欧州株式戦略:欧州が効率性からレジリエンスへ移行することで生じる複数年の設備投資機会に注目し、ポジティブな株式市場見通しを維持
JPMorganは、利益、市場の裾野の改善、政策主導の投資が株式市場のさらなる最高値更新を支えると予想しており、景気循環株に加え、送電網、電気機器、半導体製造装置、インフラ、近代化された防衛という欧州テーマを選好している。
要約
JPMorganは、利益、市場の裾野の改善、政策主導の投資が株式市場のさらなる最高値更新を支えると予想しており、景気循環株に加え、送電網、電気機器、半導体製造装置、インフラ、近代化された防衛という欧州テーマを選好している。
- 株価指数は、企業利益およびまだ極端ではない投資家ポジショニングに支えられ、2026年末までにさらなる高値に達すると見込まれる。
- 欧州は効率性と規模の優先から、安全保障、レジリエンス、戦略的自律性へ移行しており、エネルギー、防衛、産業、デジタルインフラにまたがる長期的な設備投資サイクルを生み出している。
- 資本財、電気機器・ケーブル、規制下の公益事業、建設資材、鉄鋼、半導体製造装置が恩恵分野として選好される。
- ドイツの5,000億ユーロのインフラ・気候基金および財政拡張は、資本財、建設資材、建設関連セクターの利益に段階的に反映されると見込まれる。
- 防衛セクターはバリュエーション調整後にリスク・リターンが改善したが、投資家は従来型の重装備プラットフォームではなく、ドローン、電子戦、弾薬補充、宇宙などの新たな能力を選別すべきである。
レポート解説
概要
本レポートは株式市場に対するポジティブなスタンスを維持し、成長とインフレのトレードオフがリスク資産にとって有利な状態を保つと予想している。企業利益、市場の裾野の改善、景気循環セクター主導により、年末までに株価指数はさらなる史上最高値を更新するとみている。欧州はテーマ別配分の焦点である。地政学、エネルギー依存、サプライチェーン競争、政策優先順位の変化により、欧州は効率性と規模から安全保障、レジリエンス、戦略的自律性へと移行している。
主要見解
欧州の長期的な投資ギャップが中核的な投資フレームワークである。複数年予算、共同調達、規制、産業政策が、防衛、エネルギーシステム、電力網、産業能力、デジタルインフラ、重要サプライチェーンにおける設備投資を支援し、通常の景気循環を超えて継続する可能性がある。レポートは、電気機器、ケーブル、規制下の公益事業、建設資材、鉄鋼を含む物理的インフラを中心とした受益者を選好する。また、半導体製造装置、産業オートメーション、欧州の戦略的テクノロジー能力も選好する。
分析フレームワーク
本分析では、マクロの成長・インフレの組み合わせ、利益予想、市場の裾野、相対パフォーマンス、バリュエーション、政策実施の進捗を組み合わせ、欧州の政策支援を受ける設備投資サイクル全体の受益者を特定する。高ベータの直接的受益者と低ベータの代替的な配分を区別している。
手法メモ
成長およびインフレ環境がリスク資産に与える影響
レポートは、現在の成長・インフレの組み合わせが引き続き株式を支援し、利益の伸びが主な追い風になると考えている。
長期的な投資不足後の投資ギャップ解消と近代化への資金供給
欧州は防衛、電力網、産業能力への投資が長年不足してきた。政策コミットメントはこうしたギャップの解消を目指しており、設備投資サイクルは複数年にわたり継続する可能性がある。
市場上昇への参加の広がり、および景気循環セクターとディフェンシブセクターの相対パフォーマンス
市場の裾野は低水準から回復しており、景気循環株は引き続きディフェンシブ株を上回っている。これは上昇相場の持続性を評価するために用いられる。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- 欧州株式中核的な配分資産
- 強み
- 利益予想の改善、市場参加の拡大、政策に支えられた設備投資、金融環境の緩和期待。
- 弱み
- 政策から実際の支出まで、また支出から企業利益の実現まで、タイムラグが生じる可能性がある。
- 比較
- 米国と比べ、欧州には防衛、電力網、産業能力における投資ギャップがより大きく、キャッチアップの可能性がより明確である。
- リスク
- 地政学的ショック、政策実施の遅延、経済成長の鈍化、バリュエーションの変動。
- 資本財、電気機器、ケーブルエネルギー安全保障、送電網改修、産業投資の直接的な受益者
- 強み
- 送電・配電網の改修および電化需要は、今後10年間にわたる安定した需要基盤を提供する。
- 弱み
- プロジェクト承認、投資進捗、サプライチェーン制約に敏感。
- 比較
- 個別の再生可能エネルギー発電セグメントと比べ、電気機器とケーブルは電力網の設備投資により直接的なエクスポージャーを提供する。
- リスク
- 規制上の収益率の変更、プロジェクト遅延、原材料コストの変動。
- 規制下の公益事業送電網投資に参加する低ベータの手段
- 強み
- ネットワーク資産を保有し、送電・配電の改修から恩恵を受けることができる。
- 弱み
- 成長への感応度は通常、機器サプライヤーより低い。
- 比較
- 資本財企業と比べ、ボラティリティは低いが、上昇余地に対する感応度は相対的に限定的である。
- リスク
- 規制政策、資金調達コスト、許容収益率の変更。
- 半導体製造装置およびテクノロジーハードウェア戦略的テクノロジーおよびAI設備投資の受益者
- 強み
- 欧州は半導体製造装置、産業オートメーション、パワーエレクトロニクスで競争優位を有し、ファンダメンタルズは比較的底堅い。
- 弱み
- 世界の半導体サイクルと外需に敏感。
- 比較
- 米国のプラットフォームおよびクラウドコンピューティングのモデルと比べ、欧州のエクスポージャーは上流と産業用途により集中している。
- リスク
- AI投資の鈍化、貿易制限、供給増加、バリュエーションの変動。
- 近代化された防衛能力防衛予算および共同調達の選択的受益者
- 強み
- ドローン、電子戦、弾薬補充、ミサイル、防空、宇宙を含む新たな能力は、政策需要に支えられている。
- 弱み
- 従来型の重装備プラットフォームは相対的に魅力が低い。
- 比較
- レポートは、防衛セクター全体や従来型プラットフォームを幅広く追うのではなく、近代化された能力を選別することを推奨している。
- リスク
- 予算・調達の実行が期待に届かないこと、混雑取引の再来、地政学的変化。
- 建設資材および鉄鋼ドイツおよび欧州のインフラ再建の受益者
- 強み
- 輸送、橋梁、住宅改修、産業高度化が需要を牽引する。
- 弱み
- マクロサイクル、エネルギー価格、原材料コストに敏感。
- 比較
- これらは物理的インフラのレベルで共通する受益セクターである。
- リスク
- プロジェクト実施の遅延、最終需要の弱さ、貿易保護政策の変更。
主要データ
- MSCI AC Worldの年初来トータルリターン約14%レポートでは、世界の株式市場は歴史的高値近辺にあるとしている。
- 欧州景気循環株の対ディフェンシブ年初来パフォーマンス約10%上回る米国の景気循環株は約12%上回っている。
- ユーロ圏EPS成長率予想2026年に18%、2027年に12%欧州株価指数についてポジティブな見通しを継続する主要な利益面の根拠。
- ドイツの構造的基礎的財政赤字予想2025年はGDP比-0.6%、2026年は-2.2%、2027年は-2.6%2年間でGDP比約2%の財政緩和に相当する。
- ドイツのインフラ・気候基金€500bnレポートはこのコミットメントを本物とみており、主な論点は実行と計画のタイミングである。
- ドイツの特別基金による潜在GDP押し上げ効果約0.5%財務省の推計に基づく。
影響と示唆
配分において、レポートは欧州の政策テーマを短期サイクルの取引ではなく、複数年の機会として捉えることを推奨している。送電網機器、ケーブル、電気資本財は、エネルギー安全保障および電化投資の最も直接的な受益者である。規制下の公益事業は、より低ベータで参加できる手段を提供する。ドイツの財政拡張は、輸送、デジタルインフラ、電力網、産業の高度化、建物改修のバリューチェーンを支援する。戦略的テクノロジーでは、欧州は米国のプラットフォームAI投資モデルを複製するよりも、半導体製造装置、産業オートメーション、センサー、パワーエレクトロニクス、通信インフラを通じてより有利な位置にある。
リスク
- 欧州の財政・産業政策に関する承認、計画、実際の支出は、市場予想を大幅に下回るペースとなる可能性がある。
- 地政学的緊張の激化、エネルギー価格の変動、または世界的な貿易摩擦は、リスク選好と企業利益を弱める可能性がある。
- 景気循環セクターはすでに強い相対パフォーマンスを示しており、成長期待が低下すればローテーションが反転する可能性がある。
- AI設備投資、半導体需要、または電力網プロジェクト投資が期待を下回れば、関連テーマの利益に影響する。
- 防衛テーマはバリュエーション調整を経験したものの、調達ペース、予算執行、セクターの混雑は依然としてボラティリティを生む可能性がある。
注目点
- ユーロ圏および欧州企業の利益予想修正、市場の裾野、景気循環株の相対的強さ。
- ドイツの5,000億ユーロ基金についての計画、支出、受注、実際の支出進捗。
- 欧州の電力網投資、送電・配電プロジェクト、再生可能エネルギーの系統接続、原子力政策の変更。
- NATOの防衛支出コミットメント、EUの共同調達、弾薬補充契約の進捗。
- AIおよびデータセンター主導の電力需要、半導体製造装置の受注、メモリーの需給状況。
- ユーロ圏の製造業PMI、経済サプライズ指数、金融環境の変化。