中国ITサービス・ソフトウェアセクター:Morgan Stanleyは中国ソフトウェア株の大幅下落後、選別的な売られ過ぎの機会を探る
本レポートは、AIコーディングエージェントがソフトウェア企業の効率を高める一方で労働集約的なITサービスを破壊すると考えており、現在は売上成長が加速しバリュエーションの安全余地を持つKingdee、Meitu、Beisenを選好している。
要約
本レポートは、AIコーディングエージェントがソフトウェア企業の効率を高める一方で労働集約的なITサービスを破壊すると考えており、現在は売上成長が加速しバリュエーションの安全余地を持つKingdee、Meitu、Beisenを選好している。
- Kingdeeは、売上成長率が10%台半ばに近づき、バリュエーションが2027年予想EV/FCF約15倍まで低下したことを受けてOverweightへ格上げされた。目標株価はHK$11.30。
- AIコーディングエージェントは1H26における業界最大の変化と見なされている。ソフトウェア企業の研究開発効率を向上させる一方、低付加価値で労働集約的なITサービス事業を侵食する。
- Kingsoft Officeは2C回復とWPS 365の成長の恩恵を受けるが、2027年予想EV/FCF約36倍、PER43倍は割高と判断され、Underweightを維持する。
- Yonyouは、マクロ感応度、市場シェア喪失、および利益予想の大幅な下方修正が重しとなり、Underweightを維持する。目標株価はRmb5.40。
レポート解説
概要
本レポートはグレーター・チャイナのITサービス・ソフトウェアセクターを対象とする。中核的な問いは、AIによる破壊、マクロ逆風、バリュエーション圧縮後に、どの企業が利益の可視性とバリュエーションの安全余地を確保したかである。Morgan Stanleyは、セクターローテーションの中で売上成長が加速し、大幅な株価下落を経験したKingdee、Meitu、Beisenなどに投資家は注目すべきと考えている。
主要見解
ソフトウェア企業は、短期的にはAIの製品化と研究開発効率の改善から引き続き恩恵を受ける可能性があり、既存のリーダー企業はエンタープライズおよびコンシューマー向けAI導入の入口となり得る。一方、AIがSaaSのターミナルバリューを侵食するかどうかは未解決である。このため投資家は、持続的な利益実現とバリュエーションの安全余地について、より強い証拠を求めている。レポートはKingdeeをOverweightへ格上げし、MeituとBeisenへのポジティブな見方を維持する一方、主にファンダメンタルズまたはバリュエーションが魅力的なリスク・リワードを提供しないため、YonyouとKingsoft Officeには慎重な姿勢を維持している。
分析フレームワーク
本レポートは、1H26の業績プレビューまたは中間決算を組み合わせて2026~2029年の売上高、EBIT、EPS予想を修正し、グローバルなソフトウェア同業他社の2027年予想PER、EV/FCF、EV/Salesマルチプルをバリュエーション参照値として用いる。SaaS企業については、売上高とマーケティング費用のミスマッチおよび長期成長の可能性を反映するため、EV/FCFとDCFをより広範に使用する。Kingsoft Corpにはサム・オブ・ザ・パーツ評価を用いる。
手法メモ
10年間の割引キャッシュフローモデル
Kingdee、Yonyou、Kingsoft Office、Beisen、Sangforを含む企業に使用。主な前提にはWACC、株主資本コスト、ベータ、負債コスト、負債・資本の加重、ターミナル成長率が含まれる。
サム・オブ・ザ・パーツ評価
Kingsoft Corpに使用。オンラインゲーム、Kingsoft Office、Kingsoft Cloud持分の価値、および50%の持株会社ディスカウントを織り込む。
グローバルなソフトウェア同業他社のバリュエーション比較
レポートは、コンピューティングハードウェア、AIモデル、アプリケーション間の業界横断的なダイナミクスが世界的に収斂しており、グローバルなソフトウェア同業他社の2027年予想バリュエーションマルチプルが中国ソフトウェア企業にとって有用な参照となると考えている。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- Kingdee International Software Group (0268.HK)中核的な売られ過ぎの機会、Overweightへ格上げ
- 強み
- 主導的な製品と実行力、堅調な1H26の事業運営、サブスクリプションARRの成長とマージン改善を有し、現在のバリュエーションはAIによる破壊リスクに対する安全余地を提供する。
- 弱み
- AI時代のSaaS移行における長期的な地位を依然として証明する必要があり、マクロ環境も弱いままである。
- 比較
- レポートは、大幅下落後の2027年予想EV/FCF約15倍を魅力的と見ている。
- リスク
- 中国経済のさらなる悪化、クラウド移行の実行リスク、国内競争の激化、および中堅企業市場におけるシェア喪失。
- MeituOverweight見通しを維持する選別的な機会
- 強み
- レポートでは、売上成長加速の勢いと魅力的なバリュエーションを持つソフトウェア株の一つとして挙げられている。
- 弱み
- AIの最終形態と市場流動性を巡る不確実性が、引き続き可視性に影響している。
- 比較
- 直近の大幅な株価下落後の選好機会として、KingdeeおよびBeisenと並んで挙げられている。
- リスク
- 流動性の逼迫、バリュエーションの変動性、およびAIアプリケーションの収益化が予想を下回るリスク。
- Beisen Holding Limited (9669.HK)Overweightを維持、下落後に大幅な上昇余地
- 強み
- 明確なSaaS特性を持ち、AI製品統合およびエンタープライズソフトウェア需要の改善から恩恵を受ける。
- 弱み
- 流動性の逼迫により、バリュエーションの変動性が相対的に高い。
- 比較
- レポートは、直近の大幅な株価下落後、目標株価まで大きな上昇余地があると見ている。
- リスク
- マクロ圧力、企業IT予算の減速、およびより高いベータに反映される変動性の上昇。
- Yonyou Network Technology Co Ltd (600588.SS)Underweightを維持
- 強み
- クラウドサービスは構造的成長を続けており、ソフトウェア国産化と企業のデジタル化という長期テーマは維持されている。
- 弱み
- 1Q26の売上成長は引き続き悪化し、市場シェアを失い、利益予想は大幅に引き下げられ、事業はマクロ環境への感応度が高い。
- 比較
- Kingdeeのような売上成長が加速する企業と比べ、Yonyouはファンダメンタルズとバリュエーションの適合性が弱い。
- リスク
- さらなる景気減速、長期化するクラウド移行サイクル、低収益性、およびハイエンド市場における競争激化。
- Beijing Kingsoft Office Software Inc (688111.SS)Underweightを維持
- 強み
- 2C回復は持続可能であり、海外展開が追加的な成長に寄与し、WPS 365はコラボレーション機能とAIにより牽引されている。
- 弱み
- バリュエーションはグローバルSaaS同業他社を大幅に上回り、10%台半ばの成長率では高いマルチプルを支えきれない。
- 比較
- 2027年予想EV/FCF約36倍、PER43倍は、グローバルSaaS企業の中でも例外的に高いバリュエーションと見なされている。
- リスク
- AI浸透の遅れ、オンラインコラボレーションにおける競争激化、および政府のソフトウェア国産化予算の制約。
- Kingsoft Corp Ltd (3888.HK)Equal-weightを維持
- 強み
- バリュエーションはオンラインゲーム、WPS、Kingsoft Cloud持分により支えられており、ソフトウェア国産化とゲーム改善が潜在的な上振れ要因である。
- 弱み
- 新作ゲームの実績は期待外れであり、WPSとゲームのファンダメンタルズも低調なままである。
- 比較
- 50%の持株会社ディスカウントを含むSOTP評価を用い、目標株価はHK$30.00。
- リスク
- 新作ゲームの実績が期待を下回るリスク、WPS成長の減速、およびソフトウェア国産化の進展が予想より遅いリスク。
- Sangfor Technologies Inc (300454.SZ)バリュエーション期間を2027年6月まで延長
- 強み
- ソフトウェア・ITサービスのカバレッジユニバースに引き続き含まれ、目標株価はRmb110.00へ小幅に調整された。
- 弱み
- レポートは同社について限定的な追加的議論しか提供していない。
- 比較
- 中核推奨銘柄と比べ、Sangforは本レポートで強調される主要な売られ過ぎの機会ではない。
- リスク
- 企業IT支出の減速、競争激化、およびバリュエーション前提の変動性。
主要データ
- Kingdeeのレーティング変更Equal-weightからOverweightへ格上げ、目標株価HK$11.30レポートは、売上成長率が10%台半ばに近づき、株価下落後の2027年予想EV/FCF約15倍が魅力的と考えている。
- Yonyouの目標株価Rmb5.40Underweightを維持。2026~2028年の売上高、EBIT、EPS予想はすべて引き下げられた。
- Kingsoft Officeの目標株価Rmb205.002027年予想EV/FCF約36倍、PER43倍は10%台半ばの成長率に対して割高と判断され、Underweightを維持する。
- Kingsoft Corpの目標株価HK$30.00Equal-weightを維持。バリュエーションにはオンラインゲーム、WPS、Kingsoft Cloud持分を含むSOTPを用いる。
- Kingdeeの2026~2028年ARR成長率21.0%, 19.0%, 17.0%ベースケースにおけるクラウドサブスクリプションとARRの継続的成長を反映する。
- Kingsoft OfficeのWPS 365売上成長率ベースケースにおける2026~2028Eは60%、45%、35%WPS 365は主要な売上成長ドライバーの一つと見なされている。
影響と示唆
ポートフォリオにおいて、レポートは中国ソフトウェアセクター全体を広く買い集めるよりも、ボトムアップでの銘柄選択を選好する。AIアプリケーション層の機会は売上の可視性を改善しているが、マクロ経済の減速、AIの最終形態を巡る不確実性、過度なバリュエーションは引き続き差別化をもたらす。すでにリスクを織り込み、利益予想修正が上向いている企業は、より魅力的なリスク・リワード特性を提供する。
リスク
- AIはSaaSおよびITサービスの長期的な利益プールを再編する可能性があり、最終的な勝者は依然として不明である。
- 中国マクロ経済のさらなる減速は、エンタープライズソフトウェア、クラウドサービス、ITサービスへの需要を抑制する可能性がある。
- AIコーディングエージェントは、低付加価値で労働集約的なITサービス事業を侵食する可能性がある。
- ソフトウェア国産化および政府予算の制約は、Kingsoft Officeのような企業の売上計上ペースに影響する可能性がある。
- 流動性の逼迫は小型・中型ソフトウェア株のバリュエーション変動性を増幅させる。
- 国内競争の激化は価格圧力と市場シェア喪失につながる可能性がある。
注目点
- 特にKingdee、Meitu、Beisenについて、1H26およびその後の四半期で売上成長が加速を続けるかどうか。
- AIの製品化、AIコーディングエージェント、研究開発効率の改善がマージン改善につながるかどうか。
- KingdeeのサブスクリプションARR成長、粗利益率、およびFCFの実現。
- Yonyouのクラウド移行、人員効率目標、および市場シェアの変化。
- Kingsoft OfficeのWPS 365成長、有料ユーザー転換、ARPU、およびAI浸透のペース。
- 中国企業のIT予算、ソフトウェア国産化予算、およびセクター流動性の変化。