US housing and mortgage markets レポート解説
2026年5月の米国住宅価格は前年比1.1%上昇にとどまり、上昇率は12か月間0–2%の範囲に収まった。これは1993年以来最長の同様な局面である。Goldman Sachsは、地域差の主因は前例のない住宅市場パターンではなく、供給と在庫の違いにあるとみている。
要約
2026年5月の米国住宅価格は前年比1.1%上昇にとどまり、上昇率は12か月間0–2%の範囲に収まった。これは1993年以来最長の同様な局面である。Goldman Sachsは、地域差の主因は前例のない住宅市場パターンではなく、供給と在庫の違いにあるとみている。
- 2026年5月の全米住宅価格上昇率は前年比1.1%だった。
- 上位50都市圏の45%で、2026年6月の前年比価格上昇率がマイナスとなった。
- 最大級の都市圏約20地域では、在庫増加が最近の住宅価格変動の73%を説明する。
- New YorkとChicagoの前年比上昇率は4.23%と6.93%で、複数のSunbelt都市圏は約2%下落した。
- Goldman Sachsは2026年の住宅ローン組成総額を約$2.2 trillionと予想している。
- Agency MBSの過去12か月リターンは3.4%で、投資適格社債の2.0%を上回った。
レポート解説
概要
このHousing and Mortgage Monitorは、異例に低調ながらプラスで推移する米国住宅価格上昇、全米数値の背後にある供給主導の地域差、住宅、MBS、商業用住宅ローンの補助指標を検証する。Goldman Sachsは、住宅取得可能性の制約により短期的な住宅価格上昇率は低調にとどまると予想している。
主要見解
Goldman Sachsは、現在を米国住宅価格上昇率が異例に長く低調ながらもプラスで推移している局面と位置付けている。S&P Cotality Case-Shiller National Home Price Indexによると、2026年5月の住宅価格は前年比1.1%上昇した一方、年間上昇率はその前の12か月にわたり0–2%の狭い範囲にとどまった。レポートは、これを1993年8月に終わった20か月間以来の最長の同様な局面とし、持続的に2%未満の伸びとなったのはそれ以外では主に1950年代と1960年代だったと指摘する。低調な伸びの持続は主として住宅取得可能性の制約によるものであり、高い住宅価格と2022年以前を大きく上回る住宅ローン金利が、約4年間にわたり取得可能性を歴史的に厳しい水準にとどめていると分析する。労働市場の不確実性への懸念も消費者信頼感を弱めた。住宅価格と住宅ローン金利がともに最近の過去水準より高い状態が続くとの見通しから、Goldman Sachsは短期的に取得可能性が大きく改善する余地は限られ、住宅価格上昇率の低調さも続くとみている。 全米データは、都市圏レベルでの大きな弱さを覆い隠している。2026年6月には、上位50都市圏の45%で前年比住宅価格上昇率がマイナスとなり、3月の直近ピークである51%からはやや低下したものの、全米の上昇率はわずかながらプラスにとどまった。全米ではプラスである一方で大都市圏のほぼ半数が価格下落となる状況は異例であり、過去には全米の上昇率がゼロをまたいで加速または減速する局面でこうした乖離が生じる傾向があったと指摘する。地域差も大きく、New YorkとChicagoの前年比上昇率はそれぞれ4.23%と6.93%、DetroitとClevelandはおよそ3%上昇した一方、Tampa、Las Vegas、Denver、Seattleはいずれも約2%下落した。 Goldman Sachsは、この地理的な分散を説明する主因として在庫動向を挙げている。最大級の都市圏約20地域では、パンデミック以降の累積在庫増加と最近の住宅価格上昇率の間に、強く統計的に有意な負の関係があり、在庫増加は変動の73%を説明する。特に南部と西部の一部では新築住宅建設の活発化で供給が増えた。また、家計が6%超の住宅ローン金利を新たな標準として受け入れるにつれ、住宅ローンのロックイン効果が徐々に和らいでいること、沿岸部や気候リスクにさらされる市場で住宅所有者保険料が上昇し、別荘、セカンドハウス、投資用不動産が市場に出る可能性があることも要因としている。これらは、南部と西部で価格下落が多い一方、北東部と中西部がより堅調である理由を説明する。 同社は、分散そのものは構造的な異常ではなく、米国住宅市場における通常の特徴だと論じる。現在の都市圏レベルの分散は、全米上昇率がより高かったものの比較的安定していた2015–19年と概ね同程度である。住宅価格上昇率の80パーセンタイルと20パーセンタイルの差を用いると、Philadelphia FedのHistorical Housing Prices Projectによる長期データでは、1890年以降116年間にわたる30都市圏の平均分散は約11%である。2000年以降のより詳細なZillowデータでは平均8%で、最近は約5%である。したがって、レポートは異例なのは地域差の存在ではなく、全米住宅価格上昇率の低さだと位置付ける。 モニターの補助指標も、制約の大きい住宅市場環境を裏付ける。賃貸の取得可能性は住宅ローンによる取得可能性を上回り、Goldman Sachsの住宅取得可能性指数は低水準にとどまり、既存住宅販売は6月に減少し、住宅購入者センチメントは歴史的低水準付近にある。一方で、一部のファンダメンタルズは底堅い。差し押さえ率は0.64%にすぎず、住宅ローン付き物件のうちネガティブエクイティは2.2%、家計の所得比債務と債務返済比率は2026Q1に低下した。もっとも、信用・消費者指標はまちまちで、新規GSE購入住宅ローンの33%は債務所得比が43%超、HELOC債務は2026Q1まで前年比11%増加し、深刻な延滞率はQ1に上昇した。 住宅ローン市場について、Goldman Sachsは2026年の1–4 family住宅ローン組成総額を$2.156 trillion、約$2.2 trillionと予想し、2027年には$2.215 trillionへ増加するとみる。表では、2026年の購入向け組成額を$1.445 trillion、借換え向け組成額を$711 billion、借換え比率を33%としている。期末の30年固定住宅ローン金利予想は2026年が6.45%、2027年が6.30%である。借換えは依然として抑制されている。既存住宅ローンの約85%がPMMSを下回る金利であり、50bp以上の借換えインセンティブを持つ借り手は約4%にとどまるためである。 Agency MBSの環境は最近改善した。カレントクーポンのモーゲージ・ベーシスは当月に124bpまで縮小し、1997–2023年レンジの46th percentileに位置した。ここではパーセンタイルが低いほど割高、高いほど割安を意味する。Agency MBSの過去12か月トータルリターンは3.4%で、投資適格社債の2.0%を上回ったが、15年物Agency MBSの年初来超過リターンはマイナスだった。Agency発行は6月に増加し、30年コンベンショナルおよび政府系MBSの期限前返済速度も上昇した。30年FNMAの期限前返済率は6月に5月比2%上昇した一方、高クーポンのコンベンショナルおよび高クーポンのGinnie Maeコホートでは前月比で期限前返済が減少した。 商業用不動産クレジットは、借換えと不動産ファンダメンタルズの課題に直面している。CMBS延滞は厳しいCRE環境にもかかわらず抑制されているとされるが、2026年には大規模なCMBS満期が到来する。最近のConduit CMBS組成の平均ノートレートは6.2%で、2026年満期ローンの4.3%に対して高く、借換えの障害となる。オフィスと小売の不動産価格は年初来で下落し、CBDオフィス価格は世界金融危機後の水準まで下落、オフィスのキャップレートは過去6か月で拡大した。対照的に、AAA CMBSスプレッドは縮小しており、2025年のConduit CMBS担保に占めるオフィスの割合は14%で、10年以上で最も低い水準だった。
分析フレームワーク
Goldman Sachsはまず、現在の全米住宅価格上昇率を長期の過去局面と比較し、次に主要都市圏における全米結果の内訳を分析して、価格動向を在庫増加と関連付けている。さらに、取得可能性、販売、信用、家計バランスシート、住宅ローン組成、期限前返済、MBSバリュエーション、CMBS借換えの指標を用いて需給分析を補完している。
手法メモ
都市圏の住宅価格上昇率を累積在庫増加および新築供給と比較する。
レポートは供給可能量を主要なメカニズムとして用い、在庫増加が大きい都市圏ほど最近の住宅価格上昇率が弱い傾向にあり、最大級の都市圏約20地域では在庫増加が変動の73%を説明するとしている。
住宅価格上昇率、販売量、在庫、建設指標を通じて住宅市場の状況を評価する。
これにより価格動向を市場活動と利用可能な供給から分け、全米住宅価格上昇が低調である一方で地域ごとの結果が大きく異なる理由を説明している。
カレントクーポンのモーゲージ・ベーシスと過去のバリュエーション・パーセンタイルを用いてAgency MBSのバリュエーションを評価する。
モーゲージ・ベーシスはカレントクーポンの住宅ローン金利と5/10年Treasury金利のスプレッドを測る。レポートは1997–2023年のパーセンタイルを用い、現在のMBSバリュエーションを過去の文脈に置いている。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- Agency MBSレポートは、最近のバリュエーション改善と、投資適格社債を上回る過去のトータルリターンに言及している。
- 強み
- 過去12か月で3.4%のリターンとなり、投資適格社債の2.0%を上回った。カレントクーポンのモーゲージ・ベーシスは124bpまで縮小した。
- 弱み
- 15年物Agency MBSは年初来の超過リターンがマイナスだった。
- 比較
- 過去12か月のトータルリターンは、投資適格社債を1.4 percentage points上回った。
- リスク
- 期限前返済の動向はクーポンとビンテージにより異なり、金利ボラティリティは過去1年で上昇した。
- Conduit CMBS商業用不動産クレジットは、厳しいCREファンダメンタルズと高金利下での借換え負担に結び付いている。
- 強み
- AAA CMBSスプレッドは縮小し、2025年のConduit CMBS担保に占めるオフィスの割合は14%にとどまった。
- 弱み
- 2026年には大きな満期が到来し、不動産ファンダメンタルズは引き続き厳しい。
- 比較
- 最近の組成案件の平均ノートレートは6.2%で、2026年満期ローンの4.3%を上回る。
- リスク
- 不動産価格が弱含むなか、より高いノートレートが借換えを妨げる可能性がある。
主要データ
- 米国住宅価格上昇率1.1% year over yearS&P Cotality Case-Shiller National Home Price Index、2026年5月。
- 低HPAの継続期間12 months within a 0–2% range1993年8月に終わった20か月間以来、最長の同様な局面。
- マイナスHPAの上位50都市圏の割合45%2026年6月時点。3月の直近ピーク51%から低下。
- 在庫増加の説明力73%最大級の都市圏約20地域における最近のHPA変動の説明割合。
- 2026年の住宅ローン組成総額予想$2.156 trillion1–4 family住宅ローン組成総額は約$2.2 trillion。
- 2026年の30年固定住宅ローン金利予想6.45%期末予想。2027年予想は6.30%。
- 借換えインセンティブを持つ借り手4%少なくとも50bpの借換えインセンティブを持つ既存30年コンベンショナル住宅ローン。
- Agency MBSの12か月トータルリターン+3.4%投資適格社債の+2.0%に対して。
- CMBS借換え金利差6.2% versus 4.3%最近のConduit CMBS組成の平均ノートレートと2026年満期ローンの比較。
影響と示唆
レポートの中心的な含意は、住宅取得可能性が低いままである限り、全米の住宅価格上昇率は低調に推移する可能性が高い一方、地域ごとの結果は供給・在庫条件に応じて引き続き分かれるという点である。住宅ローンおよびクレジット市場では、限定的な借換えインセンティブが借換え活動を抑える一方、CMBSは延滞が抑制されAAAスプレッドが縮小しているにもかかわらず、大きな借換え金利差に直面している。