The age of inference in generative AI レポート解説
本ガイドブックは、ハイパースケーラーの設備投資が2027年まで非常に大きな規模を維持した後、2028年に鈍化し、AIイネーブラー、ソフトウェア、早期導入企業への相対的な資金ローテーションをもたらすと予想する。コンピュート不足、電力ボトルネック、オープンウェイトモデル、資金調達能力も推論時代の中心課題として挙げる。
要約
本ガイドブックは、ハイパースケーラーの設備投資が2027年まで非常に大きな規模を維持した後、2028年に鈍化し、AIイネーブラー、ソフトウェア、早期導入企業への相対的な資金ローテーションをもたらすと予想する。コンピュート不足、電力ボトルネック、オープンウェイトモデル、資金調達能力も推論時代の中心課題として挙げる。
- ハイパースケーラーのデータセンター設備投資は2027年に60%増加して$1.5 trillionとなり、2028年には約12%の伸びへ鈍化すると予想する。
- 総コンピュート容量は2025年の約35 GWから2028年の約145 GWへ増加すると予想する。
- Morgan Stanleyは生成AIのROICを25-50%と試算し、自社インフラ上で稼働するモデルAPIが最も高い経済性を持つとみる。
- レポートは、知識労働と消費支出のデジタル化機会を$50-$60 trillionと特定している。
- 電力供給までの時間制約と予想される米国の38 GW電力不足が、オンサイト発電および電力供給済みシェル事業者を支える。
レポート解説
概要
Morgan Stanleyの複数チームによるガイドブックは、AIが「推論時代」へ移る中での生成AIに関する8つの主要論点を検討する。中心的な結論は、投資サイクルは複数年に及ぶ一方、次の相対的な受益者はハイパースケーラー、ソフトウェアとアプリケーション層のイネーブラー、早期の企業導入者、データセンターの電力制約を解決する企業になり得るというものだ。
主要見解
Morgan Stanleyは、ハイパースケーラーのデータセンター設備投資が2027年に約60%、すなわち約$500 billion増加して$1.5 trillionに達した後、2028年には約12%の伸びへ鈍化すると予想する。同社のチップとラックに関するボトムアップ分析は、限られたチップ供給、大規模な先行建設、部材・電力コスト上昇、労働力・資材・送電網接続の物理的制約を織り込む。一部の2026年設備投資の30-40%は、2027-29年に開設するデータセンター向けの土地、建物、設備、電力に投じられているという。設備投資の伸び鈍化とハイパースケーラーおよびソフトウェアの収益加速は、ハードウェア、半導体、メモリーから、AMZN、GOOGL、MSFT、METAなどのインフラ・ソフトウェア層へ相対的な資金ローテーションを促すとみる。 2028年の鈍化見通しにもかかわらず、容量増設は大規模である。Morgan Stanleyは2027-28年に約80 GWが稼働開始し、内訳は2027年38 GW、2028年44 GWとなり、ハイパースケーラーの総容量は2025年の約35 GWから2028年の約145 GWへ増加すると予想する。Gemini、Google Cloud、SearchとYouTubeでの生成AI展開を背景に、GOOGLが最も多くの容量を追加すると見込む。カスタムASICの増分容量比率は2025年の34%から2028年の66%へ上昇し、TrainiumとTPUがこの変化を主導する。2028年の両者合計容量は12 GWで、NVIDIAの13 GWに対する。Morgan Stanleyは、新しいツールやエージェント型ワークフローにより、稼働開始したコンピュートは収益化できる希少資源だとみている。 レポートは、ハイパースケーラーのGPUレンタル、自社インフラ上のモデルAPI、第三者インフラ上のモデルAPIという3つの収益化経路で生成AIのリターンを検証する。1 GWのGB300データセンターについて、GPUレンタルの基本ケースは、GW当たり約$23 billionの売上、IT減価償却$4.6 billionを含む$8 billionの運営費、約$15 billionの増分EBIT、税後ROIC約30%を仮定する。自社インフラで稼働するモデルAPIは、GW当たり約$30 billionの売上、約$18 billionのNOPAT、基本ケースで約46%のROICを見込む。第三者インフラ上のAPIモデルはGW当たり約$41 billionと売上機会が高いが、レンタル費用により基本ケースの経済性は約25%のNOPATマージンとなる。全シナリオを通じ、Morgan Stanleyは25-50%のROICへの道筋を示し、自社インフラ上で稼働するモデル層に最も高いリターンが帰属するとみる。 Morgan Stanleyは、デジタル化または拡張可能な世界の支出機会を$50-$60 trillionと位置付ける。これには$20-$30 trillionの知識労働機会と、小売、旅行、自動運転、フードデリバリー、広告にわたる約$30 trillionの消費支出が含まれる。パブリッククラウドの導入を類推として、2027年までに企業AI支出は約$800 billion、知識労働機会の約4%に達すると見積もる。同時に、AIは全面的なインフラ移行を必要とせず、生産性向上までの時間が短いため、クラウドより速く普及する可能性があると論じる。テクノロジー、通信サービス、金融、ヘルスケア、産業が最も早い導入分野とする。生成AIの便益を定量化しているS&P 500企業は2Q26に約25%で、1年前の14%から増加した。テクノロジーは28%から51%、金融は8%から37%、産業は19%から21%へ上昇した。 オープンウェイトモデルは、コンピュート需要への脅威ではなく、導入の促進要因と位置付けられる。低コスト、カスタマイズ性、柔軟なデプロイはフロンティアモデルのtoken価格に圧力をかける可能性があるが、Morgan Stanleyはtoken需要を拡大し、AWS Bedrock、Microsoft Foundry、Google Vertexなどハイパースケール・プラットフォームの価値を高めるとみる。これらのプラットフォームは、顧客がどのモデルを選択しても、コンピュート、ファインチューニング、データパイプライン、その他のサービスで収益化できる。オープンウェイトモデルがさらに普及しても、分析では1 GWのGB300容量で約20-40%のROICを示すという。 資金調達については、世界のAI関連債務発行が年初来約$450 billionに達したにもかかわらず、Morgan Stanleyは短期的な信用市場の制約を想定していない。特に高品質なハイパースケーラーでは、追加供給の調整は発行停止ではなく主にスプレッド拡大を通じて起きると予想する。AMZN、GOOGL、MSFT、METAは2027年と2028年にそれぞれ$980 billion、$1.2 trillionの営業キャッシュフローを生み出す一方、同期間に必要な債務調達は$290 billionにとどまる見通しである。ただし、オフバランスシートのリースと長期コミットメントはレバレッジ・エクスポージャーを増加させ、格付機関はこれらを調整後債務に含めると指摘する。 電力の利用可能性は主要な物理的ボトルネックである。Morgan Stanleyは米国の電力不足を38 GWと見積もり、州・地方の審査強化、系統接続の長期化、労働力制約、電力コスト上昇により、behind-the-meter発電がより一般的になるとみる。このソリューションはGW当たり設備投資を約$3 billion増加させると試算し、2H27および2028年に稼働開始すると考えるRubin Ultraから、総コスト$50 billion/GWとして織り込んでいる。これはBE、INIO、SEIなどのオンサイト電力供給企業、およびCIFR、WULF、HUT、RIOTなどの電力供給済みシェル事業者に対する前向きな見方を支える。2028年選挙に関する政治リスク、地方のモラトリアムや連邦政策が米国データセンター拡張を遅らせる可能性も指摘する。
分析フレームワーク
Morgan Stanleyは、チップ、ラック、容量、GW当たりコストのボトムアップ推計を、シナリオ別の事業・評価フレームワークと組み合わせている。その後、設備投資、コンピュート供給、収益化の経済性、導入証拠、信用環境、電力制約を結び付け、AIバリューチェーンにおける受益者とリスクを特定する。
手法メモ
ボトムアップのデータセンター設備投資・コンピュート容量分析
レポートはGW当たりのチップ、ラック、電力供給済みシェルなどのコストを推計し、供給制約と計画された容量追加を用いてAIインフラ・サイクルを評価する。
生成AIのROICシナリオ
Morgan Stanleyは、3つのAI収益化モデルについてGW当たりの売上、コスト、EBIT、NOPAT、投下資本を算出し、推論インフラが魅力的なリターンを稼げるかを検証する。
一部の電力インフラ企業に対するDCF評価
レポートは一部企業のリスク・リワード分析で、割引率や長期の事業前提を含むDCF前提を使用している。
過去の技術導入との類推
レポートはAIサイクルをモバイルとパブリッククラウドの導入と比較し、インフラ、ソフトウェア、サービス収益化の進行順序を捉える。
資産マッピングと比較
投資テーゼから固有資産への構造化マッピング(強み、弱み、同業、リスク)。
- Amazon.com (AMZN)クラウド、AWS需要、推論収益化の恩恵を受けると期待されるハイパースケーラー兼生成AIイネーブラー。
- 強み
- AWSの容量拡張、高マージン事業、継続的なPrime関連収益。
- 弱み
- 高い投資強度が予想より長く続く可能性。
- 比較
- 投資家の注目がイネーブラーとソフトウェアへ移ることで恩恵を受ける主要ハイパースケーラーの一つ。
- リスク
- AWSの収益または利益率鈍化、小売利益率の悪化、投資の長期化。
- Microsoft (MSFT)Azure AIおよびCopilot導入の収益化が期待されるハイパースケーラー兼ソフトウェア・イネーブラー。
- 強み
- Azure成長、Microsoft 365収益化、AIサービス導入の拡大。
- 弱み
- 投資による粗利益率圧力と限定的なAI導入は投資判断を弱める。
- 比較
- レポートにおける主要な統合型AIインフラ・ソフトウェア受益者の一つ。
- リスク
- IT支出の弱さ、クラウド成長鈍化、投資強度上昇、AI導入の限定。
- Meta Platforms (META)統合型モデル提供企業かつAI導入企業であり、レポートのリスク・リワード部分では主要な生成AIイネーブラーおよびtop pick。
- 強み
- 大規模な配信・データ資産、改善するエンゲージメントと広告収益化、AIによる効率改善の可能性。
- 弱み
- 大規模なデータセンター支出にはより明確な長期リターンの証明が必要。
- 比較
- Morgan Stanleyは自社インフラのモデル経済性を特に魅力的とみるが、METAは一部ハイパースケーラーより製品収益化の実証課題が大きい。
- リスク
- Reels収益化の鈍化、広告ターゲティング規制、マクロ圧力、Reality Labs損失拡大、資本集約度上昇。
- Alphabet (GOOGL)Search、YouTube、Google Cloud、Gemini、TPU容量を通じたハイパースケーラーおよびAIプラットフォームの受益者。
- 強み
- 大規模なファーストパーティーデータと配信力、クラウド加速機会、TPU主導の大幅な容量追加。
- 弱み
- AI製品は収益化率が低く、コンピュート集約度が高い可能性。
- 比較
- ハイパースケーラーの中で最も多くのコンピュート容量を追加し、カスタムシリコン構成の転換を主導すると予想される。
- リスク
- 広告成長鈍化、利益率圧力、費用規律の悪化、AIコンピュートコスト上昇。
- NVIDIA (NVDA)AIワークロードにおける持続的な需給不均衡の恩恵を受けるコンピュート・インフラ供給企業。
- 強み
- Blackwellの主導性と次世代AIシステムへの継続的な需要。
- 弱み
- カスタムシリコンの成長により、短期的なマルチプル拡大の余地は限定される。
- 比較
- Morgan Stanleyは2028年のNVIDIA容量を13 GW、TrainiumとTPU合計を12 GWと予想する。
- リスク
- 供給の早期正常化、AI開発コストの大幅低下、競合GPUまたはカスタムハードウェア、関税・輸出規制。
- Bloom Energy (BE)電力供給までの時間制約と分散型エネルギー需要の恩恵を受けるオンサイト発電企業。
- 強み
- AI電力需要、グリッド不安定性、分散型発電の経済性に対する燃料電池エクスポージャー。
- 弱み
- 成長と利益率の実現はコスト削減と導入に依存する。
- 比較
- INIOおよびSEIとともにbehind-the-meter電力導入の直接的受益者として挙げられる。
- リスク
- 競争、コスト削減目標未達、より厳格な排出規制、分散型発電への課金。
- Solaris Energy Infrastructure (SEI)大規模データセンター負荷向けに電力供給までの時間とマイクログリッドのソリューションを提供する企業。
- 強み
- 先行者の位置付け、グリッド接続に対する競争力ある代替手段、さらなる容量拡大余地。
- 弱み
- 経済性は契約、オーバーホール設備投資、タービンの終価仮定に依存する。
- 比較
- グリッド制約強化の恩恵を受けるオンサイト電力企業の一つとして挙げられる。
- リスク
- 容量調達または新規データセンター契約がないこと、マイクログリッド経済性悪化、顧客集中、終価懸念。
- TeraWulf (WULF)Bitcoin-to-data-center転換を進める電力供給済みシェル事業者。
- 強み
- 電力インフラとデータセンター顧客契約における実績、2,082 MWの未契約容量を転換できる可能性。
- 弱み
- 評価は通電、プロジェクト実行、リース転換の仮定に依存する。
- 比較
- Morgan Stanleyは電力供給済みシェル事業者の中でWULFをstrong pickとみる。
- リスク
- AI支出鈍化、建設遅延とコスト超過、法規制上の制約、転換取引の不成立。
- Hut 8 (HUT)電力供給済みシェルおよびHPCリース事業者。
- 強み
- 強い既存リース条件と広範な電力パイプライン。
- 弱み
- 将来価値は未契約電力の転換と追加MWの契約に依存する。
- 比較
- Morgan StanleyはHUTをHPCリース契約における同業のリーダーと表現する。
- リスク
- 追加MWを契約できないこと、リースの解約または開始遅延。
- Cipher Mining (CIFR)Bitcoin-to-HPC転換および電力供給済みシェルの事業者。
- 強み
- 2.6 GWのHPCパイプラインを収益化し、将来のハイパースケーラー・リースから恩恵を受ける可能性。
- 弱み
- 比較取引に基づく将来Bitcoin-to-data-center案件のキャッシュフロー利回りはWULFより低い。
- 比較
- 評価は比較可能なBitcoin-to-data-center転換フレームワークを用いるが、リース利回りの仮定はWULFより控えめ。
- リスク
- リース経済性が$/watt仮定を下回ること、コスト超過、HPCパイプラインの収益化失敗。
- Riot Platforms (RIOT)Bitcoinマイニング拠点をデータセンター用途へ転換する電力供給済みシェル事業者。
- 強み
- RockdaleおよびCorsicana拠点。Corsicanaには見込みテナントからの意向表明書がある。
- 弱み
- パイプライン評価は契約実行と通電確率に依存する。
- 比較
- Morgan Stanleyはリース経済性とパイプラインMWの関数として電力供給済みシェル事業者を評価する。
- リスク
- 拠点で契約を締結できないこと、リース経済性が予想を下回ること。
主要データ
- ハイパースケーラーのデータセンター設備投資成長率60% in 2027; about 12% in 2028Morgan Stanleyは支出が2027年に約$1.5 trillionへ達した後、伸びが鈍化すると予想する。
- ハイパースケーラーの総コンピュート容量About 35 GW in 2025 to about 145 GW in 2028約4倍の増加であり、約80 GWが2027-28年に稼働開始する。
- 増分容量に占めるカスタムASIC比率34% in 2025 to 66% in 2028主にGoogle TPUとAmazon Trainiumが牽引する。
- 生成AIのROICレンジ25-50%Morgan StanleyのハイパースケーラーおよびモデルAPI収益化フレームワークにおけるレンジ。
- 世界の生成AIデジタル化機会$50-$60 trillion$20-$30 trillionの知識労働支出と約$30 trillionの消費支出を含む。
- 生成AIの便益を定量化するS&P 500企業About 25% in 2Q261年前の14%から上昇。
- 世界のAI関連債務発行About $450 billion year to dateMorgan Stanleyは、特に高品質なハイパースケーラーで追加発行の余地があると予想する。
- 米国データセンターの電力不足38 GWレポートのオンサイトおよびbehind-the-meter発電の見方を支える。
影響と示唆
Morgan Stanleyは、AI投資サイクルが半導体とハードウェアから、ハイパースケール・プラットフォーム、ソフトウェア、アプリケーション層の導入者、電力制約を緩和する物理インフラ提供企業へ広がると予想する。設備投資の成長率鈍化はAI投資の継続と両立し、収益化、キャッシュフロー、企業導入がより重要な推進力になるとみる。
リスク
- 物理的制約、先行建設活動の減少、モデル配備選択の変化、AI需要の弱まりにより、ハイパースケーラー設備投資がMorgan Stanleyの予想以上に鈍化する可能性。
- 電力不足、系統接続遅延、労働力・資材制約、部材コスト上昇がデータセンター開設を遅らせ、リターンを圧迫する可能性。
- 州・地方の反対、データセンターのモラトリアム、連邦政策の変更、2028年選挙に関する政治的不確実性が拡張を妨げる可能性。
- オープンウェイトモデルは、広範な導入を支えても、token価格とモデル層の差別化に圧力をかける可能性。
- オフバランスシートのリースと長期コミットメントは、調整後レバレッジの上昇に伴い債務容量を低下させる可能性。
注目点
- 2028年に向けたハイパースケーラー設備投資の伸びと先行建設支出の規模。
- 実際のGW容量追加、特にGoogle TPUとAmazon Trainiumの配備。
- モデル化された生成AI ROICを左右する推論利用率、tokenスループット、token価格。
- AI便益を定量化する企業比率と、テクノロジー、金融、ヘルスケア、産業における導入証拠。
- AI関連クレジット発行、スプレッド、オフバランスシート・コミットメントの増加。
- 米国の電力利用可能性、behind-the-meter発電の導入、データセンター許認可に影響する規制措置。