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レポート解説Hilo Research

European and global steel market レポート解説

Deutsche Bankは鉄鋼セクターへの建設的な見方を維持する。欧州HRC価格は前週に小幅下落したが、鉄鉱石と石炭の下落でスプレッドは拡大し、新しいEUセーフガード制度が西側市場の価格を支えている。

機関Deutsche Bank
日付20260811
業界steel

要約

Deutsche Bankは鉄鋼セクターへの建設的な見方を維持する。欧州HRC価格は前週に小幅下落したが、鉄鉱石と石炭の下落でスプレッドは拡大し、新しいEUセーフガード制度が西側市場の価格を支えている。

セクター見通しは建設的。トップピックはVoestalpine(Buy、TP EUR60)、thyssenkrupp(Buy、TP EUR16.0)、Aperam(Buy、TP EUR65)。
鉄鋼欧州HRC鉄鋼スプレッドEUセーフガード原材料貿易政策
  • ドイツHRCはEUR715-725/tで前週比EUR2/t安だったが、新セーフガード措置開始後、6月下旬からEUR48/t上昇している。
  • ドイツBOF HRCの原材料スプレッドはUSD280/tからUSD296/tへ拡大し、中期サイクル水準を大幅に上回った。
  • 米国HRCはUSD4/t上昇してUSD1,295-1,310/t、BOFスプレッドはUSD781/tに達した。
  • 鉄鉱石はUSD94-96/t、プレミアム原料炭はUSD210-220/tまで下落した。
  • 8月10日時点で、主要鋼材カテゴリーにおけるEU割当枠の消化はすでに大きかった。

レポート解説

概要

このSteel Spread Trackerは、地域別の鉄鋼価格、生産コスト・スプレッド、原材料、貿易フローを検証する。Deutsche Bankは、欧州需要は軟調だが、新たなEUセーフガード制度、CBAM、原材料コストの低下が西側市場の鉄鋼価格とマージンを支えていると論じる。

主要見解

欧州HRCの価格モメンタムは一服したが、反転したわけではない。北欧HRCは前週比EUR2/t安のEUR715-725/t、南欧価格はEUR715-725/tで横ばいだった。為替の影響で、両地域の米ドル建てレンジは上昇した。重要なのは、新しいEU貿易保護措置が7月1日に始まって以降、北欧HRCが6月下旬からEUR48/t反発している点である。ドイツBOF HRCの主要原材料コストに対するスプレッドは前週のUSD280/tからUSD296/tへ拡大し、中期サイクル水準を大幅に上回った。限界生産者のスプレッドもここ数週間、中期サイクル水準を上回っている。Deutsche Bankは、需要低迷と中東情勢への懸念にもかかわらず、マージンは強靭だとみている。 レポートは、新たなEUセーフガード枠組みが欧州鉄鋼に重要な構造的支援をもたらすと評価する。国別割当枠は7月1日に直ちに開始され、グローバル割当枠であれば各国が早期に枠を埋めようとするおそれを回避した。Deutsche Bankは、輸入市場シェアを制約しつつ既存の貿易相手国に有利となるよう輸入構成を再調整するため、これを大きな転換点と位置付ける。8月10日時点の枠消化率は、HRCが48%、めっき鋼板が59-62%、厚板が58%、鉄筋が63%、線材が53%と高い。トルコは冷延品を除く大半の炭素鋼グレードで割当枠を使い切り、韓国も四半期枠のかなりの部分を使用した。同社は、セーフガード措置とCBAMが欧州スプレッドの持続的な回復を支えると予想している。 米国市場はより強い状態が続いた。米国HRCは前週比USD4/t高のUSD1,295-1,310/tで、堅調なリードタイムと国内の価格規律が市場心理を支えた。価格は年初来USD301/t上昇した。米国BOFの主要原材料コストに対するスプレッドは前週比USD18/t拡大してUSD781/t、EAF HRC対スクラップのスプレッドはUSD5/t拡大してUSD732/tとなった。米国厚板価格はUSD2/t下落してUSD1,460-1,470/tとなったが、2026年にはなお約USD375/t上昇している。 中国の価格と需要シグナルは弱かった。国内鉄筋はRMB21/t下落してRMB3,142/t、HRCはRMB35/t下落してRMB3,242/tとなった。3か月間で、鉄筋はRMB156/t、HRCはRMB243/t下落した。中国HRC輸出価格はUSD475-485/tで、前週比USD1/t下落した。輸送費と50%のSection 232関税を考慮すると、米国パリティ価格はUSD870-890/tとなる。中国の鉄鋼価格低下と需要低迷は、世界需要環境への慎重な見方の一部を構成する。 原材料価格の低下は鉄鋼コスト環境を改善した。鉄鉱石微粉鉱石(62% Fe)は週中USD3/t下落してUSD94-96/tとなり、鉄鋼需要の低迷を背景に3か月間でUSD16/t下落した。プレミアム原料炭はUSD14/t下落してUSD210-220/tとなった。米国スクラップはUSD360-370/tで横ばい、欧州スクラップはUSD1/t下落してUSD325-340/tとなった。欧州鉄鋼価格の上昇が一服しても、鉱石と石炭のコスト低下によりスプレッドが拡大したと説明できる。 株式では、Deutsche Bankは建設的な業界見通しを維持し、Voestalpine、thyssenkrupp、Aperamを選好銘柄に挙げる。Voestalpineについては、脱炭素化設備投資がピークでも安定的なフリーキャッシュフローを生むこと、自助努力の余地、過小評価された鉄道インフラ事業を評価する。thyssenkruppでは、潜在的なカタリストと鉄鋼政策の追い風が根拠とされる。Aperamについては、平均回帰の可能性、有機的成長見通し、強い中期サイクルのフリーキャッシュフロー創出力、株主還元を強調している。

分析フレームワーク

このトラッカーは、地域別の鉄鋼販売価格と推定BOF・EAF現金コストを比較してスプレッドとマージンを評価する。次に、原材料の動き、地域別価格変動、貿易政策、割当枠の消化状況、輸入統計との関係を分析し、選好銘柄については企業固有のバリュエーションとキャッシュフローも考慮する。

手法メモ

  • 業界・産業分析フレームワーク数量・価格分解

    地域別の価格対コスト・スプレッド追跡

    レポートはHRCなどの鉄鋼価格と、原材料およびスクラップを基にした現金コストを比較し、販売価格と投入コストが生産者マージンに与える影響を示す。

  • 業界・産業分析フレームワーク需給フレームワーク

    需給・貿易政策分析

    需要低迷、輸入割当枠、貿易保護、原材料価格を、地域別の鉄鋼価格とスプレッドに結び付けている。

  • バリュエーション手法DCF(割引キャッシュフロー法)

    DCFベースのバリュエーション

    Deutsche Bankは、カバレッジ対象の鉄鋼会社に対してDCFバリュエーションを用いると明記している。

  • バリュエーション手法SOTP(事業別合算)評価

    SOTP分析

    レポートはSOTP分析も用いると記載しており、これは企業を単一の事業として扱うのではなく、個別の事業構成要素を評価する手法である。

資産マッピングと比較

投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。

  • Voestalpine (VOES.VI)
    選好する炭素鋼株
    強み
    脱炭素化設備投資がピークにあるにもかかわらず安定したフリーキャッシュフローを生み出し、自助努力の余地と過小評価された鉄道インフラ事業を持つ。
    弱み
    脱炭素化設備投資のピークが事業上の負担として指摘されている。
    比較
    炭素鋼のトップピックの中で最も堅固な株式ストーリーと説明されている。
    リスク
    鉄鋼価格、コスト、成長、政策を含む、レポート記載のセクターリスクにさらされる。
  • thyssenkrupp (TKAG.DE)
    選好する炭素鋼株
    強み
    潜在的なカタリストと鉄鋼における政策追い風。
    比較
    Deutsche Bankの炭素鋼トップピックに含まれる。
    リスク
    鉄鋼価格、コスト、成長、政策を含む、レポート記載のセクターリスクにさらされる。
  • Aperam (APAM.AS)
    選好するステンレス鋼株
    強み
    平均回帰の可能性、有機的成長見通し、強い中期サイクルのフリーキャッシュフロー創出力、株主還元。
    比較
    ステンレス鋼での選好銘柄。
    リスク
    鉄鋼価格、コスト、成長、政策を含む、レポート記載のセクターリスクにさらされる。

主要データ

  • ドイツHRC価格EUR715-725/t前週比EUR2/t安。北欧価格は6月下旬からEUR48/t上昇。
  • ドイツBOF HRCスプレッドUSD296/t前週のUSD280/tから上昇し、中期サイクル水準を大幅に上回る。
  • 米国HRC価格USD1,295-1,310/t前週比USD4/t高、年初来USD301/t高。
  • 米国BOF HRCスプレッドUSD781/t前週比USD18/t上昇。
  • 鉄鉱石微粉鉱石(62% Fe)USD94-96/t前週比USD3/t安、3か月でUSD16/t安。
  • プレミアム原料炭USD210-220/t前週比USD14/t安。
  • EU HRC割当枠消化率48%新セーフガード制度下の8月10日時点の消化率。

影響と示唆

レポートは、需要が軟調でも貿易保護とCBAMがより強い欧州の価格対コスト・スプレッドを維持し、原材料価格の低下がマージンをさらに支えると論じる。これに対し、米国の価格とマージンは大幅に強く、中国の鉄鋼価格は弱いと対比している。

リスク

  • 世界経済成長が予想に届かない可能性。
  • 鉄鋼価格が予想を下回る、または上回ることで、利益を損なう、または押し上げる可能性。
  • 原材料およびその他の操業コストが予想より高い、または低いことで、利益成長を制約、または支援する可能性。
  • 鉄鋼貿易に対する政府の政治的影響がセクターに影響する可能性。
  • 拡張プロジェクトが予想どおり進展しない可能性。
  • M&Aのバリュエーションおよび統合リスクが企業に影響する可能性。

注目点

  • 欧州の鉄鋼需要と中東情勢の展開。
  • 国別EUセーフガード割当枠の実施と消化状況。
  • CBAMと貿易保護が欧州の価格設定とスプレッドに与える影響。
  • 鉄鉱石、原料炭、スクラップ価格の動き。
  • 米国のリードタイム、国内価格規律、HRCスプレッド。
  • 中国の国内・輸出鉄鋼価格と示唆される需要。
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