マクロ経済 / 中国貿易:2026年第2四半期の中国の名目輸出入成長は価格上昇により押し上げられ、黒字は緩やかに縮小する見通し
Goldman Sachsは、中国の輸出数量の伸びは第2四半期に減速したものの価格が急反発し、名目輸入の伸びも主に価格に牽引されたとみている。2026年の輸出数量予測を引き上げ、輸入数量予測を引き下げるとともに、経常収支黒字がGDP比3.5%へ緩やかに低下すると予想している。
要約
Goldman Sachsは、中国の輸出数量の伸びは第2四半期に減速したものの価格が急反発し、名目輸入の伸びも主に価格に牽引されたとみている。2026年の輸出数量予測を引き上げ、輸入数量予測を引き下げるとともに、経常収支黒字がGDP比3.5%へ緩やかに低下すると予想している。
- 実質輸出は第2四半期に前年同期比6.6%増となり、第1四半期の14.1%増を下回ったが、輸出価格は前年同期比11.8%上昇し、前年同期比での下落が13四半期連続していた状況を終えた。
- 名目輸入は第2四半期に前年同期比25.8%増となり、輸入価格は前年同期比24.9%上昇した。輸入数量はまちまちで、鉱物製品の輸入は前年同期比17.1%減少した。
- Goldman Sachsは2026年の輸出数量成長予測を7.2%から7.9%へ引き上げ、輸入数量成長予測を6.8%から4.4%へ引き下げた。
- 2026年の財貿易黒字は2025年のGDP比5.4%から4.9%へ低下し、経常収支黒字は3.7%から3.5%へ低下すると見込まれる。
レポート解説
概要
本レポートは、2026年第2四半期の中国の貿易実績をレビューし、財貿易黒字および経常収支の予測を更新している。中心的な結論は、名目輸出の伸びは依然として強いものの、上昇する価格による支えが強まっていること、輸入の伸びも主に価格に牽引される一方で、高い原油価格と弱い内需が数量を圧迫していることである。Goldman Sachsは、輸出数量が今後数四半期にわたり堅調に推移する一方、輸入数量の伸びは比較的低調にとどまると予想している。
主要見解
中国の実質輸出は第2四半期に前年同期比6.6%増となり、第1四半期の14.1%増から大きく減速した。しかし輸出価格は前年同期比11.8%上昇し、名目輸出成長率を18.4%へ押し上げた。輸入では、第2四半期の名目成長率は前年同期比25.8%に達し、輸入価格は前年同期比24.9%上昇したことから、輸入の伸びは数量より主に価格に牽引されたことが示される。Goldman Sachsは2026年について、輸出数量成長予測を7.9%へ引き上げ、輸入数量成長予測を4.4%へ引き下げ、財貿易黒字と経常収支黒字の双方が緩やかに縮小すると予想している。
分析フレームワーク
本レポートは、価格・数量分解、製品別・地域別寄与度分析、対外視点の貿易トラッカー、および経常収支予測フレームワークを用いて、名目貿易成長における価格要因と実質貿易数量要因を区別している。同時に、エネルギー価格、中東紛争、人工知能の設備投資サイクル、観光サービス貿易の回復に基づいて予測を更新している。
手法メモ
名目輸出入の成長を、価格変動と実質数量の変動に分解する。
この手法は、貿易成長が実際の需要・供給拡大によるものか、主に価格上昇によるものかを判定するために用いられる。本レポートは、第2四半期の輸出入双方の名目成長が、価格上昇により大きく支えられたことを示している。
輸出入実績を製品カテゴリーおよび貿易相手地域別に分解する。
本レポートは、鉱物製品、電子機器、機械・設備、輸送機器、石材・ガラス・金属などのカテゴリーと、中東、ユーロ圏、大規模新興市場などの地域における変化を比較している。
貿易相手国が公表するデータを用いて、中国の輸出入動向を推計する。
本レポートによれば、このトラッカーは公式輸出データと概ね整合的である一方、5月の公式輸入成長率をやや過小評価した。5月の輸出推計サンプルは2025年の中国輸出額の31.1%をカバーし、輸入推計サンプルは2025年の中国輸入額の65.5%をカバーした。
財貿易黒字、サービス貿易赤字、輸入価格、輸出競争力を組み合わせて経常収支を予測する。
本レポートは、2026年には財貿易黒字が縮小する一方、インバウンド観光の回復によりサービス貿易赤字が緩やかに縮小し、これらを合わせて経常収支黒字はGDP比3.5%へ緩やかに低下すると予想している。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- 中国の輸出製造業チェーン底堅い輸出数量と価格上昇から直接的に恩恵を受ける。
- 強み
- 強い構造的競争力。特に自動車輸出を中心とする輸送機器は顕著な数量増加を示し、中国はユーロ圏および大規模新興市場で引き続きシェアを拡大した。
- 弱み
- 実質輸出成長は第2四半期に第1四半期比で大きく減速しており、一部の輸出には新興市場経由の積み替えに関連する統計上の複雑性が含まれる可能性がある。
- 比較
- 名目輸出成長は実質輸出成長を上回り、価格寄与がより大きいことを示している。
- リスク
- 外需の減速、貿易摩擦、地域紛争、輸送ルートの混乱が輸出実績に影響を及ぼす可能性がある。
- エネルギー・原油関連輸入輸入価格および輸入数量予測の主要な推進要因。
- 強み
- 高いエネルギー価格が名目輸入額を押し上げた。
- 弱み
- 鉱物製品の輸入数量は第2四半期に前年同期比17.1%減少しており、高い原油価格と弱い需要が実質輸入数量を抑制したことを示している。
- 比較
- 輸入価格の上昇は輸入数量の実績を大幅に上回っており、名目輸入の力強さが必ずしも内需の強さを意味しないことを示している。
- リスク
- 中東紛争、高止まりする原油価格、海峡閉鎖などの事象は、価格およびサプライチェーンの変動性を増幅させる可能性がある。
- 経常収支および人民元マクロ資産経常収支黒字の変化は対外マクロ経済バランスに影響する。
- 強み
- 2026年の経常収支は、Bloombergコンセンサス予測を上回るGDP比3.5%の黒字を維持すると予想される。
- 弱み
- 財貿易黒字は2025年のGDP比5.4%から2026年には4.9%へ低下すると予想される。
- 比較
- 黒字は2026年に緩やかに縮小すると予想されるが、輸入価格圧力の緩和に伴い、経常収支黒字は2027年に再び拡大する可能性があると本レポートはみている。
- リスク
- 輸入価格が高止まりする、または輸出数量が予想を下回る場合、経常収支黒字はさらに縮小する可能性がある。
- 金および石材・ガラス・金属輸入チェーン輸入数量成長における強みの領域を反映する。
- 強み
- 金を含む石材・ガラス・金属の輸入は、第2四半期に数量ベースで前年同期比23.5%増加し、数量で測定されるカテゴリーの中で最も強い実績となった。
- 弱み
- 輸入元は集中している。本レポートは、その他の国カテゴリーには中国の金輸入の主要供給国であるスイスが含まれると指摘している。
- 比較
- このカテゴリーは、鉱物製品輸入数量の減少とは対照的である。
- リスク
- 金価格、安全資産需要、供給国の貿易データの変動が、その後の数値に影響を及ぼす可能性がある。
主要データ
- 第2四半期の実質輸出成長前年同期比6.6%第1四半期の14.1%を下回る。
- 第2四半期の輸出価格上昇率前年同期比11.8%第1四半期は-0.4%であり、前年同期比での下落が13四半期連続していた状況を終えた。
- 第2四半期の名目輸出成長前年同期比18.4%第1四半期の13.7%を上回る。
- 第2四半期の名目輸入成長前年同期比25.8%第1四半期の21.0%を上回り、主に輸入価格に牽引された。
- 第2四半期の輸入価格上昇率前年同期比24.9%第1四半期は5.3%。
- 2026年の輸出数量予測7.9%従来予測の7.2%から引き上げ。
- 2026年の輸入数量予測4.4%従来予測の6.8%から引き下げ。
- 2026年の輸出価格予測前年同期比10.4%従来予測は2.9%。
- 2026年の輸入価格予測前年同期比21.8%従来予測は7.6%。
- 2026年の財貿易黒字予測GDP比4.9%2025年の5.4%を下回る。
- 2026年の経常収支黒字予測GDP比3.5%2025年の3.7%を下回り、Bloombergコンセンサス予測の3.4%をわずかに上回る。
影響と示唆
本レポートは、中国の外需と輸出競争力がマクロ経済成長の重要な支えであり続ける一方、価格要因が名目貿易指標に大きな影響を及ぼしていることを示唆している。エネルギー価格の上昇と人工知能の設備投資サイクルに関連する価格上昇は輸出入価格を押し上げ、GDP比でみた財貿易黒字を縮小させる。その一方、弱い内需と高い原油価格は輸入数量の伸びを制約する。マクロ資産にとって、経常収支は引き続き黒字であるものの、黒字の限界的な縮小は、成長および為替に対する対外黒字の支援力を弱める可能性がある。
リスク
- 中東紛争および海峡閉鎖は貿易フローを混乱させ、エネルギー価格を押し上げる可能性がある。
- 高い原油価格と弱い内需の組み合わせは、引き続き輸入数量の伸びを抑制する可能性がある。
- 外需が弱まる場合、中国の輸出数量の底堅さは本レポートの予想を下回る可能性がある。
- 人工知能の設備投資サイクルは関連製品の価格を押し上げ、価格予測をめぐる不確実性を高める可能性がある。
- 対米輸出の一部は他の新興市場を経由して積み替えられている可能性があり、地域別データの解釈を困難にしている。
- 対外視点の貿易トラッカーは貿易相手国が開示するデータに依存しており、サンプルカバレッジが不十分な場合、公式データと乖離する可能性がある。
注目点
- 実質輸出数量が今後数四半期にわたり堅調な成長を維持するか。
- 高い原油価格と弱い内需が引き続き輸入数量を制約するか。
- 中東紛争、エネルギー価格、輸送ルートが貿易価格にさらなる混乱をもたらすか。
- 電子機器、半導体、機械・設備の価格が人工知能の設備投資サイクルに引き続き支えられるか。
- インバウンド観光の回復に伴い、サービス貿易赤字が引き続き縮小するか。
- 公式・非公式の製造業新規輸出受注指数、および対外視点の貿易トラッカーと公式データの乖離。
- 2026年の経常収支黒字がGDP比3.5%に近づくか、また輸入価格の低下に伴い2027年に反発するか。