SpaceX(SPCX) レポート解説
Deutsche Bankは、Connectivityの成長とAIのEBITDA黒字化に支えられ、2Q26の売上高は概ね予想線、収益性はコンセンサスを上回ると見込む。短期的にはロックアップによる株式供給が大きな重荷だが、バリュエーションのストレステストはSpaceとConnectivityだけで現在の時価評価額をほぼ裏付けることを示している。
要約
Deutsche Bankは、Connectivityの成長とAIのEBITDA黒字化に支えられ、2Q26の売上高は概ね予想線、収益性はコンセンサスを上回ると見込む。短期的にはロックアップによる株式供給が大きな重荷だが、バリュエーションのストレステストはSpaceとConnectivityだけで現在の時価評価額をほぼ裏付けることを示している。
- 2Q26売上高は$6.671bn、前年比64%増と予想され、コンセンサスの$6.865bnに対する。
- 調整後EBITDAは$2.158bnと見込まれ、コンセンサスの$2.026bnを上回る。
- AI売上高は前四半期比で2倍超の$1.876bnとなり、EBITDAは$157mの黒字化が見込まれる。
- 設備投資は$16.890bn、フリーキャッシュフロー流出は$10.439bnと予想される。
- 912m株のロックアップ解除が8月6日から予定され、その後も段階的な解除が続く。
- SOTPストレステストでは、SpaceとConnectivityの合計価値は$1.1tn-$1.6tnとなる。
レポート解説
概要
この会社アップデートは、SpaceXの初回決算をプレビューし、直近の株価下落の要因を検証する。Deutsche Bankは長期的な強気見通しを維持する一方、段階的なIPOロックアップ、AIを巡る不確実性、Teslaとの合併可能性の複雑さ、予想を下回るパッシブ指数買いを短期的な障害として指摘している。
主要見解
Deutsche Bankは、長期的な強気の投資判断は維持されているものの、SpaceX株は大きな下落圧力にさらされていると述べる。主因は今後のロックアップ満了に対する戦術的な懸念であり、AI事業を巡る不確実性、Teslaとの合併可能性の複雑さ、予想を下回るパッシブ指数買いがこれを悪化させたとしている。ロックアップ解除の消化後には株価が安定する可能性があり、大型の政府または政府系AI契約の発表は株価に好意的に受け止められる可能性がある。 2Q26について、Deutsche Bankは売上高を$6.671bnと予想している。これは2Q25の$4.071bnから64%増、1Q26の$4.694bnを上回る一方、コンセンサスの$6.865bnを下回る。粗利益は$3.864bn、粗利益率は57.9%と予想され、コンセンサスの53.4%、1Q26の49.1%、2Q25の43.9%を上回る。営業費用はR&D $4.585bn、SG&A $887mを含む$5.472bnと見込まれ、営業損失は$1.608bn、営業利益率はマイナス24.1%となる。調整後EBITDAは$2.158bnと予想され、コンセンサスの$2.026bnを上回り、マージンは1Q26の24.0%およびコンセンサスの29.5%に対して32.3%となる。 Connectivityは引き続き最大の売上・EBITDA寄与部門である。Deutsche Bankは期末のブロードバンド加入者数を12.5mと想定しており、1Q26の10.3mおよびコンセンサスの12.2mを上回る。一方、月次ARPUは前四半期比$3低下して$63となり、コンセンサスの$66を下回る。この前提により、Connectivity売上高は前年比54%増の$3.974bnとなり、コンセンサスの$3.883bnを上回る。セグメント粗利益は$1.947bn、粗利益率は49.0%、調整後EBITDAは$2.349bn、マージンは59.1%と見込まれる。加入者数とARPUに加え、同レポートは米国の地上移動通信ネットワークについて、SpaceXが自社構築、MVNO利用、既存事業者買収のいずれを選ぶのかという経営陣の見解に注目している。 AIセグメントは、Anthropicとのネオクラウド契約による四半期の一部寄与の恩恵を受けると見込まれる。Deutsche BankはAI売上高を$1.876bnと予想しており、1Q26の$818mの2倍超、前年比155%増となるが、コンセンサスの$2.084bnは下回る。AI粗利益は$1.351bn、粗利益率は72.0%と予想され、いずれもコンセンサスを上回る。調整後EBITDAは$157mと、コンセンサスの$16mの損失および1Q26の$609mの損失から改善する見込みである。期末計算能力は1.40 GWと、1Q26の0.96 GW、2Q25の0.31 GWから増加し、年末までに2 GWに近づくと予想される。ただし、Grokのモデル開発加速とオープンウェイトまたはオープンソースモデルとの競争、Cursor買収、ネオクラウド需要の動向、Googleによる容量の一時的な利用の可能性、報じられた米国政府との契約協議を不確実要因として挙げている。 Spaceでは、Deutsche Bankは売上高を$820mと予想している。これは前年比10%増だが、コンセンサスの$874mを下回る。粗利益は$566m、粗利益率は69.0%と予想される一方、調整後EBITDAは$349mの赤字が続く見通しである。2Q26の外部Falcon 9打ち上げは9回と追跡しており、コンセンサスと一致し、1Q26の7回を上回る。表では2Q25に10回の打ち上げが示される一方、本文では1Q25の11回との比較も行われている。Starship Flight 13の進展を受け、主な運用上の焦点は次の打ち上げ時期と、第2段Shipを打ち上げ塔で回収する試みである。 AI計算能力の拡張には多額の投資が必要となる。Deutsche Bankは2Q26の設備投資を主にAIインフラ向けの$16.890bnと予想しており、1Q26の$8.912bnから増加するが、コンセンサスの$18.584bnを下回る。その結果、フリーキャッシュフローは$10.439bnの流出と予想しており、1Q26の$7.865bnの流出より悪化するものの、コンセンサスの$13.821bnの流出よりは小さい。この支出は急速な容量拡大を支えるが、大きなキャッシュフロー負担でもある。 IPOロックアップは、非典型的な段階的構造を採るため、直近のテクニカルな重荷である。13bn超の株式のうち、浮動株は639m株にとどまった。報告された空売り残高は7月15日の165m株から7月29日の219m株へ増加した。8月6日から912m株が解除され、その後15-20日ごとに300m超の追加解除が予定され、さらに3Q26決算時には約1.3bn株が市場に出る見込みである。Deutsche Bankは、この追加供給への懸念が株価下落の主な戦術的要因とみる一方、解除が消化されれば安定化する可能性があると考えている。 最後に、株価が約$108、時価評価額が約$1.4tnで、$255の目標株価を大きく下回るため、Deutsche BankはSOTPバリュエーションをストレステストしている。Blue Originは$130bnの評価額で$10bnを調達したと報じられており、SpaceXのより高い打ち上げ頻度とStarshipの進展を反映して3-5倍のプレミアムを適用すると、Space事業の価値は$390bn-$650bnとなる。Connectivityは2027E EV/EBITDA 57.5xで$956bn、フレームワーク下限の45xでは$748bnと評価される。両事業を合わせた価値は$1.1tn-$1.6tn、中央値は約$1.35tnとなる。Deutsche Bankは、現在の評価額がAIにほとんど、または全く価値を与えていないと結論付け、これを過度に厳しいとみている。
分析フレームワーク
Deutsche Bankはまず、直近の株価下落を明確なテクニカル要因と戦略上の懸念に結び付ける。次に、打ち上げ件数、ブロードバンド加入者数、ARPU、計算能力といった営業KPIからセグメント別の2Q26予想を組み立て、前期・前年およびコンセンサスと比較し、資金需要を評価する。その後、今後のロックアップ解除による株式供給を整理し、最後にSOTPでバリュエーションをストレステストする。
手法メモ
SOTPバリュエーションのストレステスト
レポートはSpaceとConnectivityをそれぞれ評価して合算し、その結果をSpaceXの時価評価額と比較することで、市場がAIにどの程度の価値を与えているかを推定している。
Connectivityに対する2027E EV/EBITDAバリュエーション
Connectivityは2027E EV/EBITDA 57.5xで評価され、45xを下限ストレスケースとして用いることで、それぞれ$956bnと$748bnの評価額を算出している。
Blue Originを用いた類似企業比較評価
レポートはBlue Originの報告済み$130bnの資金調達時評価額を参照し、SpaceXのより高い打ち上げ頻度とStarshipの進展を反映して3-5倍のプレミアムを適用している。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- SpaceX (SPCX.OQ)Buy評価およびUSD 255.00の目標株価が付与された主要カバレッジ企業。
- 強み
- 急速な加入者成長、多額のConnectivity EBITDA、改善するAI採算性、高い打ち上げ頻度、Starshipの進展。
- 弱み
- 巨額の設備投資とフリーキャッシュフローの流出、赤字のSpace EBITDA、段階的な株式解除による短期的な下押し圧力。
- 比較
- 同レポートは、より高い打ち上げ頻度とStarshipの進展を理由に、SpaceXのSpace事業をBlue Originの報告済み評価額の3-5倍で評価している。
- リスク
- ロックアップによる株式供給、AIの不確実性、Teslaとの合併可能性の複雑さ、パッシブ投資家の買い需要の弱さ、今後の打ち上げに関する実行リスク。
- Blue OriginSpaceXのSpaceセグメントの評価基準として用いられる比較対象。
- 強み
- $130bnの評価額で$10bnを調達したと報じられている。
- 弱み
- レポートは、その打ち上げ頻度と進展がSpaceXより低いと説明している。
- 比較
- SpaceXのSpaceセグメントには3-5倍の評価プレミアムを適用し、$390bn-$650bnを示唆している。
- Anthropic2Q26のAI売上に一部寄与するネオクラウド契約の顧客または取引相手。
- 強み
- 同契約は、AI売上の予想される前四半期比での加速を支える。
- 弱み
- 見積もりに含まれる寄与は四半期の一部にとどまる。
- Googleネオクラウド見通しで議論されたAI容量の顧客または取引相手。
- 強み
- 現在の容量利用がネオクラウド需要に寄与している。
- 弱み
- レポートは、Googleが制約下での一時的なつなぎとして容量を利用している可能性を示唆している。
- リスク
- Google自身の容量制約が緩和すれば、需要が弱まる可能性がある。
- TeslaSpaceXとの業務上の重なりが増している、合併の可能性がある取引相手。
- 強み
- レポートは、Terafab計画を含む協業と重なりの拡大に言及している。
- 弱み
- いかなる統合も適切な正式手続きを要し、複雑さを増す。
- リスク
- Teslaとの合併可能性を巡る不確実性は、SpaceX株の重荷となる要因の一つに挙げられている。
- CursorSpaceXのAI戦略における複数の変動要因の一つとして言及された買収案件。
- 弱み
- レポートは詳細な営業面または財務面の影響を示していない。
- リスク
- 買収に関する不確実性がAI見通しの複雑さに寄与している。
主要データ
- 2Q26E売上高$6.671bn前年比64%増。コンセンサスは$6.865bn。
- 2Q26E粗利益率57.9%1Q26の49.1%およびコンセンサスの53.4%に対して。
- 2Q26E調整後EBITDA$2.158bnコンセンサスの$2.026bnを上回る。予想マージンは32.3%。
- ブロードバンド加入者数12.5m1Q26の10.3mおよびコンセンサスの12.2mに対する期末予想。
- ブロードバンド月次ARPU$63前四半期比$3低下し、コンセンサスの$66を下回る。
- Connectivity売上高$3.974bn前年比54%増、コンセンサスの$3.883bnを上回る。
- AI売上高$1.876bn前年比155%増、1Q26水準の2倍超だが、コンセンサスの$2.084bnを下回る。
- AI調整後EBITDA$157m1Q26の$609mの損失およびコンセンサスの$16mの損失に対して。
- 期末計算能力1.40 GW1Q26の0.96 GWに対して。年末までに2 GWに近づく見込み。
- 外部打ち上げ回数92Q26予想。コンセンサスと一致し、1Q26の7回から増加。
- 2Q26E設備投資$16.890bn主にAI計算能力向け。コンセンサスは$18.584bn。
- 2Q26Eフリーキャッシュフロー-$10.439bn1Q26の-$7.865bnおよびコンセンサスの-$13.821bnに対して。
- 最初のロックアップ解除トランシェ912m shares2026年8月6日から解除予定。
- SpaceとConnectivityのSOTP価値$1.1tn-$1.6tn中央値は約$1.35tn。
- 株価と目標株価$108.37 / $255.002026年7月31日時点の株価とDeutsche Bankの目標株価。
- 52週間レンジ$108.37-$201.80会社概要に記載されたレンジ。
影響と示唆
Deutsche Bankは、Connectivityの力強い成長、AI収益性の改善、そして主にSpaceとConnectivityで裏付けられる評価額が長期的な投資根拠を維持すると主張している。ただし短期的には、ロックアップ解除の規模と頻度、AIとTeslaを巡る戦略的不確実性、多額のAI関連資金流出が引き続き変動性を生む可能性がある。
リスク
- 段階的なIPOロックアップにより大量の追加株式供給が発生し、株価への圧力が長引く可能性がある。
- オープンウェイトまたはオープンソースとの競争、買収の複雑さ、ネオクラウド需要が一時的である可能性により、AIの成果には不確実性が残る。
- Teslaとの合併可能性は、戦略面および手続き面で大きな複雑さを伴う。
- パッシブ指数買いはDeutsche Bankの予想を下回っている。
- AIインフラ投資が極めて高い設備投資と、四半期で$10bn超の予想フリーキャッシュフロー流出を生んでいる。
- SpaceセグメントはEBITDA赤字が続いており、将来の業績はStarshipの打ち上げおよびタワー回収の実行に一部依存する。
- ブロードバンド加入者数が増加する一方で、ARPUは前四半期比で低下すると予想される。
注目点
- 8月6日から始まる912m株の解除と、その後15-20日ごとのトランシェを市場がどのように消化するか。
- Connectivity事業に関する経営陣の加入者数およびARPU見通し。
- SpaceXが米国の地上移動通信ネットワークに自社構築、買収、MVNOのいずれを選択するか。
- 今後のStarship打ち上げの時期と、第2段Shipのタワー回収試行。
- 年末までに2 GW近くへ向かうAI計算能力の進捗。
- 大型の米国政府または政府系AI契約の有無と、ネオクラウド需要の持続性。
- Cursor買収に関する追加情報、およびTeslaとの統合に関する正式手続きの有無。