European utilities with a bias for renewables レポート解説
本レポートは、欧州公益株が金利ショックの大部分をすでに織り込み、電化、データセンター、冬季電力価格の底堅さが構造的な利益上昇局面を支えると論じる。再生可能エネルギーと一部メーカーを選好し、複数の銘柄にBuy評価を付与している。
要約
本レポートは、欧州公益株が金利ショックの大部分をすでに織り込み、電化、データセンター、冬季電力価格の底堅さが構造的な利益上昇局面を支えると論じる。再生可能エネルギーと一部メーカーを選好し、複数の銘柄にBuy評価を付与している。
- 欧州公益株は中東紛争開始以降約10%下落しており、約70 bpの金利上昇をすでに織り込んでいると推計される。
- Goldman Sachsは、セクターの2026-30年EPS CAGRを8%、Buy評価の電化コンパウンダーを平均10%と予想する。
- 欧州の大半の地域で電力消費は前年比2%-3%増加し、ドイツのEV販売は50%、ヒートポンプ導入は35%増加した。
- 低水準のガス在庫と平年並みの冬はTTFを支え、マーチャント・エクスポージャーを持つ発電事業者と再生可能エネルギー開発業者を後押ししうる。
- 主要触媒は、2026年末から2027年初頭の資本市場説明会、Solariaの9月決算と11月CMD、米国中間選挙、ドイツのCCGT入札である。
レポート解説
概要
これは欧州公益事業セクターの見通しであり、マクロ懸念は短期的なパフォーマンスを抑えうるものの、構造的な成長見通しを損なわないと論じる。Goldman Sachsは、限定的な金利感応度、改善する電力需要、冬季価格の追い風、今後の企業・政策触媒を理由に、再生可能エネルギー開発業者とメーカーを選好している。
主要見解
Goldman Sachsは、粘着的なインフレ、2026年2月のエネルギー危機以降約60ベーシスポイント上昇した金利、フランスとイタリアの選挙リスクという厳しい短期マクロ環境の中で同セクターを捉える。欧州公益株は中東紛争以降Stoxx 600を約10%下回った。しかし同社は、この弱さはファンダメンタルズへの影響に比して過大だとみる。セクターの評価切り下げはすでに約70ベーシスポイントの金利上昇を織り込み、ホルムズ海峡の再開通は最終的に資本コストを下げるはずだという。 金利に関する論拠は、防御的な資金調達と利益面の相殺要因にある。公益事業の平均債務期間は約8年で、変動金利債務は約25%にとどまり、急な金利上昇による短期利益への影響を抑える。Goldman Sachsは、50 bpの金利上昇で平均株式評価は7%低下、2028E EPSは4%低下すると推計する。重要ではあるが、市場が一般に認識するほど深刻ではないという。規制リターン、再生可能エネルギーPPA、英国・イタリアなどのインフレ連動RABが価格決定力をもたらす。さらにヘッジが期限切れとなるにつれ、電力価格が10%上昇すれば2028E EPSは4%上昇すると推計する。逆に、リスクフリーレートが50 bp低下すれば、平均公益事業評価は約7%上昇する。 中核となる構造的な主張は、電力需要にけん引される「利益スーパーサイクル」である。欧州の大半で電力消費は前年比2%-3%増加し、ドイツのEV販売は前年比50%増、ヒートポンプ利用は35%増と、電化の加速がみられる。Goldman Sachsは、データセンター開発が今後数年に年間電力消費成長を1%-2%支え、2035年以降も続く可能性があるとみる。上振れシナリオでは、欧州データセンター容量は2035年までに約80 GWに達する。現在の予想は年1%-2%の需要成長しか織り込んでいないが、基本ケースでは2030年以降3%-3.5%、電化とデータセンター展開が加速すれば5%のピークも見込む。この需要転換には2026-35年に€2.2-3.5 trnの投資が必要で、供給の反応が遅いため、利益率とリターンを支えるとみる。2026-30年のセクターEPSは年率8%、Buy評価の電化コンパウンダーは10%成長すると予想する。 冬季の商品需給も追加の追い風となる。欧州ガス在庫は歴史平均を約25%下回り、中東の供給混乱と熱波により世界LNGの需給は逼迫している。Goldman Sachsは、平年並みの冬ならTTFの強さが持続しうるとし、TTF価格は年初来すでに50%以上上昇している。これはマーチャント・エクスポージャーを持つ発電事業者、再生可能エネルギー開発業者、ガス商業活動を持つ企業に最も有利である。主要発電事業者では、電力価格が10%上昇すれば(多くの地域で約€5-10/MWh)、2028-29E EPSは約4%-5%増加すると推計する。感応度表では、平均純利益への影響は2027Eで3%、2028Eで4%、2029Eで5%である。 こうした背景から、Goldman Sachsは再生可能エネルギーを選好する。エネルギー安全保障政策、EDPR、RWE、Orsted、再生可能エネルギー機器メーカーに対する米国中間選挙の潜在的追い風、RWE、Solaria、PPC、Draxのデータセンター関連の価値機会が支援材料となる。Terna、Elia、Redeiaなどの高レバレッジ公益企業よりも成長株である再生可能エネルギーを重視し、スペインのような名目規制制度はインフレにより不利になりうると指摘する。フランスとイタリアの負担可能性を巡る議論は、Engie、Veolia、Enel、Terna、Snamに選挙関連の逆風をもたらしうる。 企業固有の触媒もセクター見通しを補強する。Goldman Sachsは、2026年末から2027年初頭のCMDが中期ガイダンス上方修正を促すと予想し、複数のカバー企業がH1 2026でコンセンサスを上回り、通年ガイダンスを引き上げたと指摘する。今後のCMDにおいて、RWEの2031年EPSをコンセンサス€4.72に対して€5.65、Naturgyを€2.19に対して€2.61と見込み、複数社でコンセンサスを上回る。その他の触媒は、Solariaの9月業績と11月CMD、RWEに有利となりうるドイツのCCGT入札、資本コストを下げうるイラン和平、冬季TTFの上振れである。 個別銘柄では、Draxの契約化キャッシュフローと2025-31Eの累積FCF予想£3.5bn、EDPRの米国再生可能エネルギー事業、2028-31Eの利益加速見通しとデータセンターのオプション価値、Naturgyの変革的な投資・M&Aに向けたバランスシート余力を強調する。NordexとVestasは、受注、マージン、株主還元の改善から恩恵を受けるとみる。Orstedは米国プロジェクトとその後のバランスシート余力、PPCは電化・データセンターインフラ、RWEはAI/データセンターとAmprion持分の可能性、Siemens Energyはグリッド投資とデータセンター需要、Solariaは蓄電池とデータセンターの上振れを持つ高収益の再生可能エネルギー開発業者として位置付けられる。これらはいずれもレポート上のBuy評価機会だが、各社固有の詳細リスクに左右される。
分析フレームワーク
Goldman Sachsはまず、債務構造、評価とEPS感応度、価格決定力、金利と電力価格の相互作用を通じ、金利上昇が公益事業のファンダメンタルズを実質的に損なうかを検証する。その後、観察された電力需要成長、電化、データセンター、投資需要をセクターの利益予想に結び付け、冬季ガス価格と政策・選挙シナリオを加え、選好銘柄に利益、キャッシュフロー、バリュエーション分析を適用する。
手法メモ
電力・天然ガスの需給分析
本レポートは、低いガス在庫、LNG需給の逼迫、電力需要増、供給の遅い反応を、電力価格、投資、マージン、リターンの上昇に結び付けている。
電化とデータセンター需要の波及
需要成長が再生可能エネルギー開発業者、発電事業者、グリッド投資、風力機器メーカーにどう波及するかを追跡する。
企業別SOTP評価
複数の選好企業について、再生可能エネルギー、発電、配電、インフラなどの事業を個別に評価している。
DCF評価
再生可能エネルギーおよびその他の事業資産の評価に、明示されたWACCと設備容量追加の前提を用いたDCFを使用する。
P/Eベースの評価
NaturgyとPPCの評価には、予想利益に目標P/E倍率を適用する手法が含まれる。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- Draxデータセンターのオプション価値を持つ、選好される再生可能エネルギー・柔軟な発電エクスポージャー。
- 強み
- 2025-31Eの累積FCFは£3.5bnと予想され、Renewables、Flexible Generation & SupplyはFY2032以降EBITDAのc.90%を占める見込み。
- 弱み
- Drax Power Stationの政府支援へのエクスポージャーは依然として市場の懸念である。
- 比較
- Goldman Sachsは、同事業はもはや低倍率で政府支援依存の企業ではないと論じる。
- リスク
- バイオマス発電・ペレット生産の規制と政策、発電所の保守、投資リターン、データセンター需要、法的結果。
- EDPR米国のリターンとデータセンターの追い風を受ける再生可能エネルギー開発業者。
- 強み
- 米国の再生可能エネルギー活動は事業のc.65%を占め、Goldman Sachsは2028-31Eの純利益がc.90%増加してc.€1.0-1.1bnになると予想する。
- 弱み
- 設備容量追加と電化の進展に依存する。
- 比較
- 2031Eの純利益予想はVisible Alphaコンセンサスをc.17%上回る。
- リスク
- 電化の遅れ、想定を下回る設備容量追加または電力価格、金利上昇、USD/BRL上昇。
- RWE再生可能エネルギー、柔軟な発電、データセンターの受益者。
- 強み
- 高電化シナリオでは、2030-31年までにFlexGenの税引前上振れがc.€300-600 mnとなる可能性があり、Amprionへの戦略的持分取得の可能性もある。
- 弱み
- 再生可能エネルギーパイプラインの実行が重要である。
- 比較
- Amprion戦略が成功すれば、よりIberdrolaに似た企業像になりうるとGoldman Sachsはみる。
- リスク
- 景気後退、LNG・電力価格の弱さ、主権金利上昇、パイプライン実行不振、GBP/USD下落。
- Solaria蓄電池とデータセンターのオプション価値を持つ、選好される高収益再生可能エネルギー開発業者。
- 強み
- 2028E ROEは17%と予想され、BESSはマーチャント・エクスポージャーにおけるゼロ価格リスクを低減しうる。
- 弱み
- 予想には大幅な実行遅延が織り込まれており、依然として重要なリスクである。
- 比較
- Goldman Sachsは、同社をカバレッジ内で最も高いリターンを持つ再生可能エネルギー開発業者と説明する。
- リスク
- 想定を下回る商品・電力価格、実行遅延、新規容量追加の低リターン、金利上昇、マクロ環境の悪化。
- Vestas設置需要と受注増の恩恵を受ける、選好される風力機器メーカー。
- 強み
- 規模、地域分散、マージン拡大見通し、FY2027までのFCF成長。
- 弱み
- 洋上風力の立ち上がりは引き続き実行に依存する。
- 比較
- Goldman SachsはVestasを風力機器メーカーのカバレッジで最も有利な位置にある企業と呼ぶ。
- リスク
- 陸上風力の世界需要または米国設置の減少、風力セクターでのM&A不在、商品価格の大幅下落。
主要データ
- 欧州公益株の株価パフォーマンス-c.10%中東紛争以降の下落。Goldman Sachsは、これが+c.70 bpの金利変動を織り込んでいると推計する。
- 平均債務期間c.8 years欧州公益事業の平均であり、変動金利債務はc.25%にとどまる。
- 金利感応度+50 bp rates: -7% average equity valuation; -4% 2028E EPSGoldman Sachsによるファンダメンタルズへの影響推計。
- 電力需要成長2%-3% yoy欧州の大半の地域における年初来の成長。
- セクターEPS成長+8% CAGR, 2026-30Buy評価の電化コンパウンダーでは平均+10%。
- 電化投資需要€2.2-3.5 trn, 2026-35EU電力セクターの累積投資需要の推計。
- 欧州ガス在庫c.25% below historical averages冬季TTFに対するレポートの前向きな見方を支える。
- データセンター容量の上振れシナリオc.80 GW by 2035Goldman Sachsの上振れシナリオにおける欧州データセンター市場の容量。
影響と示唆
本レポートは、すでに織り込まれた金利リスク、構造的に拡大する電力需要、冬季電力価格の追い風が、再生可能エネルギー開発業者、柔軟な発電事業者、グリッド関連企業、再生可能エネルギー機器メーカーを有利にすると述べる。今後のCMDと政策進展は、中期的な利益上方修正の触媒となりうる。
リスク
- 想定を上回る金利上昇は経済全体を減速させ、セクター需要を弱めうる。
- フランスとイタリアの選挙・負担可能性リスクは、一部の規制公益企業に圧力をかけうる。
- 想定より弱い冬、またはガス・電力価格の下落は、マーチャント発電と再生可能エネルギーの追い風を弱める。
- 企業固有のリスクには、プロジェクト実行遅延、再生可能エネルギーの低リターン、政策・規制変更、建設コスト超過、販売量低迷、為替変動が含まれる。
注目点
- Solariaの9月業績と11月の資本市場説明会。
- 2026年末から2027年初頭のCMD、特に2028-31年ガイダンス上方修正の可能性。
- 米国中間選挙と、EDPR、RWE、Orsted、再生可能エネルギーメーカーへの影響。
- ドイツのインフラ計画と今後のCCGT入札。
- 欧州のガス在庫水準、冬季の天候、TTF価格。
- 資本コストを下げうるイラン和平またはホルムズ海峡の再開通。