China’s hog industry レポート解説
HSBCは、8月の繁殖雌豚淘汰の加速と年末までの供給能力反発余地の限定性が、2027年の豚価上昇を支えると論じる。コスト優位のMuyuanとWensを選好し、Dabeinong、Tecon、New Hopeの予想と目標株価を更新した。
要約
HSBCは、8月の繁殖雌豚淘汰の加速と年末までの供給能力反発余地の限定性が、2027年の豚価上昇を支えると論じる。コスト優位のMuyuanとWensを選好し、Dabeinong、Tecon、New Hopeの予想と目標株価を更新した。
- SCIによると、中国の繁殖雌豚在庫は2026年8月に前月比1.61%、前年比7.1%減少し、7月の前月比1.48%、前年比6.6%減より減少幅が拡大した。
- HSBCは、供給能力の淘汰が3Q26に加速し4Q26に鈍化するとみており、繁殖雌豚在庫は2026年末まで反発しにくいと予想する。
- レポートは、公式データに基づくMSYが17.8でSCIの21.52頭を下回るため、生産性上昇による供給過剰への市場懸念は過大だとみている。
- MuyuanとWensはBuyを維持。DabeinongはBuy維持で目標株価をRMB4.90へ引き下げ、TeconはHold維持でRMB7.50へ引き上げ、New HopeはReduce維持でRMB6.20へ引き上げた。
レポート解説
概要
HSBCの産業アップデートは、中国で加速する繁殖雌豚の淘汰が2027年の豚価回復の基盤を築くと論じる。生産性の改善が供給過剰を維持するとの見方に反論し、低コストの業界参加者を引き続き選好している。
主要見解
HSBCによると、SCIデータでは中国の繁殖雌豚在庫は2026年8月に前月比1.61%、前年比7.1%減少し、7月の前月比1.48%、前年比6.6%減より減少が加速した。大型農場が政策指針に沿って雌豚在庫を減らす一方、中小農家は長引く大幅赤字を受けて淘汰を加速していることが背景だと解釈している。淘汰雌豚価格と豚価格の比率が60%を下回ったことも裏付けとしている。HSBCはこの傾向が3Q26まで続き、持続的な雌豚淘汰が2027年の豚価上昇局面を強めるとみる。 レポートは、雌豚供給能力が2026年末まで低水準にとどまると予想する。中小農家は約1年の赤字で資金繰りが厳しく、豚価がRMB12/kgに戻るまで雌豚在庫を削減し続ける可能性が高い。大型農場は淘汰目標達成後には追加削減を行わないとみられる。このためHSBCは供給能力の淘汰が3Q26に加速し4Q26に鈍化すると予想する。業界が4Q26に黒字へ戻っても、資金制約のある中小農家は直ちに生産を増やせず、大手繁殖企業も政策規制により増産しない可能性がある。 HSBCは、生産性向上が淘汰による供給影響を相殺するとの市場懸念に異を唱える。SCIの2025年のMSY推計は21.52で、32.5m頭の雌豚で約700m頭の豚を供給できることを示し、MARAの37.5m頭という目標を下回る。一方、HSBCは2025年の豚生産量719.73m頭と平均雌豚在庫40.43m頭から全標本のMSYを17.8と算出し、雌豚在庫を10か月の先行指標として扱う。SCI標本は78%を大規模繁殖農場が占め、生産効率が高い大手に偏っていると説明する。公式生産量は遊休能力や繁殖に成功しない雌豚も考慮する。HSBCはこのため37.5m頭の雌豚目標は妥当とみる。業界全体の生産効率が大きく上がれば在庫をさらに削減する余地はあるが、将来の政策が雌豚在庫と実際の豚生産量のどちらを目標とするかで、生産性向上が雌豚減少となるか供給増加となるかが決まると指摘する。 HSBCは、今後の価格回復局面ではコスト優位が決定的になるとの見方を維持し、いずれもBuyのMuyuanとWensを引き続き選好する。Muyuanの目標株価RMB53.30は据え置きで、10xのEV/EBITDA倍率を2026-27年平均EBITDA RMB37,282mに適用している。9月15日時点の株価RMB42.37から25.8%の上昇余地を示す。WensもRMB18.90の目標株価とBuyを維持し、2.61xの目標P/B倍率と2027年予想ROE 26.1%に基づく。株価RMB14.99からの上昇余地は26.1%である。 DabeinongについてHSBCはBuyを維持する一方、目標株価をRMB5.00からRMB4.90へ引き下げた。RMB3.17の株価から54.6%の上昇余地を示す。1H26の株主帰属純損失はRMB677mで、豚価下落により2Q26の純損失はRMB502mとなった。HSBCは2026年の豚価前提をRMB12.6/kgからRMB11.5/kgに引き下げ、2026年純損失RMB219mを予想し、2027年純利益を14.5%引き下げてRMB988mとした。2028年予想RMB963mも導入した。1H26の飼料売上高と販売量はともに前年比約9%増だが利益率は低下し、種子販売量は約12%増加した。評価はSOTPを維持し、豚生産・飼料・種子事業に1.43x P/Bを用い、GM transformant事業にはWACC 6.3%、ターミナル成長率0.5%のDCFを用いる。 TeconはHoldを維持しつつ目標株価をRMB7.20からRMB7.50へ引き上げたが、RMB7.99の株価から6.1%の下落余地を示す。RMB441mの1H26純損失後、HSBCは2026年豚価予想をRMB12.4/kgからRMB10.5/kgに下げた。一方、2026年6月完了のQiangdu Animal Husbandry買収を受け、2026-27年の豚生産予想を3.3m・3.5m頭から4.75m・4.8m頭へ引き上げた。2026年はRMB171mの純損失を見込み、2027年純利益はRMB855mからRMB923mへ引き上げ、2028年予想RMB767mを導入した。評価は豚繁殖にP/B-ROE、動物用ワクチンと飼料事業に15.2x P/Eを用いる。 New Hopeは目標株価をRMB6.10からRMB6.20へ引き上げたが、Reduceを維持した。RMB7.30の株価から15.1%の下落余地を示す。1H26のRMB1.7bn純損失は豚価が予想を下回ったためHSBC予想を下回った。HSBCは2026年豚価前提をRMB12.90/kgからRMB11.50/kgに下げ、2025年以降の継続的な供給能力削減を踏まえ2026-27年の生産量前提を引き下げた。同時に、予想を上回るコスト管理を受けて豚コスト予想を引き下げた。2026年純損失はRMB1,527m、2027年純利益はRMB1,917mからRMB3,076mへ引き上げ、2028年予想はRMB1,326mとした。目標株価は2027年予想ROE 13%に基づく1.3xの目標P/B倍率を用いる。
分析フレームワーク
HSBCはまずSCIの在庫・価格比データで業界供給能力を評価し、次にSCI標本データと公式の生産量・雌豚在庫データを比較して、生産性と供給を巡る論点を検証する。供給能力見通しを2027年の価格サイクル見通しに結び付け、各社の豚価・生産量に対する利益感応度を評価し、企業別の評価フレームワークで目標株価を導く。
手法メモ
繁殖雌豚の供給能力と豚供給の分析
レポートは雌豚在庫を将来の豚供給の先行指標とみなし、淘汰、農家の資金繰り、政策統制、生産効率を用いて価格サイクルを評価する。
豚価と生産量の変化に対する純利益の感応度
HSBCは、豚販売価格と生産量の変化がDabeinong、Tecon、New Hopeの2027年利益予想に及ぼす影響をシナリオ表で示している。
EV/EBITDA倍率を用いたMuyuanの評価
HSBCは、10xの同業過去平均EV/EBITDA倍率をMuyuanの2026-27年平均EBITDAに適用し、目標株価を導出している。
DabeinongとTeconのSOTP評価
レポートは、P/B-ROE、P/E、ならびにDabeinongのGM transformant事業のDCFで各事業を別々に評価し、事業価値を合算している。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- Muyuan Foods (002714 CH)予想される2027年の業界サイクル反転で有利となる、選好されるコストリーダー。
- 強み
- コストリーダーシップとバリューチェーンの拡張。
- 比較
- HSBCは対象豚生産者の中でMuyuanとWensを選好する。
- リスク
- アフリカ豚熱またはその他の豚疾病、業界供給能力の削減が予想より遅いこと、原材料価格上昇が予想を上回ること。
- Wens Foodstuff (300498 CH)予想される2027年の業界サイクル反転で有利となる、選好されるコストリーダー。
- 強み
- HSBCはBuyを維持し、業界サイクルの反転を予想する。
- 比較
- HSBCは対象豚生産者の中でWensとMuyuanを選好する。
- リスク
- アフリカ豚熱またはその他の豚疾病、業界供給能力の削減が予想より遅いこと、原材料価格上昇が予想を上回ること。
- Dabeinong (002385 CH)豚生産、飼料、種子、GM transformant事業に関与する、Buy評価の対象企業。
- 強み
- 1H26の種子販売量は前年比約12%増加し、種子事業は戦略的中核である。
- 弱み
- 2026年の豚価前提低下と飼料粗利率予想の引き下げが利益予想を圧迫する。
- 比較
- 変更のないSOTP手法で目標株価をRMB5.00からRMB4.90へ引き下げ。
- リスク
- 飼料生産成長が予想を下回ること、遺伝子組換え種子販売量の進展が予想より遅いこと、飼育コスト低下が予想を下回ること。
- Tecon Biology (002100 CH)買収による豚供給能力と飼料・ワクチン利益率の低下を見込む、Hold評価の対象企業。
- 強み
- Qiangdu Animal Husbandry買収により2026-27年の生産量予想が上方修正された。
- 弱み
- 豚価前提の引き下げにより、2026年利益予想は純損失へ変更された。
- 比較
- 目標株価はRMB7.20からRMB7.50へ引き上げられたが、RMB7.99の現株価を下回る。
- リスク
- 動物用ワクチン製品での激しい競争、原材料価格の急上昇、飼料販売成長が予想を下回ること。
- New Hope Liuhe (000876 CH)コスト管理前提は改善したが、供給能力と価格の圧力が続くReduce評価の対象企業。
- 強み
- 予想を上回る豚コスト管理が2027年利益予想の上方修正を支える。
- 弱み
- 1H26純損失はHSBC予想を下回り、2026-27年の生産量前提は引き下げられた。
- 比較
- 目標株価はRMB6.10からRMB6.20へ上がったが、15.1%の下落余地を示す。
主要データ
- 2026年8月の繁殖雌豚在庫変化-1.61% m-o-m; -7.1% y-o-ySCIによると、7月の-1.48% m-o-m、-6.6% y-o-yより減少幅が大きい。
- SCIの2025年MSY推計21.52 hogs/sow/year約32.5m頭の雌豚で700m頭の豚を供給できることを示す。
- 公式データによる2025年MSY17.8 hogs/sow/year豚生産量719.73m頭と平均繁殖雌豚在庫40.43m頭から算出。
- MARAの繁殖雌豚在庫目標37.5m headsHSBCは全標本の生産性指標に基づき、この目標を妥当とみる。
- Dabeinongの2026e/2027e純利益RMB-219m / RMB988m2027年予想はRMB1,157mから14.5%引き下げ。
- Teconの2026e/2027e純利益RMB-171m / RMB923m2027年予想はRMB855mから引き上げ。
- New Hopeの2026e/2027e純利益RMB-1,527m / RMB3,076m2027年予想はRMB1,917mから60%引き上げ。
影響と示唆
HSBCは、継続する供給能力削減が業界の供給環境を引き締め、2027年の豚価回復を支えると考える。生産コストの優位性が重要な差別化要因となるためMuyuanとWensを選好する一方、企業利益は実現豚価、生産量、飼料コスト、供給能力動向に高い感応度を持つ。
リスク
- アフリカ豚熱またはその他の豚疾病が業界・企業業績を悪化させる可能性がある。
- 業界供給能力の削減がHSBC予想より遅く進む可能性がある。
- 原材料価格の上昇が飼料コストと利益率を圧迫する可能性がある。
- Dabeinongは、飼料生産成長の鈍化、遺伝子組換え種子販売量進展の遅れ、飼育コスト低下不足のリスクに直面する。
- Teconは、動物用ワクチン競争の激化、原材料価格上昇、飼料販売成長の下振れリスクに直面する。
注目点
- 月次の繁殖雌豚在庫変化と、淘汰が3Q26まで続くか。
- 豚価がRMB12/kgへ回復するか。HSBCはこれを中小農家の供給能力判断に関わる水準とみる。
- 業界が4Q26に黒字化するか、また資金制約と政策統制にもかかわらず供給能力が反発するか。
- 政策が繁殖雌豚在庫の統制と実際の豚生産量の統制のどちらへ向かうか。
- 利益感応度シナリオを左右する豚価、生産量、原材料コスト、企業のコスト管理。