時に、米国の税額控除とサプライチェーン制限により、韓国のセルメーカーは中国の正極材への直接依存を減らし、韓国内のサプライヤーへ転換するよう促されている。

主要見解

韓国のLFPサプライチェーンでは受注と能力増強が加速しており、Posco Future Mの新たな長期契約はこのトレンドを示す最新の証拠とみられている。需要面では北米のエネルギー貯蔵拡大がこのトレンドを支え、政策面では米国の生産税額控除における中国由来コンテンツの制限が牽引している。しかし、現地化は完全な脱中国サプライチェーンを意味しない。韓国のLFP正極材能力はまだ成熟しておらず、コストは中国供給より高くなる可能性があり、上流のリン酸鉄はなお中国に依存する可能性がある。このためUBSは、LFP事業からの増分寄与は、韓国の正極材メーカーが抱えるNCM供給過剰、財務圧力、政策依存という構造的問題を相殺するにはまだ不十分と考えている。

分析フレームワーク

本レポートは、受注および能力のマッピング、最終需要の評価、米国の政策制約の分析、サプライチェーン全体のトレーサビリティを組み合わせている。韓国のセルメーカーが見込むLFP生産量を特定済みの正極材契約と比較し、正極材からリン酸鉄原材料までの現地化、コスト、実行リスクを評価している。

手法メモ

  • 需給分析受注・能力マッピング

    LFP正極材契約のトン数を対応するバッテリー容量に換算し、セルメーカーの予想生産量と比較する。

    本レポートは、Posco Future Mの19万トン契約を約86GWhに換算し、特定済みの正極材契約約135GWhを、LGESおよびSamsung SDIの推定LFP累計生産量約430GWhと比較している。

  • 政策分析生産税額控除およびサプライチェーン制限の分析

    米国の税制優遇措置の適格性が、バッテリー材料の調達およびサプライヤー選定に与える影響を評価する。

    米国の規則では、バッテリー生産における中国由来コンテンツの上限を2027年の35%から2030年の15%へ段階的に引き下げることが求められており、韓国のセルメーカーは、FEOC分類を回避するために設計された海外中国供給ソリューションから、韓国内の正極材メーカーへ移行するよう促されている。

  • サプライチェーン分析サプライチェーン全体の現地化リスク評価

    正極材からリン酸鉄などの原材料へさらに上流を追跡し、サプライチェーンの脱中国化の完全性を検証する。

    LFP正極材が韓国で生産されても、その上流のリン酸鉄は中国から供給される可能性があるため、サプライチェーン全体はなお中国依存を抱える可能性がある。Sundeep Advanced MaterialsなどがLFP前駆体分野に参入することは、このギャップを埋める一助となる可能性がある。

  • ファンダメンタル分析事業構成およびバランスシート評価

    既存事業の需給状況、財務余力、新規能力向け資金需要を組み合わせて、企業の受益可能性を評価する。

    韓国の正極材メーカーの事業構成は依然として供給過剰のNCMに集中しており、逼迫したバランスシートがLFP能力拡張への資金拠出能力を制限し、受注増加によるプラスの影響を弱める可能性がある。

資産マッピングと比較

投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。

  • Posco Future M
    韓国のLFP正極材サプライヤーであり、新たな長期契約の締結当事者
    強み
    2027~2030年に19万トン、約86GWh相当のLFP正極材供給契約を確保しており、韓国セルメーカーによる国内調達の恩恵を受けると見込まれる。
    弱み
    LFP能力はなお拡張段階にあり、コストは中国供給より高くなる可能性がある。
    比較
    海外の中国サプライヤーと比べ、韓国内生産は米国のサプライチェーン規則への適合により有利だが、コスト競争力は弱い可能性がある。
    リスク
    能力拡張の実行、資金調達圧力、顧客集中、米国政策の変更、中国産リン酸鉄原材料への依存。
  • LGES
    韓国の主要LFPバッテリー生産者となる可能性
    強み
    既存の北米能力を活用してAIDC主導のBESS需要を取り込み、国内正極材調達を通じて政策遵守リスクを低減できる。
    弱み
    NCMからLFPへの転換には生産ラインの調整が伴い、規制適合サプライチェーンの材料コストは高くなる可能性がある。
    比較
    中国材料に依存する供給ソリューションと比べ、韓国内調達は米国の税額控除要件により適合している。
    リスク
    エネルギー貯蔵需要の期待未達、能力転換の遅延、サプライチェーンコストの上昇、政策規則の変更。
  • Samsung SDI
    韓国の主要LFPバッテリー生産者となる可能性
    強み
    北米のエネルギー貯蔵用バッテリー需要の成長に参加し、韓国内の材料契約締結によりサプライチェーンの適合性を改善すると見込まれる。
    弱み
    LFPの規模拡大の進捗およびコスト競争力は、引き続き検証が必要である。
    比較
    韓国内供給は政策面での適合性が高いが、中国の成熟したLFPサプライチェーンに比べて価格プレミアムに直面する可能性がある。
    リスク
    能力拡張および顧客立ち上げの進捗、コスト圧力、政策依存、上流原材料調達リスク。
  • 韓国の正極材メーカー
    米国のサプライチェーン・リスク低減トレンドにおける直接的な潜在的受益者
    強み
    地理的および政策遵守上の優位性を持ち、韓国セルメーカーの国内LFP調達需要を取り込むことができる。
    弱み
    事業は依然として供給過剰のNCMに集中しており、バランスシートには圧力がかかり、LFP拡張のための資金調達能力は限定的である。
    比較
    政策遵守上の優位性は中国サプライヤーより強いが、規模、成熟度、コスト競争力は中国のLFP産業チェーンより劣る。
    リスク
    NCMの価格・収益性圧力、LFP拡張のための資本需要、価格プレミアムによる受注競争力の低下、米国政策の変更。
  • 中国のLFPサプライチェーン
    韓国の現地化サプライチェーンにとってのコストベンチマーク、競合相手、上流原材料供給源
    強み
    成熟した産業チェーン、大規模な生産規模、強いコスト競争力。
    弱み
    米国の生産税額控除およびFEOC関連規則の下で、コンプライアンス上の制限に直面している。
    比較
    コストと供給の成熟度では韓国供給を上回るが、米国関連のバッテリー・サプライチェーンへ参入するための政策上の余地は引き続き狭まっている。
    リスク
    米国の調達規則、関税、輸出規制、顧客のリスク低減行動。

主要データ

  • Posco Future Mの供給契約2027年から2030年にかけて19万トンのLFP正極材を供給韓国のバッテリーメーカーを相手先とする、約86GWhのバッテリー容量に相当する契約。
  • 主要韓国バッテリーメーカーのLFP生産約430GWh2027年から2030年におけるLGESおよびSamsung SDIのLFPバッテリー累計生産量に関するUBSの推定。
  • 特定済みの韓国LFP正極材支援契約約135GWh上記推定生産量約430GWhの約31%に相当する。この比率はレポートのデータに基づいて算出されている。
  • 米国規則における中国由来コンテンツの上限2027年35%、2030年15%米国の生産税額控除の適格性を得るために必要なサプライチェーン制限。

影響と示唆

AIDC主導の北米エネルギー貯蔵拡大は、韓国のバッテリーおよびLFP正極材サプライチェーンに増分需要をもたらし、既存のNCM車載バッテリー生産ラインのLFPへの転換を加速させる可能性がある。韓国の正極材メーカーは国内代替の受注を獲得すると見込まれるが、受注の履行は依然として能力拡張の資金調達、コスト管理、上流原材料の現地化に依存する。韓国供給には価格プレミアムが生じる可能性があり、サプライチェーンはまだ中国原材料から完全に脱却していないため、業界マージンと政策遵守には不確実性が残る。短期的な需要追い風は、韓国の正極材メーカーに対するUBSの全体的な慎重見通しを覆すには不十分である。

リスク

  • バッテリーの安全事故は業界需要を損ない、リコール発生時には個別企業に重大な影響を与える可能性がある。
  • バッテリーの収益性と市場シェアは、関税、原産地規則、税額控除、輸出規制などの政府政策に非常に敏感である。
  • 韓国の正極材メーカーのNCM事業は供給過剰に直面しており、価格とマージンへの圧力が継続する可能性がある。
  • 逼迫したバランスシートにより、LFP能力拡張に向けた資金調達が不十分となる、またはプロジェクトが遅延する可能性がある。
  • 韓国のLFP正極材には中国供給に対する価格プレミアムが生じ、商業競争力が弱まる可能性がある。
  • 韓国のサプライチェーンはなお中国産リン酸鉄原材料に依存する可能性があり、完全な脱中国化には実行上のギャップが残る。
  • AIDCおよびBESS需要が期待を下回れば、能力転換のペースおよび新規契約の履行が鈍化する可能性がある。

注目点

  • Posco Future Mの長期契約における顧客の特定、価格設定、能力増強、実際の納入進捗。
  • 2027年から2030年にかけてのLGESおよびSamsung SDIのLFP能力転換、顧客受注、生産実現。
  • 推定需要約430GWhと、現時点で特定済みの正極材支援契約約135GWhとのギャップを埋める後続契約の締結。
  • 中国由来コンテンツの比率、FEOC分類、生産税額控除、関税、輸出規制に関する米国の政策変更。
  • 中国供給に対する韓国LFP正極材の価格プレミアムと、バッテリーマージンへの影響。
  • 韓国のリン酸鉄およびLFP前駆体プロジェクトの進捗。Sundeep Advanced Materialsなどの新規参入者が中国原材料への依存を低減できるかを含む。
  • 韓国の正極材メーカーにおける設備投資、資金調達能力、レバレッジ水準、ならびにNCM在庫および需給状況の改善。
  • 北米のデータセンター建設、電力需要、BESSプロジェクト受注が、いわゆるエネルギー貯蔵スーパーサイクルを引き続き支えられるか。

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