レポート解説
Goldman Sachsは、成長が底堅く推移すればアジア株は緩やかな金利上昇を吸収できるとみて、MXAPJについて現在の880から1,120への12カ月目標を維持している。レポートは、台湾とテクノロジーの強さ、インドAI Enablersの利益主導の差別化された成長、急激な利回り上昇と外国人売りのリスクを強調している。
要約
外国人資金流出とアジア通貨安を受けMXAPJは0.4%下落、北アジアとテクノロジーは堅調
Goldman Sachsは、成長が底堅く推移すればアジア株は緩やかな金利上昇を吸収できるとみて、MXAPJについて現在の880から1,120への12カ月目標を維持している。レポートは、台湾とテクノロジーの強さ、インドAI Enablersの利益主導の差別化された成長、急激な利回り上昇と外国人売りのリスクを強調している。
- MXAPJは週間で0.4%下落し、台湾は2%上昇、フィリピンは5%下落した。
- 中国を除く新興アジアではUS$7.4bnの資金流出となり、韓国がUS$6.5bnを占めた。
- Goldman SachsはMXAPJについて、現在の880に対して12カ月後の目標を1,120としている。
- インドの42社のAI Enablersは年初来約60%上昇した一方、Niftyは12%下落した。
- レポートは、FRBが10月にさらに25bp利上げした後、2027年上期まで停止すると予想している。
- 利回りが急上昇し、例えば過去の標準から1.5標準偏差超上振れた場合、流動性と市場パフォーマンスへのリスクがより大きくなる。
レポート解説
概要
このアジア太平洋の週次戦略アップデートは、地域株式のパフォーマンス、マクロ政策、ポジショニング、利益、バリュエーション、今後のカタリストを検証する。Goldman Sachsは、短期的な外国人資金流出と世界的な金融引き締めにもかかわらず、成長と利益が底堅ければMXAPJの中期見通しは建設的とみている。
主要見解
MXAPJは外国人資金流出とアジア通貨安により週間で0.4%下落した。台湾は2%上昇してアウトパフォームし、韓国、中国、香港は概ね横ばいだった一方、フィリピンは5%下落、その他のASEAN市場は1%から2%下落した。ヘルスケア、テクノロジー・ハードウェア&半導体、消費者小売が上昇を主導し、資本財、エネルギー、インターネット/メディアはアンダーパフォームした。中国を除く新興アジアでは週次でUS$7.4bnの外国人資金流出があり、主に韓国のUS$6.5bnによるものだった。サウジアラビアの供給障害への懸念が和らぎ、原油価格は下落した。 金融環境は一段と引き締まった。FOMCは予想通り25bpを利上げし、ドットプロットは年末までにさらに25bpの利上げを示した。Goldman Sachsの米国エコノミストは10月の追加利上げ、その後2027年上期までの停止、2027年9月および12月の利下げを予想しており、これは2027年上期にさらに2回の利上げを見込むコンセンサスよりハト派的である。日本銀行も25bp利上げ、さらなる引き締めを示唆した一方、台湾の中央銀行は金利を据え置いた。レポートは、アジア株は歴史的にFRBの最初の利上げ後に弱含み、最近の引き締め局面では北アジア市場の影響が最も大きかったとする。ただし、成長と利益の実現が堅調であれば追加引き締めを概して吸収できるともみている。利回りが急上昇し、例えば過去の標準から1.5標準偏差超上振れた場合には、流動性と市場パフォーマンスにより大きな影響が及ぶ可能性がある。 Goldman Sachsは地域見通しを成長環境と結び付けている。米国のコア小売売上高は予想を大幅に上回った。中国では、輸出の底堅さと生産拡大により鉱工業生産は予想を上回ったが、固定資産投資、小売売上高、信用の伸びは予想を下回り、強い供給と弱い需要の乖離が続いた。労働市場の軟化も重なり、Goldman Sachsのエコノミストは2026年の中国実質GDP成長率予想を0.1 percentage point引き下げ、前年比4.5%とした。インドでは石油と金の輸入減少により貿易赤字が縮小し、総合CPIは22カ月ぶりの高水準に上昇した。 主要テーマはインドのAI Enablersである。Goldman Sachsによれば、電力、データセンター、半導体にまたがる42社は、Niftyが年初来12%下落する中で約60%上昇した。この乖離は主にバリュエーション倍率の拡大ではなく利益成長によるものとされる。同コホートの上場時価総額は約US$670bnで、データセンター事業者が中心となり、電力機器、発電、送電企業が続く。電力、データセンター、半導体の3層はいずれも年初来約40%から80%上昇した。Goldman Sachsは今後2年から3年にわたり堅調な利益成長を予想し、利益予想の上方修正はデータセンター・ハードウェアが中心で、電力機器、半導体材料、送電が続くとする。同グループはMSCI Indiaに対して大幅なプレミアムで取引されるものの、強い利益成長予想を調整するとPEGは同指数をわずかに下回る。 ポジショニングは短期的に強弱が混在する。投資信託は8月にインドと中国のエクスポージャーを増やし、台湾と韓国を減らした。暫定EPFRデータでは、アジア・ファンドは中国、香港、シンガポールを最もオーバーウェイトし、台湾とインドを最もアンダーウェイトしている。新興市場ファンドはブラジルとメキシコを最もオーバーウェイトし、台湾を最もアンダーウェイトしている。ヘッジファンドは9月に中国と香港を純買いする一方、韓国、台湾、日本を純売りした。アジア株に対するヘッジファンドの総合オーバーウェイトはMSCI AC World比13%で、6月の20%という記録的水準を下回るが、年初の6.5%を上回る。韓国のレバレッジETF資産はUS$16bnの底からUS$22bnへ回復したが、増加は主に資産リターンによるもので、7月下旬以降は緩やかな流出が続いている。台湾のレバレッジETF資産は約US$12bnの記録的水準近辺にとどまり、8月以降は利益確定の流出がみられる。 戦略スコアカードは韓国と台湾をオーバーウェイト、中国、香港、インドをマーケットウェイト、オーストラリア、インドネシア、フィリピン、タイをアンダーウェイトとする。Goldman Sachsの12カ月指数目標は、韓国74%、中国A株22%、台湾14%、MSCI China 16%、インド13%の価格上昇余地を示す。MXAPJについては、現在880に対して12カ月目標1,120を設定し、27%の価格上昇余地と30%のトータルリターンを見込む。セクターでは、資本財、ヘルスケア、テクノロジー・ハードウェア&半導体、銀行、ならびにオーストラリアと中国を除く一部銀行をオーバーウェイトとし、自動車、生活必需品、ソフトウェア&サービス、運輸、公益、不動産、小売&耐久消費財、通信サービスをアンダーウェイトとしている。 利益とバリュエーションのデータは建設的な見方を支えるが、基礎的な状況の不均一さも示す。利益予想修正先行指標は上方修正の継続を示す一方、そのペースは鈍化している。Goldman SachsはMXAPJの現地通貨建てEPS成長率を2026年73%、2027年25%と予想し、特に韓国は2026年338%、台湾は65%と見込む。MXAPJは予想12カ月P/E 10.5x、予想24カ月P/E 9.1x、実績P/B 2.4xで取引され、平均バリュエーションz-scoreは過去10年に対してマイナスである。テクノロジー・ハードウェア&半導体は予想12カ月P/E 8.5x、予想24カ月P/E 7.2xで取引され、予想利益成長はなお強い。レポートはまた、Regional Asia Drawdown Riskモデルが、最近の急激な市場調整後に下落リスクが大きく低下したことを示すとしている。
分析フレームワーク
Goldman Sachsは、週次の市場リターン、セクターパフォーマンス、外国人資金フローを、中央銀行の動向、マクロ経済指標、利益予想修正、コンセンサス予想、バリュエーション比較、機関投資家のポジショニングと組み合わせている。米国実質金利上昇の影響を、FRB引き締め後のアジア株の過去リターンを通じて評価し、その上で予想利益、バリュエーション、資金フロー、マクロ環境に基づき地域配分を判断している。
手法メモ
予想P/EとPEGの比較
レポートは予想利益倍率を比較し、予想利益成長を踏まえてバリュエーションを評価している。これにより、インドAI EnablersはMSCI Indiaに対してプレミアムがあるにもかかわらず、PEGはわずかに低いとの見方を支えている。
P/B評価と過去レンジとの比較
レポートは、アジア市場およびセクターの実績P/Bと10年のバリュエーションz-scoreを比較し、現在の株式バリュエーションを過去の文脈で評価している。
利益予想修正と予想に対するマクロデータ
レポートは、コンセンサスEPS予想の変化とマクロデータのサプライズを用い、利益モメンタムまたは経済状況が改善・悪化している領域を特定している。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- MXAPJ主要な地域株式ベンチマークおよび戦略の対象
- 強み
- 予想利益成長、過去平均を下回るバリュエーション指標、12カ月目標1,120。
- 弱み
- 外国人資金流出とアジア通貨安を受けて週間で下落。
- 比較
- Goldman Sachsは880から27%の価格上昇を予想しており、地域の個別市場では目標リターンが異なる。
- リスク
- 米国実質利回りの急上昇、成長鈍化、継続的な外国人資金流出がパフォーマンスを損なう可能性がある。
- India AI Enablersテーマ型成長コホート
- 強み
- 年初来約60%の上昇は、利益成長、強い予想上方修正、今後2年から3年の堅調な利益成長予想に支えられている。
- 弱み
- MSCI Indiaに対して大幅なバリュエーション・プレミアムで取引される。
- 比較
- Niftyが年初来12%下落する中で同コホートは大幅にアウトパフォームし、成長を調整するとPEGはMSCI Indiaをわずかに下回る。
- リスク
- レポートは資産固有のリスクを示していない。
- Koreaアジア市場のオーバーウェイト配分
- 強み
- Goldman Sachsの12カ月KOSPI目標12,000は6,894に対して74%の価格上昇余地を示す。
- 弱み
- 中国を除く新興アジアの週次流出US$6.5bnの主因であり、9月にはヘッジファンドの純売り市場だった。
- 比較
- レポートは、配分表に示された他の地域市場よりも韓国に大きな目標上昇余地を与えている。
- リスク
- 歴史的に、韓国はFRB引き締め局面後に最も脆弱な北アジア市場の一つである。
- Taiwanアジア市場のオーバーウェイト配分
- 強み
- 週間で2%上昇し、Goldman Sachsの12カ月TWSE目標54,000は47,181に対して14%の価格上昇余地を示す。
- 弱み
- 投資信託とヘッジファンドがエクスポージャーを減らし、レバレッジETF投資家は8月以降に利益確定を行っている。
- 比較
- 台湾のテクノロジー・ハードウェアと半導体は地域の利益成長の重要な牽引役だが、ファンドのポジショニングでは最もアンダーウェイトされている領域の一つである。
- リスク
- 歴史的に、台湾は最近のFRB引き締め局面でアンダーパフォームした北アジア市場の一つである。
主要データ
- MXAPJの週間リターン-0.4%台湾は2%上昇、フィリピンは5%下落。
- 中国を除く新興アジアの外国人資金フロー-US$7.4bn週次流出で、主に韓国の-US$6.5bnによる。
- MXAPJの現在値と12カ月目標880 / 1,12027%の価格上昇余地と30%のトータルリターンを示す。
- インドAI Enablersのパフォーマンス~60% YTD42社のコホートで、Niftyは年初来12%下落。
- インドAI Enablersの時価総額~US$670bn主にデータセンター事業者が牽引し、電力関連企業が続く。
- 中国の2026年実質GDP予想4.5% YoY労働市場の軟化と需要指標の弱さを受け、0.1 percentage point引き下げ。
- MXAPJの利益成長予想73% for 2026E; 25% for 2027EGoldman Sachsによるトップダウンの現地通貨建てEPS予想。
- MXAPJのバリュエーション10.5x forward 12-month P/E; 9.1x forward 24-month P/E; 2.4x trailing P/B平均バリュエーションz-scoreは10年の過去平均を下回る。
影響と示唆
レポートのMXAPJに対する建設的な目標は、底堅い成長、大幅な予想利益の実現、過去対比で割高でないバリュエーションに基づく。ただし、短期的な推移は米国実質金利の変動、外国人資金フロー、アジア通貨安、中国の需要回復の持続性に左右される。Goldman Sachsによれば、テクノロジーと北アジア市場が足元でアウトパフォームしており、インドのAIインフラテーマは利益主導の差別化された成長エクスポージャーを提供する。
リスク
- 利回りが急上昇し、例えば過去の標準から1.5標準偏差超上振れた場合、アジア市場の流動性とパフォーマンスに大きな悪影響を及ぼす可能性がある。
- アジア株は歴史的にFRBの最初の利上げ後に弱含み、最近の引き締め局面では日本、台湾、韓国、香港が最も大きくアンダーパフォームした。
- 中国の需要指標の継続的な弱さと労働市場の軟化は、地域のマクロ見通しを圧迫する可能性がある。
- 外国人資金流出とアジア通貨安は、地域株式にとって短期的な逆風であり続ける。
注目点
- FRBがGoldman Sachsの予想する10月の追加利上げを実施するか、および米国実質利回りの反応。
- 中国のローンプライムレート、鉱工業生産、小売売上高、信用成長、需要回復の兆候。
- 今後のアジアのインフレ、貿易、PMI、輸出受注、中央銀行の発表。
- 中国、香港、韓国、台湾、インドにおける投資信託とヘッジファンドのポジショニング。
- インドのAIインフラ、データセンター・ハードウェア、電力機器、半導体関連企業における利益予想上方修正の持続性。