レポート解説
レポートは、2027年までの受注カバー、コミット済みの2028年受注、AI主導の半導体投資が、EUV能力の一段の拡張と価格上振れ余地を支えると論じる。BernsteinはASML.NAに対するOutperform評価と€2,500の目標株価を維持している。
要約
Bernsteinは、ASMLの2028年における110台のLow-NA EUV計画を、供給上限ではなく需要主導の水準とみている。
レポートは、2027年までの受注カバー、コミット済みの2028年受注、AI主導の半導体投資が、EUV能力の一段の拡張と価格上振れ余地を支えると論じる。BernsteinはASML.NAに対するOutperform評価と€2,500の目標株価を維持している。
- Low-NA EUVの生産能力ガイダンスは2026年65台、2027年85台、2028年110台だが、経営陣はこれを物理的な能力上限とはみていない。
- 2026年売上高は実質的に受注でカバーされ、2027年のEUV生産は大部分が予約済み、DUV能力はほぼフル配分となっている。
- High-NAの採用はタイミングの問題とされ、Samsungは2028年前後、TSMCは2030年前後に採用すると見込まれ、Intelはすでに導入を進めている。
- 将来の価格上昇は主に2027-28年のテーマであり、契約済みの既存受注残には影響しない。
- BernsteinはQ5-8 EPS予想に40x P/E倍率を適用し、€2,500の目標株価を導出している。
レポート解説
概要
このカンファレンス要点レポートは、ASMLのIRチームとの面談後のBernsteinの前向きな見方を示す。中心的な結論は、2028年のLow-NA EUV 110台は現在の需要と生産性の前提を反映しており、厳格な供給制約ではないという点である。強い受注コミットメント、AI関連の半導体需要、光刻強度の上昇がBernsteinのOutperform判断を支えている。
主要見解
ASMLは、Low-NA EUVの生産能力ロードマップを2026年約65台、2027年85台、2028年110台と改めて示した。経営陣は、これらの水準が現在の製造拠点、持続的需要の前提、次世代システムの見込まれる生産性向上に基づくものであり、物理的な上限ではないと強調した。したがってBernsteinは、特にAI関連投資の拡大を背景に顧客需要が持続的と判明すれば、2028年に110台を超える生産余地があるとみる。サプライチェーン全体での協調も能力拡張の根拠であり、Zeissは能力増強に合意している。ASMLは2027年にシステム出荷が約30%増加し、次世代プラットフォームの生産性向上を受けて実効ウエハー能力が約45%増加すると見込む。2028年は生産性改善がやや小さくなる一方、台数成長は約30%で同程度となる可能性がある。新たなBrainportキャンパスは建設段階にあるが、本格的な生産寄与は2029年以降となる見通しである。VeldhovenはEUVの研究開発・製造拠点であり続け、Brainportは主に成熟プロセスとDUVツールを支援する。 受注可視性は、経営陣が一段の拡張を検討する根拠となっている。レポートによると、2026年の売上高は実質的に受注でカバーされ、2027年のEUV能力は大部分が予約済み、DUV能力はほぼフル配分である。ASMLは2028年分の受注もすでに得ており、そこには顧客による50%の前払いが含まれる。Bernsteinはこれを過去のサイクルより強いコミットメントの証左とみる。経営陣は現時点で受注残に二重発注の兆候はないとみているが、受注残の質を維持するため、顧客要件と出荷スケジュールを監視している。 レポートは価格設定を、短期の受注残のドライバーではなく、後年の機会と位置付ける。ASMLは、価値に基づく価格設定は新ツールによるスループット、オーバーレイ、精度を反映し、先端半導体製造で顧客が生む価値のより大きな部分を得ることを目指すとしている。価格上昇は主に2027-28年、とりわけ2028年のテーマであり、契約条件により既存の受注残には影響しない。成果は引き続き顧客交渉と受注量に左右される。ASMLはHigh-NAにも同じ規律を適用し、採用を早めるための値下げは将来の価格規律を損なう可能性があると論じる。 High-NAの採用は、確実性が高まる一方で顧客ごとに時期が異なるものとして説明される。ASMLはSamsungが2028年前後にDRAM向けにHigh-NAを採用すると見込み、TSMCはLow-NAから高い利用率を引き出せるため2030年前後まで採用を遅らせる可能性がある。Intelはすでに導入を進めている。経営陣は、Low-NAだけでの継続的なスケーリングは歩留まりを大幅に悪化させるため、顧客はいずれHigh-NAを必要とすると主張する。High-NAは複雑なマルチパターニングを単一露光リソグラフィに置き換え、製造コストを下げうる。ASMLにとってHigh-NAと最適化されたLow-NAの経済差は限定的で、High-NAは当初、高収益のLow-NAツール比でわずかに希薄化要因となる可能性もあるが、数量増加に伴い収益性は大幅に改善する見込みである。 ASMLはロジックとメモリ双方で長期的な光刻強度に前向きである。同社は、FinFETからGAAへの移行でトランジスタアーキテクチャ変更と微細化を同時に進める難しさを指摘し、TSMCが両方を同時に行うことを避けて一時的にスケーリングを止めた一方、Samsungは組み合わせたことでより困難な移行となったことを対比する。メモリについては、6F²から4F²への移行で光刻強度が低下するとの見方に反対し、重要なDRAM工程で追加のEUV層が使われ、DUVマルチパターニングからEUV単一露光への移行が継続すると予想する。AI関連メモリ生産では大きなウエハー需要があるため、メモリは将来のEUV需要の約50%を占め、その比率を維持する可能性がある。 生産性も中核的な需要・価値ドライバーである。ASML、TSMC、Intel、Samsungは、High-NAで12インチマスクへ移行する可能性を評価している。ASMLは、より効率的なダイレイアウトにより大型マスクは生産性を40%高め、一部のステッチング制約を緩和できると見積もるが、レチクルステージの改修は依然として技術的に難しい。より広範なプラットフォーム改善と合わせ、経営陣は現行Low-NAシステムの約330 wafers per hourから将来システムの400-500 wafers per hourへの道筋をみている。より近いFシステムへの移行では、2027年にFシステムがLow-NAミックスの中心になると見込まれる。Fプラットフォームは3800光学アーキテクチャを継続するが、改訂したレーザー構成で約260 wafers per hourを実現する。 レポートはAIインフラをより広い半導体需要に結びつける。経営陣はAI需要が初期の受益者であるTSMCとHynixから、Intel、Samsung、Rapidusへと広がっていると考える。現在のインフラ投資サイクルを正当化する主要因は消費者向けAIだけではなく企業向けAIであり、ロボティクスのようなフィジカルAIの用途が追加の潜在需要源になると論じる。ASMLはMistral AIとの関係を通じ、大規模な社内データセットの活用、研究開発生産性の改善、製造プロセス最適化という社内AIの機会も見出している。実装が成功すれば、時間とともにR&D強度を下げ、出力効率を改善しうる。 中国について、ASMLは輸出規制の一層の厳格化が中国国内のリソグラフィ能力開発への投資を加速する可能性を警告している。それでも経営陣は、中国のプロトタイプ発表と量産の間には大きな隔たりが残ると考え、中国のEUV能力は現行の業界リーダーに10年以上遅れていると推定する。同社は技術的リーダーシップと、特にZeissとの戦略的サプライヤー関係を根拠に競争地位に自信を持つ一方、MATCH Actを含む追加規制が中国国内のR&Dをさらに強める可能性には慎重である。 最後にASMLは、拡大する設置ベース収益を強調する。これまでに出荷したシステムの約95%が稼働しており、サービス、ソフトウェアアップグレード、生産性向上に向けた成長機会を生む。EUVのウエハー当たり課金によるサービス収益は年間でシステムASPの約5%と見積もられ、High-NAでも同様の経済性が見込まれる。一方、主要な液浸システムはASPの約1-2%に相当する継続収益を生む。経営陣は、設置ベースの拡大に伴いサービス・アップグレード収益が長期成長への寄与を増すとみるが、アップグレードは景気循環の影響を受ける。
分析フレームワーク
Bernsteinは半導体デイ・カンファレンスでの経営陣との議論を要約した後、生産能力とサプライヤーの準備状況、顧客コミットメント、価格設定と製品ロードマップの経済性、光刻強度、AI主導の需要、競争・輸出規制の動向、設置ベースのサービスを通じて投資判断を検証している。評価ではP/E倍率をEPS予想に適用して目標株価を導出している。
手法メモ
P/E倍率によるバリュエーション
BernsteinはQ5-8 EPS予想に40x P/E倍率を適用し、丸めた€2,500の目標株価を導出している。
半導体装置の需給分析
レポートは、予約受注、顧客前払い、サプライヤーの能力拡張、AI関連需要、予想されるツール生産性を基に、EUV生産が既定の2028年計画を超えられるかを評価している。
リソグラフィのバリューチェーン伝達
レポートは、ASMLツールのスループットとリソグラフィ能力を、顧客の製造コスト、歩留まり、メモリ需要、サプライヤー能力、半導体スケーリング要件に結び付けている。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- ASML Holding NV (ASML.NA)主要カバレッジ企業。強いEUV・DUVの受注可視性、AI関連半導体需要、拡張可能なEUV能力、生産性向上、サービス収益の成長から恩恵を受けると見込まれる。
- 強み
- 技術的リーダーシップ、2027年まで予約済みの能力、2028年の顧客前払い、Zeissによる戦略的サプライヤー支援、大規模な設置ベース。
- 弱み
- 出荷量が拡大する前は、High-NAが最適化されたLow-NAツールに比べてわずかに希薄化要因となる可能性がある。
- 比較
- TSMCはLow-NAの高い利用率を理由にHigh-NAを2030年前後まで遅らせる見込みである一方、Samsungは2028年前後に採用し、IntelはすでにHigh-NAを導入している。
- リスク
- EUV商業化コストによる予想未達のマージン、中国の過剰在庫、WFE市場の予想以上の弱さ、技術移行の遅れ、長期的な他技術の脅威、中国向け輸出規制の一層の厳格化。
主要データ
- ASML.NA終値€1,387.80終値日は2026年9月14日。
- ASML.NA目標株価€2,500.00Bernsteinの目標株価であり、記載された終値から80%の上昇余地を示す。
- Low-NA EUV生産能力ロードマップ65 systems in 2026; 85 in 2027; 110 in 2028経営陣は、これは需要に基づく前提であり、厳格な物理的供給上限ではないとしている。
- 2027年のシステム出荷成長Approximately 30%システム出荷の年間成長見通し。
- 2027年の実効ウエハー能力成長Approximately 45%次世代プラットフォームの生産性向上に支えられる。
- 将来EUV需要に占めるメモリの割合Roughly 50%ASMLはメモリが将来EUV需要のおよそ半分を占め、その割合を維持しうると考えている。
- 将来システムのスループット400-500 wafers per hour経営陣が現行Low-NAシステムの約330 wafers per hourから見込む到達水準。
- EUVサービス収益Around 5% of system ASP annually推定されるウエハー当たり課金型の継続的サービス収益。
- 売上高€32,667m in F25A; €43,973m in F26E; €55,915m in F27EBernsteinの財務予想。記載されたCAGRは30.8%。
- EBIT€11,302m in F25A; €17,737m in F26E; €24,280m in F27EBernsteinの財務予想。記載されたCAGRは46.6%。
影響と示唆
Bernsteinの投資判断は、持続的な顧客需要とAI関連投資がASMLに2028年の公表済みLow-NA EUV計画を超える拡張を可能にするとの見方に基づく。レポートは、後年の価格設定、プラットフォーム生産性の改善、光刻強度の上昇、設置ベースのサービス収益拡大も支援要因とみる。一方、High-NA採用のタイミングは、先端リソグラフィに対する全体的な戦略的必要性よりも製品ミックスに影響する。
リスク
- EUVの商業化と新世代EUVへの移行コストが予想以上となり、マージンが期待を下回る可能性がある。
- 中国の過剰在庫が需要を弱める可能性がある。
- ウエハーファブ装置市場が予想より弱くなる可能性がある。
- 技術移行が予想より遅く、他技術が長期的な脅威となる可能性がある。
- 中国顧客に影響する輸出規制の追加的な厳格化が下振れリスクである。
注目点
- 持続的な顧客需要により、2028年のLow-NA EUV能力が110台を超えられるか。
- 出荷スケジュールや二重発注の兆候を含む受注残の質。
- Samsung、TSMC、IntelでのHigh-NA採用時期、およびHigh-NA数量拡大に伴う収益性改善。
- 2027-28年の顧客との価格交渉と受注量。
- 企業向けAIおよびAI関連メモリ要件を中心とするAIインフラ需要。
- MATCH Actを含む輸出規制の進展が中国需要と中国国内リソグラフィ投資に与える影響。