China:中国のSPRは一時的に世界の石油市場の緩衝材となっているが、備蓄積み増し需要が石油価格を再び押し上げる可能性がある
Nomuraは、イラン戦争とホルムズ海峡の混乱後、中国が原油輸入を大幅に削減し、主に国内生産の増加、電動化、需要抑制ではなく戦略石油備蓄を通じてショックを吸収したとみている。
要約
Nomuraは、イラン戦争とホルムズ海峡の混乱後、中国が原油輸入を大幅に削減し、主に国内生産の増加、電動化、需要抑制ではなく戦略石油備蓄を通じてショックを吸収したとみている。
- 中国の原油輸入は2026年Q2に前年同期比30.3%、6月に同41.3%減少し、世界の石油市場への圧力を大幅に緩和した。
- 本レポートは、中国のSPRが2025年末の約1,250mbから2026年6月末の約1,015mbへ減少し、Q2の純消費量は約320mbだったと推計している。
- 国内原油生産、電力消費、石油製品輸出規制では輸入急減を十分に説明できず、主要な緩衝源は在庫放出だった。
- ブレントがUSD60/bblを下回れば、Nomuraは中国がSPR補充のため輸入を大幅に増やし、世界の需給逼迫を再び悪化させる可能性があると予想している。
レポート解説
概要
本レポートは、イラン戦争とホルムズ海峡閉鎖後、中国が原油輸入を大幅に削減し、戦略石油備蓄を取り崩すことで、一時的に世界の石油市場の「ショックアブソーバー」となった経緯を分析している。中国は世界最大の原油輸入国であり、2025年の輸入量は11.6mbpdに達し、国内消費の約73%、世界生産の約10.9%に相当した。紛争勃発後、中国の輸入は急減し、国際石油価格の抑制に寄与したが、その在庫緩衝力には限りがある。
主要見解
中核的な見方は、中国の輸入減少が主にSPR放出によるものであり、国内原油生産の増加、電力への代替、価格による燃料需要抑制、または石油製品輸出規制によるものではないという点である。中国は2025年末時点で約12億~13億バレルのSPRを保有しており、純原油輸入の約112日分に相当したが、2026年6月末までに約19%が消費された。中国には短期的に追加ショックを吸収する能力がなおあるが、エネルギー安全保障上の理由から、石油価格が許容可能な水準に戻れば北京は徐々に輸入を再開する可能性が高く、ブレントがUSD60/bblを下回れば備蓄積み増しが加速する可能性がある。
分析フレームワーク
本レポートは、原油輸入、国内原油生産、電力消費、EV普及率、石油製品の輸出入、および推計SPR在庫の変化を分解することにより、中国の輸入削減の主な源泉を評価している。方法論では2025年末を戦前の在庫ベースラインとし、通常の輸入成長には増分SPR需要を含まないと仮定し、2026年Q1およびQ2の輸入不足から在庫積み増しと放出を推計している。
手法メモ
輸入減少を在庫放出、国内生産増加、需要抑制、エネルギー代替、および石油製品貿易の変化に分解する。
本レポートは、国内生産増加、電力への代替、石油製品輸出規制が十分な説明にならないことを示し、Q2の急激な輸入減少の主因はSPR放出だったと結論付けている。
戦略備蓄量を純輸入需要で割ることにより、エネルギー安全保障の緩衝力を測定する。
2025年末の中国の約1,250mbのSPRは、純原油輸入の約112日分をカバーしていた。絶対量は非常に大きいが、約200日超の日本および韓国よりカバー日数は少ない。
中国が輸入を再開しSPRを補充する時期を評価するため、石油価格の許容ゾーンを用いる。
本レポートは、7月の輸入回復はブレントが以前にUSD90/bblを下回った際に行われた購入に対応している可能性を示唆している。ブレントがUSD60/bblを下回れば、中国は備蓄積み増しのため輸入を大幅に増やす可能性がある。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- ブレント原油/世界の石油価格中国の輸入削減は一時的に需要を減らし、石油価格への圧力を緩和した。その後の備蓄積み増しは需要を追加する。
- 強み
- 中国のSPR放出は世界市場に一時的な緩衝材を提供し、極端な価格ショックの可能性を低下させた。
- 弱み
- この緩衝材は在庫取り崩しに依存しており、ホルムズ海峡からの供給回復を恒久的に代替することはできない。
- 比較
- 協調的なIEA放出と比べ、中国はIEA加盟国ではないが、絶対的な在庫量はより大きく、限界需要への影響も大きい。
- リスク
- 石油価格が低い時に中国が急速に備蓄を積み増せば、供給不足と相まってブレントを押し上げる可能性がある。
- 中国の戦略石油備蓄(SPR)現在の輸入減少を説明する中核変数であり、エネルギー安全保障上の緩衝材。
- 強み
- 2025年末の絶対量は約12億~13億バレルで世界最大級であり、純輸入の約112日分をカバーしていた。
- 弱み
- 輸入日数ベースのカバー率は日本と韓国より低く、6月末までにすでに約19%が消費されていた。
- 比較
- 中国の絶対在庫量は米国SPRを上回るが、純輸入日数ベースのカバー率は日本の約200日、韓国の約208日を下回る。
- リスク
- 危機が長期化すれば、在庫取り崩しのペースにより北京はより早期に輸入を再開せざるを得なくなる可能性がある。
- 中国の精製・石油製品市場輸入減少は原油処理量および石油製品の需給に影響し、輸出規制は部分的な緩衝材にとどまる。
- 強み
- 一部燃料の輸出を規制することで、政策的に国内供給を維持できる。
- 弱み
- 石油製品輸入も急減しており、国内市場は依然として在庫または追加的な原油処理に依存する可能性がある。
- 比較
- SPR放出と比べ、石油製品輸出規制の輸入減少に対する説明力は小さい。
- リスク
- 石油製品の純流出が続けば、国内在庫と製油所操業への圧力が高まる可能性がある。
- 中国の電動化と電力システム燃料需要を長期的に削減するが、短期的に原油輸入不足を代替することはできない。
- 強み
- 急速に上昇するEV普及率は、輸送用燃料需要を構造的に減らす一助となるはずである。
- 弱み
- EV充電は全国電力消費の2%未満であり、短期ショックを吸収する能力を制限している。
- 比較
- 電動化は複数年にわたる構造的トレンドであり、戦時下の迅速な調整手段ではない。
- リスク
- 電動化の短期的な代替効果を過大評価すると、石油製品の需給圧力を過小評価する可能性がある。
主要データ
- 中国の原油輸入の減少2026年Q2は前年同期比-30.3%、6月は前年同月比-41.3%輸入成長率は1~2月の15.6%から、紛争後の3月から6月にかけて連続的なマイナス成長へ急転した。
- 中国の2025年原油輸入量11.6mbpd中国の総消費量の約73%、世界の総生産量の約10.9%に相当する。
- ホルムズ海峡に関連する輸入ホルムズ海峡経由の中国の原油輸入は6月に前年同月比86.2%減少戦前には1日約15mbの原油が同海峡を通過しており、そのうち中国が約39%を占めていた。
- SPRのベースライン量2025年末時点で約1,250mb第三者推計に基づき、本レポートは政府と国有企業の在庫合計が約12億~13億バレルだったとみている。
- SPR消費Q2に約320mb、6月に約151mb減少本レポートは、中国のSPRが2026年Q1に85mb増加した後、Q2に大幅に放出されたと推計している。
- 6月末のSPR残高約1,015mb2025年末の約1,250mbから約19%減少。
- 在庫の持続可能性6月の放出ペースで残り約6.7カ月この推計は、6月の在庫消費ペースが継続することを前提とする。
- 国内原油生産2026年Q2に前年同期比0.4%増Q1の1.3%増を下回り、輸入減少を相殺するには不十分だった。
- 電力への代替Q2の電力消費は前年同期比5.5%増、EV普及率は62%へ上昇EV充電用電力は全国電力消費の2%未満にとどまり、突発的な石油供給ショックを吸収するには不十分だった。
- 石油製品貿易石油製品輸出はQ2に前年同期比26.5%減、輸入は同51.8%減輸出規制で説明できる原油輸入減少はごく一部にすぎず、石油製品には引き続き純流出圧力があった。
影響と示唆
世界の石油市場にとって、中国の輸入削減は一時的に供給ショックを緩和し、石油価格のさらなる制御不能な上昇を防ぐ重要な緩衝材となった。しかし、この緩衝材は在庫取り崩しに由来し、期限がある。中東の供給混乱が続く、または中国が低価格局面で積極的に備蓄を積み増す場合、世界市場は湾岸地域の供給制約と中国輸入の同時回復に直面し、石油価格の上振れリスクが再び高まる可能性がある。
リスク
- イラン戦争またはホルムズ海峡の混乱が継続し、世界の原油供給不足が長期化する。
- 中国のSPRが予想より速く枯渇し、輸入の早期回復を余儀なくされる。
- ブレントがUSD60/bblを下回り、中国の集中的な備蓄積み増しを誘発して世界需要を再び押し上げる。
- 国内原油生産を急速に増やせず、中国が輸入を国内供給で代替する能力が制限される。
- 石油製品の輸出入変動が、国内燃料在庫への圧力を強める可能性がある。
注目点
- 中国の月次原油輸入および高頻度の海運データが回復を続けるかどうか。
- ブレントがUSD90/bblまたはUSD60/bblを下回るかどうか。これらはレポートで言及された潜在的な購入・備蓄積み増しの閾値である。
- ホルムズ海峡の通航量および中東供給の回復ペース。
- 推計される中国SPR残高および国有石油会社の商業在庫の変化。
- 国内の石油製品輸出規制、燃料価格調整、小売燃料販売の成長。