電子部品;MLCC:MLCCの需給逼迫により、夏場の値上げ交渉が主要なカタリストに
JPMorganは、日本のMLCC輸出額とASPが6月も改善を続ける一方、AIサーバー需要が中高級品の供給を圧迫しているとみている。日本メーカーが値上げを実施すれば、受動部品セクターの再評価につながる可能性がある。
要約
JPMorganは、日本のMLCC輸出額とASPが6月も改善を続ける一方、AIサーバー需要が中高級品の供給を圧迫しているとみている。日本メーカーが値上げを実施すれば、受動部品セクターの再評価につながる可能性がある。
- 2026年6月のMLCC総輸出数量は889.57億個で、前年比6.5%増、前月比6.1%増。輸出額は4億4,750万ドルで、前年比18.2%増、前月比8.9%増。ドル建てASPは0.50米セントで、前年比11.0%上昇した。
- アジアのIT関連市場向け輸出額は3億2,310万ドルで、前年比20.1%増、前月比7.7%増となり、全体的な上昇傾向を維持した。台湾は前月比で減少したものの、ASPは0.54米セントへ大幅に上昇した。
- 欧州および米国の車載用途関連輸出額は7,420万ドルで、前年比6.3%増、前月比17.6%増となった。米国は緩やかな成長を示す一方、欧州はやや弱く、地域間の乖離が明確となった。
- レポートの最有力推奨銘柄は村田製作所である。株価下落後のバリュエーションは過去レンジの上限を下回ると判断される一方、ファンダメンタルズは悪化していない。
レポート解説
概要
本レポートは、2026年6月の財務省貿易統計に基づき、MLCCの輸出数量、輸出額、ASPを国別・地域別に追跡する。JPMorganは、6月の輸出数量は概ね季節性に沿った一方、輸出額は季節性をやや上回ったとみている。ドル建て輸出額とASPはいずれも緩やかな上昇を継続しており、業界が従来の安定局面から緩やかな成長局面へ移行していることを示している。
主要見解
中核的な見方は、MLCC業界の長期ファンダメンタルズは変わらない一方、中高級品の需給が一段と逼迫しているというものである。AIサーバー向けMLCCへの設備増強および優先配分が汎用品・中位品の供給を圧迫しており、7月から9月にかけて需給はさらに逼迫する可能性がある。一部メーカーは販売代理店や主要顧客に値上げを示唆し始めており、AIサーバー、EMS、OEM、ODM顧客を対象とする2027年の年間契約交渉を開始している。日本のMLCCメーカーが値上げを実施すれば、他の電子部品、特に受動部品の値上げに対する心理的ハードルも低下する可能性がある。
分析フレームワーク
本レポートは、日本のMLCC輸出データを総輸出、アジア関連のIT用途、欧州・米国関連の車載用途、および主要輸出先に分解している。前年比、前月比、10年季節性、トレンドライン、ドル建てASPを組み合わせて需要と価格の変化を評価し、ピア・バリュエーション表を用いて村田製作所、太陽誘電、TDK、SEMCO、Yageoを比較している。
手法メモ
輸出先別に用途需要をマッピング
本レポートは、中国、香港、台湾、韓国、ベトナム、フィリピン、インドをIT用途へのエクスポージャーが比較的高い市場とし、ドイツ、オランダ、米国を車載用途へのエクスポージャーが比較的高い市場としている。輸出数量、金額、ASPから需要および需給の変化を推定する。
季節変動と基調トレンドを区別
本レポートは6月データを10年季節性と比較し、3カ月移動平均およびトレンドラインを観察することで、輸出額とASPが持続的な改善チャネルにあるかを判断している。
ピア・バリュエーションと目標株価リターンを比較
本レポートは、村田製作所、太陽誘電、TDK、SEMCO、Yageoの株価、目標株価、P/E、EV/EBITDA、P/B、ROE、年初来パフォーマンスを比較し、株価下落後の日本MLCC銘柄のリスクリワードを評価している。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- 村田製作所 (6981)レポートの最有力MLCC投資先
- 強み
- 中高級MLCCおよびAIサーバー需要の恩恵を受ける。OW評価で、目標株価は¥15,200、表の示唆リターンは143.9%。
- 弱み
- 今後3~4年の利益成長ポテンシャルが市場で急速に織り込まれた後、6月中旬のピークから株価は大きく下落した。
- 比較
- 日本のMLCCメーカーの中で最有力推奨銘柄とされ、太陽誘電、TDKとともにOW評価。
- リスク
- 値上げが効果的に実施されなければ、低マージン受注を抱え込み、稼働は高水準でも収益性が弱くなる可能性がある。
- 太陽誘電 (6976)日本のMLCC恩恵銘柄
- 強み
- MLCCの需給逼迫の恩恵を受ける。OW評価で、表上の目標株価は¥22,500、示唆リターンは149.9%。
- 弱み
- 村田製作所と同様に、大幅な将来の利益成長期待が織り込まれた後、株価は下落した。
- 比較
- 表の示唆リターンは村田製作所を上回るが、村田製作所は引き続きレポートの最有力推奨銘柄である。
- リスク
- 値上げのペース、顧客の受容度、中位品の需給変化が業績の実現に影響する可能性がある。
- TDK (6762)日本の電子部品・MLCC関連銘柄
- 強み
- OW評価で、表上の目標株価は¥5,500、示唆リターンは100.3%。
- 弱み
- 本レポートは村田製作所を最有力のMLCC投資先としており、TDKは本レポートにおける中核的な最有力推奨銘柄ではない。
- 比較
- バリュエーション表では村田製作所、太陽誘電、SEMCO、Yageoと比較されている。
- リスク
- 値上げが受動部品全体に広がらない場合やMLCC需要が鈍化した場合、セクターのバリュエーション回復は制約を受ける可能性がある。
- MLCC業界レポートの中核業界
- 強み
- 6月の輸出額とASPは改善を継続。AIサーバーが中高級品の需給を逼迫させており、2027年の契約価格交渉も勢いを増している。
- 弱み
- 欧州向け車載用途関連輸出額はやや弱く、韓国向け輸出も相対的に低調にとどまり、地域間の乖離を示している。
- 比較
- IT用途は全体として車載用途を上回る。アジアのIT関連市場は上昇トレンドを継続し、米国向け車載関連輸出は欧州向けより強い。
- リスク
- 価格交渉の不調、顧客の値上げ抵抗、過度に急速な供給拡大、または最終需要の弱まりはいずれも上昇トレンドを損なう可能性がある。
主要データ
- 6月のMLCC総輸出数量889.57億個;前年比+6.5%;前月比+6.1%輸出数量は季節性に沿った。過去10年では6月は通常、前月比8.6%増となる。
- 6月のMLCC総輸出額$447.5mn;前年比+18.2%;前月比+8.9%輸出額は、過去10年の6月の季節的な前月比4.9%増をやや上回った。
- 6月のMLCC総ASP0.50米セント;前年比+11.0%;前月比+2.6%ドル建てASPは緩やかな上昇トレンドを継続した。
- 4-6月の総出荷額円建て前期比+14%;ドル建て前期比+13%;円建て前年比+26%;ドル建て前年比+14%四半期モメンタムは引き続き力強かった。
- IT用途関連輸出額$323.1mn;前年比+20.1%;前月比+7.7%アジアのIT関連市場における全体的な上昇トレンドは継続した。
- 車載用途関連輸出額$74.2mn;前年比+6.3%;前月比+17.6%米国は緩やかな成長を示す一方、欧州はやや弱く、地域差が拡大した。
- 村田製作所のバリュエーション表株価¥6,231;目標株価¥15,200;リターン143.9%;評価OW本レポートは村田製作所を最有力のMLCC投資先としている。
影響と示唆
需給逼迫が実際の値上げにつながれば、MLCCメーカーのASPおよび利益予想はさらに上方修正され、株価下落後の日本MLCC銘柄のリスクリワードは改善する可能性がある。MLCCの値上げは他の受動部品にも広がり、電子部品セクターのセンチメントおよび業績のカタリストとなる可能性がある。
リスク
- MLCCメーカーが値上げを実施できなければ、低マージン製品の受注が集中し、高い設備稼働率にもかかわらず収益性が弱くなる可能性がある。
- 株価は今後3~4年の利益成長ポテンシャルをすでに急速に織り込んでいる。業績上方修正が期待を下回れば、バリュエーションは再び圧力を受ける可能性がある。
- 車載用途には地域差が見られ、欧州の輸出額トレンドはやや弱い。
- 6月の台湾向け輸出額は前月比で減少した。回復しなければ、IT用途の上昇トレンドに対する評価に影響する可能性がある。
- AIサーバー向けへの生産能力の優先配分は、汎用品・中位品の不足を悪化させる可能性がある一方、顧客による代替や受注遅延のリスクも生じうる。
注目点
- 2026年夏の主要直販顧客とのMLCC値上げ交渉の進捗。
- AIサーバー、EMS、OEM、ODM顧客を対象とする2027年年間契約の価格条件。
- 7月から9月にかけて汎用・中位MLCCの需給がさらに逼迫するか。
- 財務省データによる、その後の数カ月間のMLCC輸出額、ASP、3カ月移動平均トレンド。
- 米国と欧州における車載用途関連輸出額の乖離が拡大するか。
- 株価下落後の村田製作所、太陽誘電、TDKについて、バリュエーションと利益期待が整合するか。