US critical-minerals mining and supply-chain reshoring レポート解説
レポートは、記録的な輸入依存と数十年にわたる投資不足により、米国の鉱業拡大が戦略的に必要になったと論じる。許認可改革とインセンティブは追い風だが、限られた埋蔵量、地域社会の反対、鉱石品位、労働力不足が国内回帰の程度を制約する。
要約
レポートは、記録的な輸入依存と数十年にわたる投資不足により、米国の鉱業拡大が戦略的に必要になったと論じる。許認可改革とインセンティブは追い風だが、限られた埋蔵量、地域社会の反対、鉱石品位、労働力不足が国内回帰の程度を制約する。
- 米国の採掘・探鉱投資は、1960年のGDP比約2.0%から2022年には約0.5%へ低下した。
- 米国は50の重要鉱物のうち43について、消費量の50%超を輸入に依存している。
- 米国の許認可には通常7-10年を要するのに対し、カナダとオーストラリアでは2-3年である。
- 許認可の迅速化から最も直接的に恩恵を受けるのはジュニア鉱山会社と探鉱会社とみられる。
- FCX、Teck、MP Materialsは、Morgan Stanleyのカバレッジ内の潜在的受益者として挙げられている。
レポート解説
概要
Morgan Stanleyは、戦略的なサプライチェーン懸念、政府インセンティブ、許認可改革が、数十年にわたる投資不足後の米国鉱業を再活性化できるかを検討している。国内の重要鉱物能力への支援はさらに強まると予想する一方、地質的・社会的・労働力・環境面の制約を解決しなければ完全な国内回帰は不可能だと結論づけている。
主要見解
レポートの出発点は、米国における重要鉱物の脆弱性拡大である。政府は経済と国家安全保障に不可欠な鉱物を50種特定しており、そのうち43種では米国内消費の半分超を輸入に依存している。2022年、米国が輸入に完全依存した鉱物は15種、輸入が消費の50%超を占めた鉱物は51種で、1990年の9種、27種から増加した。アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、レアアースの輸入依存度は2022年に41%から95%だった。アルミニウムと銅の依存度は1993年の7%と19%から41%と54%へ上昇し、国内生産は双方とも50%超減少した。採掘・探鉱投資は1960年のGDP比約2.0%、1981年の約3.1%のピークから、2022年には約0.5%まで低下した。 Morgan Stanleyは、この脆弱性を中国への加工・精錬集中と結びつける。中国は世界のニッケルの68%、銅の40%、リチウムの59%、コバルトの73%、レアアースの85%を精錬しており、供給、入手可能性、価格に影響を及ぼせる。レポートは、2023年7月のガリウムとゲルマニウムの輸出制限、および過去のレアアース輸出規制を、グリーン技術や国防などの最終市場を混乱させ得る地政学リスクの例として挙げる。より多極化する地政学環境では、政府と企業がサプライチェーンのリスク低減のために一定の経済的コストを受け入れると論じている。 このため、政策は主要な潜在的触媒である。レポートは、税制優遇、融資、補助金、規制変更を通じた超党派の支援が続くと予想する。2022年以降の取り組みは、狭い国防目的から、電池に関連する国防生産法支援、$600 millionのDPA Title III資金、気候変動と国内エネルギー生産向けにインフレ抑制法が認可した$391 billion、地質マッピング、AIを用いた鉱物評価、さらに国防総省によるテキサス州の$258 millionおよびカリフォルニア州の$35 millionのレアアース加工施設契約へと広がった。これらは採掘、加工、探鉱、リサイクル、サプライチェーン強靭性の拡大を目指すが、米国が重要鉱物の供給網全体を完全に国内回帰させるとは予想していない。 許認可改革はプロジェクト開発の経済性と時間軸を改善し得るが、Morgan Stanleyは部分的な解決策にすぎないとみる。米国の許認可は訴訟時間を除いて平均7-10年かかるのに対し、カナダとオーストラリアでは2-3年である。環境影響評価だけでも平均4-5年を要し、歴史的にほぼすべての新規採掘プロジェクトで完全な環境影響評価書が必要だった。2023年6月に成立したFiscal Responsibility Actは、主導機関の枠組み、環境影響評価書の2年制限、環境評価の1年制限、公開スケジュール、ページ数制限、デジタルツールを導入する。提案法案には優先プロジェクト、訴訟期限、機関間調整も含まれる。レポートはこれを小さな前進であって、完全な解決策ではないと評価している。 供給制約は構造的である。50の重要鉱物のうち24では、米国の埋蔵量は世界の1%未満、または十分な埋蔵量データがない。コバルト、ニッケル、バナジウムは平均で世界埋蔵量のわずか0.5%であり、ニッケルとコバルトはそれぞれ0.4%と0.8%である。Morgan Stanleyは、埋蔵量を過去3年の平均見掛け消費量で割り、輸入依存度を調整して埋蔵量寿命を算出した。現在の輸入が安定すると仮定すれば、銅は約40年、コバルトは約38年、ニッケルは約5年の消費を支えられる。輸入がなければ、銅は約24年、コバルトは約9年、ニッケルは約2年に低下する。埋蔵量が10%増加すれば、銅とコバルトの埋蔵量寿命は約4年、ニッケルは約6か月延び得る。レポートは、こうした不足を、銅、レアアース、テルルにおける米国の優位性と対比している。 埋蔵量以外にも、社会的受容、鉱石品位の低下、労働力確保が重要なボトルネックとされる。米国のコバルト、銅、ニッケル埋蔵量の68%超は、ネイティブ・アメリカン居留地から35マイル以内に位置しており、地域社会との関与、環境面・文化面の懸念はプロジェクト開発にとって重要である。世界的な鉱石品位低下は採掘の困難さとコストを高める。レポートによれば、2020年の米国の地質学・地球科学卒業者数は2015年比で約25%少なく、イノベーションと技術力を制約する恐れがある。技術はこれらの制約を部分的に軽減できる。Freeportの触媒浸出は廃岩からの銅回収を目指し、短期目標は年率200 million pounds、その後中期的にさらに600 million poundsの拡大である。同社はこの技術により、米国と南米の38 billion poundsの銅ストックパイルの価値を引き出せると見込む。 Morgan Stanleyは、国内回帰を無条件の恩恵ではなくESG上のトレードオフとして提示する。国内または近隣地域からの供給は、人権・労働権リスクの監督強化、輸送排出の削減、比較的低炭素な米国の電力利用につながり得る。2022年の米国電力部門の炭素強度は約365 gCO₂e/kWhだった。しかし輸入継続と比べて国内採掘は米国内排出を増加させ、地域社会や聖地に影響を与え、土地利用と生物多様性のリスクをもたらす。レポートは、世界の操業中鉱山・探鉱地点の約5%が重要生物多様性地域にあり、環境的に敏感な地点から1キロ以内のプロジェクトは、30キロ超離れたプロジェクトより環境リスク事象が30%多いという証拠を引用している。 株式面では、許認可改革が新規鉱山開発を対象とするため、Morgan Stanleyはジュニア鉱山会社と探鉱会社が最も直接的な受益者になると予想する。大手多国籍企業が中心の米国Metals & Miningカバレッジでは短期的な恩恵はより限定的だが、Freeport-McMoRan、Teck Resources、MP Materialsを挙げる。FCXはアリゾナ州に潜在的成長プロジェクトを持ち、Bagdad拡張は銅精鉱を年率約200 million pounds増やす可能性があり、Lone Star硫化物案件には約50 billion poundsの鉱物ポテンシャルがある。その他の長期的な米国ブラウンフィールド案件の鉱物ポテンシャルは約100 billion poundsとされる。TeckのNorthMetはNewRange Copper Nickel合弁事業の資産で、20年の鉱山寿命、年平均約118 million poundsの銅換算生産、約$1.5 billionの初期資本、$2.04/lbのライフ・オブ・マイン現金コストを見込む。MP MaterialsはMountain Passでレアアース酸化物精錬を立ち上げ、テキサス州でNdFeB合金フレークと永久磁石の施設を建設している。 レポートは、さらなる許認可改革、採掘技術、供給業者の多様化、採掘に対する世論、国際貿易規制の変化を注視すべきとしている。これらが、政策支援がプロジェクトの迅速な実行と国内供給の持続的拡大へ転化するかを左右する。
分析フレームワーク
Morgan Stanleyは、輸入依存度と埋蔵量のデータ、サプライチェーン集中度の分析、政策レビュー、許認可期間の比較、埋蔵量寿命の感応度分析、ESG考慮、企業別プロジェクト評価を組み合わせている。国内回帰の戦略的根拠から実務上の制約へ進み、次に直接・間接の企業エクスポージャーを特定する。
手法メモ
重要鉱物の需給および輸入依存度分析
レポートは国内生産、輸入、埋蔵量、消費を比較し、米国の鉱物供給に追加投資が必要となり得る理由を示している。
重要鉱物サプライチェーンの波及分析
採掘・精錬能力を、電池、電気自動車、風力タービン、半導体、防衛などの下流用途と結びつけている。
埋蔵量寿命の感応度分析
レポートは埋蔵量を平均消費量で割り、輸入依存度と埋蔵量水準を変化させて、国内埋蔵量が消費を支えられる期間を推計している。
カバー企業に対するEV/EBITDA評価
レポートは、FCXとTeckの2023年末目標株価にEV/EBITDA手法とDCF分析を用いるとしている。
カバー企業に対する割引キャッシュフロー評価
FCXとTeckについて、開示されたWACC前提のDCFをEV/EBITDAと組み合わせている。
MP Materialsの予想P/E目標マルチプル評価
MP Materialsの2023年末目標株価は2024E EPSの24.7xに基づき、選定された鉱業ピアにグリーン株プレミアムを加えて算出されている。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- Freeport-McMoRan (FCX)米国の許認可改革と国内銅プロジェクト開発の潜在的受益者。
- 強み
- Bagdadは銅精鉱を年率約200 million pounds増やす可能性があり、Lone Starには約50 billion poundsの鉱物ポテンシャル、その他の長期的な米国ブラウンフィールド案件には約100 billion poundsの潜在力がある。
- 弱み
- レポートではLone Star硫化物案件の範囲と投資要件はまだ示されていない。
- 比較
- TeckおよびMP Materialsとともに、Morgan Stanleyのカバレッジ内の潜在的受益者として挙げられている。
- リスク
- 銅需要と価格の予想下振れ、操業障害、鉱石品位の変化、労働ストライキ、採掘規制の変更。
- Teck Resources (TECK)NorthMetなどの米国ベースメタル開発プロジェクトを通じた潜在的受益者。
- 強み
- NorthMetは20年の鉱山寿命、年平均約118 million pounds CuEqの生産、約$1.5 billionの初期資本、$2.04/lbのライフ・オブ・マイン現金コストを見込む。
- 弱み
- レポートはCopper-Nickel Mesabaをより長期のプロジェクトと位置づけている。
- 比較
- FCXおよびMP Materialsとともに、Morgan Stanleyのカバレッジ内の潜在的受益者として挙げられている。
- リスク
- 冶金用石炭・金属価格の予想下振れ、操業実行、鉱石品位の変化、労働ストライキ、規制変更。
- MP Materials (MP)米国のレアアース鉱山会社であり、国内の精錬・磁石能力を開発する企業として潜在的受益者。
- 強み
- Mountain Passの再稼働、レアアース酸化物精錬の立ち上げ、テキサス州のNdFeB合金フレーク・永久磁石工場は、完全な米国レアアース供給網を再構築するという同社の目標を支える。
- 弱み
- 精錬施設は依然として立ち上げ段階にあり、磁石工場は建設中である。
- 比較
- FCXの銅プロジェクト、Teckのベースメタル開発と比べ、レアアースと電化へのより直接的なエクスポージャーを持つ。
- リスク
- 電気自動車・風力タービン採用の予想以上の鈍化、需要破壊、代替モーター技術、永久磁石生産に必要な知的財産の取得・開発の難しさ。
主要データ
- 米国の採掘・探鉱投資~0.5% of GDP in 20221960年の~2.0%および1981年の~3.1%のピークから低下。
- 輸入依存度が50%超の米国重要鉱物43 of 50レポートはこれを戦略的サプライチェーンの脆弱性と位置づける。
- 米国の完全輸入依存15 minerals in 20221990年の9種から増加し、15種のうち12種はUSGSの重要鉱物だった。
- 米国の許認可期間7-10 yearsカナダとオーストラリアでは2-3年。
- 中国の精錬シェア68% nickel, 40% copper, 59% lithium, 73% cobalt, 85% rare earths世界の鉱物加工・精錬における集中度を示す。
- 米国のニッケル・コバルト埋蔵量0.4% and 0.8% of global reserves輸入を完全に代替する能力が限られることを示す。
- FRAの環境審査期限2 years for EIS; 1 year for EA許認可効率の向上を意図した法定期限。
影響と示唆
Morgan Stanleyの中心的な含意は、重要鉱物安全保障の重要性が高まる中、米国の採掘、探鉱、加工および関連機器・サービスが持続的な政策の追い風を受け得るということである。国内プロジェクトを進められる開発企業への恩恵が最も大きい一方、埋蔵量の希少性、許認可、地域の反対、鉱石品位、労働力制約、ESG要件が国内回帰の速度と規模を制限する。
リスク
- 許認可改革は、地域社会の反対、訴訟、鉱石品位低下、熟練労働力不足を克服できない可能性がある。
- 米国の埋蔵量制約は、重要鉱物サプライチェーンを完全に国内回帰できないことを意味する。
- ネイティブ・アメリカン居留地、生態系、環境的に敏感な地点の近くでの採掘は、社会的・文化的・土地利用・生物多様性のリスクを生む。
- 金属需要または価格の低下と操業障害は、注目企業の結果を悪化させ得る。
- 国内回帰は一部の世界的排出とサプライチェーンリスクを低下させ得る一方、国内排出と環境影響を増やす可能性がある。
注目点
- さらなる米国の許認可改革とFiscal Responsibility Act条項の実施。
- 探鉱、浸出、加工、資源評価における技術進歩。
- 鉱物供給業者の多様化と国内埋蔵量拡大の進捗。
- 採掘に対する世論と地域社会の支援の変化。
- 重要鉱物に影響する国際貿易制限と輸出規制。
- FCX、Teck、MP Materialsのプロジェクトと施設の開発進捗。